杉原誠四郎氏が東京地裁決定を批判③~旧統一教会への解散命令は「法の公正」を逸脱
解散要件の「法令に違反して」に民法の不法行為(709条、715条)は含まれるのか?
②からの続き。
「新しい歴史教科書をつくる会」前会長で、現在は「国際歴史論戦研究所」の会長を務める保守派の重鎮、杉原誠四郎氏が指摘した東京地裁決定の重大な問題点はまだあります。
杉原氏は被害者数と被害額の算定がメチャクチャだと批判したのです。
宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(第81条1項1号)を解散の要件の柱としています。
今回の裁判では、宗教法人法に言う「法令に違反して」の「法令」に民法が含まれるのか、特に一般不法行為を定めた709条が含まれるかが争点になりました。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この条文から明らかなように、民法709条はそもそも違反するとか違反しないとか言えるような性格の文言ではありません。
他人の権利や利益を侵害した者は損害賠償する責任を負うと定めているだけです。
また、①で述べたように、文科省が挙げた32件の民事判決のうち、民法709条の不法行為とされた判決は2件のみ。
他の30件は民法715条の「使用者責任」です(709条の一般不法行為とは異なり、特殊不法行為に分類される)。
この場合の「使用者責任」は、信者の所属教団に損害賠償を肩代わりさせるもので、不法行為といってもごく形式的な意味しかありません。
旧統一教会は、709条にしろ715条にしろ、民法は宗教法人法第81条1項1号の「法令」には含まれないとして、民法の不法行為を根拠として質問権を行使し、解散命令請求を申し立てた文科省に強く反発してきました。
しかし、裁判所は旧統一教会の主張を退け、民法も法令に含まれるとの判断を下したのです。
被害者数・被害額の算定がメチャクチャ
杉原氏は、そういう判断もあり得るだろうと東京地裁決定に一定の理解を示しつつ、次のような批判を展開します。該当箇所を引用しましょう。
民法の事件とは、法的にいえば「不法行為」の問題だ。「不法行為」というのは民法第709条に基づくものだが、民事生活にあって、全ての違法行為を予め条文化しておくことはできないから、民事生活で損害が生じたとき、損害を受けた側が加害者の側に損害の賠償を求めたとき、初めて不法行為という違法行為があったことになる。
今回、文科省が解散事由として集めたのは、被害者と名乗る人たちの被害の陳述である。
が、被害者と名乗る人の被害の陳述だけでは不法行為は成立しない。その陳述内容が正しい内容なのか、そして被害として認定できるものなのか、それらが明確となって初めて不法行為となる。
が、今回の文科省が集めた被害届は、本来検証能力を持たない文科省が集めただけあって、不法行為として成り立つか検証されておらず、さらには虚偽の申告が多数含まれていることがすでに判明している。
例えば、月刊誌Hanadaの本年4月号に載った福田ますみ氏の「文科省の犯罪『統一教会陳述書』捏造の全貌」で見るとよいが、中には本人は返金を求めていないのに息子によって陳述書が創作されて提出した例など、あまりにもでたらめのものが多数含まれている。
信仰者は信仰している時期に行った献金は、信仰を失い棄教した時点になって棄教した理由で返還を求めることはできないという大原則を踏まえれば、文科省の集めた陳述書には不法行為として扱えないものがもっとあると考えられる。
しかるに文科省より解散命令の申請を受けた東京地裁は、文科省の提出した陳述書に何の検証もせず、簡単にいえばこれら全ての被害届の被害額と人数を合算して、被害者は1560人弱、被害額は204億円超として解散命令の決定をしたのである。
その際、裁判の判決を通じて決まった賠償額は該当させてよいが、裁判を通じて合意(注・訴訟上の和解)して支払った賠償額を含み、さらに裁判を通さない示談で解決した賠償額も含めた。
「被害者1560人弱、被害額204億円超」は大幅な水増し! 和解、示談、未検証の被害申告を含んだ数字
順を追って説明しますが、まず民法の不法行為を認定された旧統一教会の敗訴判決は32件、原告は計169人です。被害者が169人というなら辻褄が合いますが、東京地裁は「被害者は1560人弱、被害額は204億円超」ととてつもない数字を挙げました。
「待ってました!」とばかりにこの数字に飛びついたのがマスコミです。例えば、たまたま目に付いた琉球新報。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して東京地裁は25日、解散を命じた。地裁は、献金被害が少なくとも1500人超に約204億円生じており、類例がない膨大な被害が出たと判定した。
しかし、民事判決の被害者数169人がなぜ1500人超に急膨張したのでしょうか?
理由は、民事判決以外の
訴訟上の和解
訴訟外の示談
文科省のヒアリングによる被害申告
も含めたからです。
確かに和解や示談には法的拘束力があります。特に訴訟上の和解は確定判決と同等の効果を持つとされます。
しかし、和解や示談は加害者の行為を「民法の不法行為」と認定したものではありません。
和解や示談は、その定義上、双方の譲り合いによって成立するもの。加害者が100%悪いということはあり得ず、「加害者」「被害者」という言葉は使っても、双方共に判決までは求めないからこそ和解または示談するわけです。
被害者側は「絶対に許せない。相手が100%悪い」と思うならば、刑事、民事の両方で相手を訴えるのが普通です。
民事でしか訴えない場合、相手の行為は刑法違反には当たらないと初めから認識していたことになります。
旧統一教会は、民事で訴えてきた相手が、同時に刑事(例えば詐欺罪)でも訴えてきたことは1件もないと述べていました(教団の「お知らせ・ニュース」で読んだ覚えあり。出所が分かり次第リンクします)。
つまり、被害者たちは「お金をむしり取られた」「だまされて大金を奪われた」などと口では信者や教団を犯罪者のごとく非難しても、実際にはとても刑法の詐欺罪には問えないと分かっているのです。
教団の実質勝訴で和解しても、教団が「加害者」にされる不思議
また、被害者が和解・示談するのは、敗訴リスクを避けるためでもあります。
「絶対に許せない。相手が100%悪い」と思っている人は、あくまで判決を求めます。和解や示談なんて論外と考える人もいるのは、それだけ被害感情が強いからです。
しかし、訴えてはみたものの、とても勝てないと悟り、和解で妥協するというのはよくある話です。これは和解・示談についての法律解説には必ず書かれていることで、ほとんど常識と言ってよいでしょう。
実際、旧統一教会は訴えられた裁判の1審で勝訴し、2審では自称被害者のウソが次々に明るみに出て圧倒的に有利な立場に立ったのに、裁判長の勧告に従って和解した例を動画で公開しています。
以下は上の「ニュース」の欄に載った「和解を根拠に解散命令?①山田花子さん(仮名)」と題する動画。
この場合、教団側が実質勝訴して、判決まで進まずに善意で和解したのですから、教団を被害者呼ばわりするのは100%間違っています。
上記の教団「ニュース」には、類似の不当な事例が他に5件動画で紹介されており、これらを見れば、和解・示談を民法の不法行為に相当するなどと言えるわけがありません。
「被害者1560人弱、被害額204億円超」は大幅に水増しされた数字なのです。
④につづく。
