見出し画像

雨情のヴァイオリン【カフェ浪漫主義11】

【カフェ浪漫主義】
前回]<<<[目次]>>>[次回

鎌倉の路地ではあちこちの家で紫陽花が見られ、梅雨空の下でも美しい散歩道となっている。種類や色も多彩にあって小雨程度なら楽しく歩ける。

我が荒庭の5〜6本ある紫陽花も今週は各色咲き揃った。

イタリア製ヴァイオリン 
ブラスフラワーベース イギリス 20世紀前期

私は鞠紫陽花より額紫陽花の方が品が良くて好みなのだが、剪って活けると1日で垂れ下がってしまうのが惜しい。その額紫陽花と古いヴァイオリンを取合わせて飾り、雨情の音楽を楽しもう。

ヴァイオリンの音色も酷暑時にはやや煩く聴こえてしまうので、梅雨の涼しいうちに十分味わっておきたい。

20世紀の巨匠ジョン・ウィリアムズとパールマンが組んだ映画音楽のアルバムは古い録音ながら音質はかなり良い。

ジョン・ウィリアムズが指揮をとるこのアルバムは、彼が作曲したものだけでなく、20世紀の映画音楽の名曲が収録されている。今回紹介するミシェル・ルグランの「『シェルブールの雨傘』より"I Will Wait For You"」もその中の一曲だ。ヴァイオリンの名手イツァーク・パールマンをソリストに迎えたこの盤はアレンジが凝っていて退屈しない。ジョン・ウィリアムズの名曲「『シンドラーのリスト』のテーマ」も収録されているが、この曲もサウンドトラック版よりこのアルバム版の方がずっと良い。

「すべてのヴァイオリニストの見本」と称されるパールマンは、何といってもその音色が美しい。パールマンの豊かな演奏を聴いていると、ヴァイオリンの最大の魅力はその音色の美しさだということを再確認できる。パールマンは重音奏法やビブラートも絶妙に巧いのだが、音の深さや厚みだけでも彼に匹敵するヴァイオリニストはほとんどいない。特にロマン派の小品や映画音楽の名曲を聴くとその差がよく分かる。

ミシェル・ルグランはパリ音楽院でブーランジェのピアノクラスで学んでいたため、フォーレの孫弟子ということにもなる。そのため、ルグラン本人はピアニストでもあるのだが、『華麗なる賭け』や『おもいでの夏』のように、ルグランの映画音楽は不思議と弦楽版の方が名演が多い。今回の『シェルブールの雨傘』もパールマンの耽美的な演奏とは相性が良かったようだ。

ジョン・ウィリアムズの指揮も、この曲の旋律の美しさや映画音楽としての抒情性を最大限に引き出している。ジョン・ウィリアムズが、作曲家だけでなく指揮者としても非凡だったということがよく分かるアルバムだった。

先月の鎌倉宮の骨董市で、大正浪漫の絵柄の横浜焼の小皿を見つけた。

横浜焼染付皿 大正〜昭和初期

何とも雰囲気のあるガス燈の下のヴァイオリン弾きと大正袴の御嬢さんの絵皿だ。

大正時代には蓄音機やレコードは稀少で、楽器もピアノやオルガンは大変高価だった。ヴァイオリンはそれらより入手し易い価格だったので、かなり流行していたようだ。

ロマン派にはエレジーとかロマンスと言う題名の曲が沢山あり区別し難いが、いかにもそんな曲が似合う街角のヴァイオリン弾きの絵だ。

大正は、竹久夢二の画や野口雨情の童謡といった、いわゆる「フラジャイル」が流行した時代でもあった。野口雨情の詞は西條八十や三木露風のものほど洗練されているわけではないが、たしかに「雨情」という名に相応しい抒情性は備えていたようだ。

雨の日が続く時季には、こうした20世紀の遺産の中で湿った抒情を楽しむのも良いだろう。

【カフェ浪漫主義】
前回]<<<[目次]>>>[次回


いいなと思ったら応援しよう!