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一緒にいても、疲れない人


ふと、不思議だなと思う。

 

同じ時間を過ごしているのに、

帰るときの自分の状態がまったく違う。

 

ある人と会った日は、

家に着いたあと、しばらく動けない。

 

会話は楽しかったはずなのに、

心だけが少し遅れて置いていかれている。

 

電車の窓に映る顔が、

ほんの少しだけ疲れて見える。

 

その理由は、

そのときには分からない。

 

でも、

別の人と会った日は違う。

 

特別なことを話したわけでもない。

 

印象的な言葉があったわけでもない。

 

それなのに、

帰り道の足取りが軽い。

 

呼吸が浅くなっていない。

 

その違いに、

ずっと気づかなかった。

 

気が合うかどうかの話だと思っていた。

 

話が盛り上がったかどうかの話だと思っていた。

 

でも違った。

 

疲れるのは、

人と会うことそのものではなかった。

 

その場で、

自分をどれだけ無意識に調整していたか。

 

それだけのことだった。

 

ある人の前では、

話し方や表情や反応を少しずつ整えている。

 

嫌われないように。

 

変に思われないように。

 

空気を壊さないように。


その小さな緊張が、ずっと続いていく。

 

そうしているうちに、

会話は続いているのに、

心のどこかが少しずつ固くなっていく。

 

笑っている。

 

うなずいている。

 

ちゃんとやれている。

 

なのに、

どこかで息が浅い。

 

反対に、

疲れない相手の前では、

沈黙が怖くない。

 

うまく返さなくてもいいと思える。

 

言葉を探す時間があってもいい。

 

黙っていても、

そのままで流れていく。

 

その違いは、

会話の内容ではなかった。

 

ただ、

息の深さが違った。

 

ある人と過ごした夜。

 

帰宅して靴を脱いだあと、

玄関にしばらく立っていた。

 

何をしていたのか分からない。

 

ただ、

自分の気持ちが戻ってくるのを待っていた。

 

帰り道が長かったのではない。

 

帰り道で、

やっと自分に戻っていたのだ。

 

疲れない相手と過ごした日も、

同じように帰る。

 

でもそのときは、

自然に部屋へ入り、

そのまま日常へ戻っていける。

 

不思議なのは、

その相手の前で

「ちゃんとしていない」

わけではないことだった。

 

むしろ少しだけ、

余計な力が抜けている。

 

間違えても大丈夫。

 

言葉につまっても大丈夫。

 

そんな安心が、

どこかにある。

 

だから気づかないうちに、

自分の中の余白が戻ってくる。

 

家に帰ってから思う。

 

今日は、

何も特別なことはしていない。

 

それなのに、

妙に疲れていない。

 

鍵を置き、

上着を脱ぎ、

ソファに腰を下ろす。

 

窓の外は、

いつもの夜だった。

 

ただひとつ違ったのは、

 

自分を連れて帰ってこられたこと。

 

そのまま、

少しだけ、深く息が戻ってきた。





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「人との距離感」「自分との付き合い方」「心を整えること」をテーマに綴っています。

少しずつ、ご自身のペースで読んでいただけたら嬉しいです😊



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