今日の優しさは、静かになってから届く。
帰り道。
「今日は疲れた。」
そう思っていた。
今日も、
言葉を選び、
表情を整え、
空気を読んでいた。
だから、
疲れたのだと思っていた。
家に着く。
お風呂にお湯を張る。
柑橘の香りが、
ゆっくりと広がっていく。
肩まで浸かる。
目を閉じる。
静かになった世界の中で、
今日のことを思い返していた。
笑っていた顔。
何気ない一言。
別れ際に、
小さく振られた手。
そのひとつひとつが、
湯気の向こうから浮かんでくる。
疲れて帰ったはずだった。
なのに、
思い出すのは
温かい場面ばかりだった。
そのことが、
少し不思議だった。
疲れた日は、
何も残っていないと思っていた。
でも、
違った。
静かになってから、
届くものがあった。
今日という時間の温かさだけが、
なぜか心に残っている。
お風呂から上がる。
身体が少し軽い。
心も少し軽い。
疲れていたんじゃなかった。
今日の優しさは、
静かになってから、
私に届くのだ。

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この作品は、シリーズの4作目です。
よろしければ以下もどうぞ。
1作目:一緒にいても、疲れない人
2作目:一緒にいると、疲れてしまう人
3作目:一緒にいると、自分を忘れてしまう人
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