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和洋折衷の食卓【カフェ浪漫主義10】

【カフェ浪漫主義】
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茶時コーヒータイムの卓上の小宇宙を飾る花や音楽の事を考えるのはとても楽しい。そのための茶器や花入は長年いろいろと集めて来た。

様式の確立している伝統和風でまとめるのなら楽なのだが、現代の洋風生活に合わせながらも品位格調を求めるとなると一気に難しくなる。

色々と試して来た結果、我家には100年前頃の和洋折衷様式が最もふさわしかった。

古瀬戸古伊万里什器類 大正頃
琴棋書画図屏風 狩野派 江戸後期

これらの食器類は一昔前は大変安価に売られていて、我家には染付や色絵金蘭手など客用に10客ずつ揃えてある。

それも今では100年物の立派なアンティークと呼ばれるようになり、価格も10倍近くなり私にはもう二度と買えないだろう。

雅友達を呼びこの食卓を囲んだ句会詩宴は本当に楽しかったが、コロナ以降途絶えてしまったのが残念だ。

100年前の日本は竹久夢二らの大正浪漫華やかなりし頃で、一方のヨーロッパではアール・ヌーヴォーと後期ロマン派音楽の時代だった。

『愛の古き歌』石版画 竹久夢二
カフェオレボウル フランス19世紀
古織部徳利 幕末明治頃

写真の竹久夢二のセノオ楽譜表紙絵シリーズは立派な石版画で、今では画集が出たりコレクターにも大変な人気となっている。

私はシリーズの中でも洋風の絵を数枚集め、和洋折衷の卓に季節に合わせて掛け替えている。大正時代は我が地元でも鎌倉文士達が活躍し、明星やスバルと言った浪漫主義詩歌の雑誌も次々と出ていた時代だ。

卯の花を大小揃いの古織部徳利に入れ、伝統和風も忘れてはいない。

この座の雰囲気なら当然ロマン派の音楽に合うはずだ。幸いにも近年は良い演奏と録音で豊富な曲が出ているので、前回(↓にリンク)に引き続き紹介していこう。

ロマン派のピアノ曲として傑出しているのは、前回紹介したショパンとフォーレに加えて、ラフマニノフとスクリャービンの作品だ。この4人のピアノ曲には、「優美な旋律」「洗練された和声」「性格的小品」といったロマン派らしい特徴が色濃く表れている。

まず、ラフマニノフの「幻想的小品集第1曲『悲歌エレジー』」だ。

ラフマニノフの「幻想的小品集」としては、モスクワの鐘を象徴する鐘のような和音で始まる「第2曲前奏曲プレリュード」が最も有名だが、よりロマン派らしいのは「第1曲悲歌」の方だ。瞑想的な左手の伴奏に哀愁を感じさせる和音が続き、「悲歌」という題に相応しい極めて抒情的な曲になっており、上の写真の夢二の画にもよく合う。

「前奏曲」に比べて「悲歌」は録音が少ないのだが、今年リリースされたジャクリーン・リョンの演奏が私の決定盤となった。近年は中華系演奏家の躍進が顕著で、今年のシュパンコンクールの出場者も半分近くが中国出身になっていた。ジャクリーン・リョンのこの演奏もドルビーアトモス音源となっており、残響をより深く味わうことができる。演奏と録音次第で、その抒情性が大きく変わり得るのがロマン派の名曲だ。近年のドルビーアトモス音源は、ロマン派音楽が真価を発揮する土壌となるだろう。今後もこのような名演に期待したい。

スクリャービンの「幻想曲」も今年になってようやくドルビーアトモス音源がリリースされた。

このアルバムは「ラ・ドルチェ・ヴォルタ」という2011年に設立されたフランスの新しいレーベルから出ている。このレーベルは、特にピアノ独奏曲や室内楽で良い音源をリリースしており、ドルビーアトモスのものも多い。付属のブックレットにも詳しい日本語解説が収録されていることが多く、ありがたい。フランスのレーベルということもあり、前回紹介したジャンケレヴィッチの評もよく引用されている。

スクリャービンの「幻想曲」は、その演奏難度のためか録音は多くないのだが、ロマン派屈指の名曲であることは間違いない。特に、神秘的かつ高揚感のある第2主題はとにかく美しい。メロディアスでありながら単調になりがちなカノンを多用しているが、スクリャービンらしい技巧的な左手の進行と合わさることで飽きることのない構成になっている。スクリャービンには難しい曲も多いが、この「幻想曲」は前述のカノンと三連符が多用されているため非常に聴きやすく、美しい旋律は以前紹介したスクリャービンの「ピアノソナタ2番『幻想ソナタ』第一楽章』と同様に、夜の水平線に煌めく星月を眺めているような気分になる。

この曲は解釈によってテンポが大きく変わることがあり、演奏時間が8分ほどの録音から11分を超える録音まで存在するのだが、速すぎると第2主題の感動的なカタルシスが低減してしまうし、遅すぎると流麗な旋律を損なってしまう。紹介したクレメント・ルフェーヴルの演奏はそのあたりのバランスが良く、聴きやすいものになっている。音源もドルビーアトモスなので、目の前で弾いているかのような臨場感もある。欲を言えば、もう少しだけ速く、強弱がフラットになれば理想的なのだが、それは今後の演奏家に期待しよう。

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