愛すべきおっさんの生態系 | 創作大賞エッセイ感想
創作大賞2026エッセイ部門の感想を書いています。
今回読んだのは野やぎさんのエッセイ。
ネタバレするのでお先に本編をお読みください。
読み始めて2秒で立ち上がる、なんの話ですか感。野やぎさん、私をどこへ連れて行こうとしているのですか!!
「数年来おじさんとして生きているので、生きてるだけで加害を自覚している。」
ここからギアが入る感じですね。この“おじさんとしての生きづらさ”の解像度がとても良い。私の人生でおじさんになることは一生なさそうなので、生態系を覗き見しているような面白さがありました。嗚呼、愛すべきおじさん。
このエッセイの白眉は、「髪切ったら幼く見られてー」からラストにかけて。一瞬の出来事をめぐる脳内の葛藤をここまでテンポよく読ませる感じ。とても面白く一気に読み切りました。「脳内の俺の独り言」で畳みかけていくスタイル、これかなり武器なのでは?この路線で一冊いけるイメージが湧きますね。
読んでいて興味深かったのは、「言語化サバイバル」というテーマで、二つの質感の異なるエッセイが書かれているところ。前半が「なんの話ですかエッセイ」で、後半が「脳内の俺の独り言系エッセイ」。その上で完全に個人的な感想なのですが、別の篇に分けるか、あるいは前半と後半の接続の因果関係がもう一段強くなると、文章全体の推進力がさらに増すように感じました。最初のエピソードが回収されるわけではないので、「親戚の子供とクレジットカードと聳え立つおっぱいはどこ行ったああ?!」と読んでいたカフェで叫んだり叫ばなかったりしました。
どちらか選べと言われれば、個人的にはおじさんの生態系エッセイ推しです。おっぱいの行方も気になりますが。この「おっさんの脳内独り言を高速で展開していくエッセイ」、かなり強いし普通にもっと読みたい。なのでぜひこの路線で、もっと振り切ったものを読みたいです。欲を言えば、限界ギリギリおっさん界隈を読みたい。あとおっぱいの行方も気になります。
全然話が飛ぶんですが、男性エッセイストって、女性に比べるとめっぽう少ないですよね。男性小説作家がエッセイを刊行しているものはたくさんあるけれど。おじさんの書くエッセイ、穴場でめちゃくちゃいいのでは。私がおっさんなら書きたかった。男性のエッセイ、もっと探して読んでみよう。
注)野やぎさんのことをおっさんだと思っているわけではありません実際にお会いした野やぎさんはむしろ好青年寄りのおじさんでしたがこの文章においてはおっさんでいてほしいのでおっさんと呼んでいます
創作大賞エッセイ部門への感想、亀のようなスピードですが、気長に待って頂ける方、ぜひお待ちしております。
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