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一緒にいると、疲れてしまう人


あの人が悪いわけではないと思う。

 

ただ、帰り道に気づく。

 

今日は少し、疲れている。

 

会話は普通だった。

変なことを言われたわけでもない。

嫌な空気があったわけでもない。

 

それなのに、

家に着いたあと、少しだけ動けない。

 

理由を考えてみる。

でも、はっきりとは出てこない。

 

ただひとつだけ思い当たる。

 

ずっと、少しだけ気を張っていた。

 

嫌われないように。

変に思われないように。

空気を壊さないように。

 

その小さな緊張が、

ずっと積み重なっていく。

 

そうしているうちに、

会話は続いているのに、

心のどこかが少しずつ固くなっていく。

 

笑っている。

うなずいている。

ちゃんとやれている。

 

なのに、

どこかで息が浅い。

 

疲れる人が、悪い人だとは限らない。

むしろ、いい人であることも多い。

 

だからこそ、ややこしい。


優しい人ほど、

がっかりさせたくないと思ってしまう。


だから、
笑い方に少しだけ気を遣う。


がっかりさせないことが、

いつのまにか目的になっている。

 

その場ではちゃんと楽しい。

普通に笑っている。

会話も成立している。

 

それでも、どこかで少しずつ、自分がすり減っている。

 

一緒にいて疲れる人といるとき、

自分は少しだけ「自分ではない形」に寄っていく。

 

そのことに気づくのは、いつも帰り道だ。

 

駅のホームで、急に静かになる。

電車に揺られながら、ただぼんやりと座っている。

 

さっきまで普通だったのに、

今になって重さが出てくる。

 

その違いは、たぶん大きな出来事じゃない。

本当に小さな“無意識の消耗”だと思う。

 

ただ、そこにいるために使っていた力。

 

それが、あとからゆっくり戻ってくる。

 

だから思う。

 

疲れる人は、嫌いな人とは違う。

 

むしろ、嫌いじゃないことの方が多い。

 

でも、帰ってきた自分が少し遠い。

 

本当の自分に戻るまで、少し時間がかかる。

 

玄関のドアを開ける。

靴を脱いで、部屋の明かりをつける。

 

ただそれだけのことなのに、

少しだけ間があく。

 

その間に、ようやく戻ってくる。

 

さっきまで外にいた自分が、ゆっくりと戻ってくる。

 

そして思う。

 

ああ、今日は少し削られていたんだな、と。


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この作品は、シリーズの2作目です。

1作目:一緒にいても、疲れない人

3作目:一緒にいると、自分を忘れてしまう人

4作目:今日の優しさは、静かになってから届く。




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