至福の高音質【カフェ浪漫主義8】
年中でも僅かな暑くも寒くもないこの季節こそ、聴いておくべき音楽も豊富にある。
梅雨やその後の酷暑時には適した音楽も少ないので、今のうちに大いに楽しんでおくのだ。特に日々のコーヒータイムには是非各々の好みの曲を用意しておきたい。
音楽評論では第一人者の吉田秀和も鎌倉の住人で、中原中也や小林秀雄とも鎌倉文士仲間だった。

戦前の蓄音機やレコードは大変高価で、彼が新しいレコードを買って帰ると文士達が寄って来て自然と試聴会になっていたようだ。当時の若い音楽好き達はどこでもそんな様子だったのだろう。
レコードの種類も限られていてドイツ古典派以外は滅多に入手出来ず、それ以外は楽譜による生演奏でしか他の曲を知る術の無かった時代だ。
そんな時代に彼の文章は専門家的な知識の羅列ではなく、己が感動を詩的に伝えようと工夫していて好感が持てる。
戦後の吉田は鎌倉文士仲間の刺激か絵画や日本伝統文化への想いも深まり、多彩な感興で表現に深みのある評論随筆も数多く書いた。
その集大成が写真の『音楽』三部作と、他には歌曲中心の『永遠の故郷』四部作等がある。
クラシック音楽好きならこの本をコーヒーテーブルに置いて、日に一編づつでも読むのはこの上ない優雅な楽しみとなるだろう。
近年の音響技術の進歩で画期的な高音質録音のドルビーアトモス(空間オーディオ)が出た。ドルビーアトモスに非対応な再生機器だったとしても、サブスクリプションに加入していなかったとしても、元の音源がドルビーアトモスに対応していれば音質の良さを実感できる場合が多い。
この恩恵はポップスやヒップホップよりクラシック音楽に新風を巻き起こしている。特に弦楽器の音が格段に良くなり、ひと昔のヴァイオリンやチェロとは別の楽器のように聴こえてくる。演奏家もそれに気づいているようで、チェロソナタやヴァイオリンの小曲といった室内楽を中心に、ドルビーアトモスの音源が増えてきている。
以前の記事で、エルガーの「ロマンス」のドルビーアトモス音源を紹介した。
今回もエルガーの「エニグマ変奏曲第九変奏『ニムロッド』」を取りあげる。ドルビーアトモスの高音質録音が真価を発揮するのは、やはりこのような弦楽の緩徐楽章だ。
このアルバム『イマーシブ・エクスペリエンス』は、「ドルビーアトモスを最大限に活かした音楽体験」というコンセプトをもとに演奏・録音されているだけあり、私が保有するアルバムの中でも、最も音質がいいものの一つだ。紹介したエルガーの「ニムロッド」のほかにも、ブラームスの「交響曲第三番第三楽章」や、「アルビノーニのアダージョ」、マーラーの「アダージェット」など、弦楽器の音色をじっくり味わえる曲が収録されている。
演奏はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団で、指揮はベン・ジャーノンというイギリス人だ。「エニグマ」の「ニムロッド」はイギリス人にとっては特別な曲らしく、ホルストの「木星(ジュピター)」と同様にオリンピックや式典の度に必ず演奏されるようだ。
螺旋を描くように響き渡る弦楽合奏がこの曲の魅力だが、ドルビーアトモスになると重層的な音の厚みが生まれ、より荘厳さや気高さが増す。我が家ではこうした高音質楽曲は、昨年発売したマーシャルのスピーカー「エンバートン3」で楽しんでいる。

マーシャル 小型スピーカー「エンバートン3」
オーディオマニアになると、空間オーディオを再現するためにスピーカーを6台以上置くこともあるようだが、それは流石にお金と手間がかかりすぎて手が出せない。「エンバートン3」のような片手でラクに持ち運べるブルートゥーススピーカーなら、コーヒーブレイクにも簡単にセッティングすることができるので非常に快適だ。
ハードロックやヘヴィメタルのギターアンプで有名なマーシャルだが、近年は高性能なスピーカーも数多く造るようになった。今回の「エンバートン3」は、小型ながらも迫力ある重低音やキレのある音色を聴かせてくれるので、ハードロックやポップスだけでなく、クラシックにもよく合う。これまでの「エンバートン2」で対応していなかったアップルミュージックのコーデック(AAC)にも対応したようだ。
何より、クラシカルなデザインがインテリアとして申し分なく、書斎や珈琲を楽しむ空間にもよく馴染む。毎日の朝食やティータイムをより優雅に心地よく過ごすために、ドルビーアトモスの楽曲や「エンバートン3」のようなスピーカーを試してみてはいかがだろうか。
