安心を探して、生きてきた。
これは、自分への手紙として書き残しておきます。
私は、何を探して生きてきたのだろう。
長い間、その答えが分からなかった。
幸せだと思っていたもの。
頑張れば手に入ると思っていたもの。
認められること。
役に立つこと。
必要とされること。
でも、どれも少し違っていた。
小学校二年生。
図工の時間だった。
積み木で家を作る授業。
前の日から母と一緒に、
どんな家にするか考えた。
必要な積み木を数えて、
袋にきれいに詰めた。
少し誇らしい気持ちで学校へ行った。
でも、
隣の席の子が困った顔で言った。
「積み木、忘れちゃった。」
その瞬間、
私は自分の袋を机の下へ隠した。
出せなかった。
自分だけ家を作れることが、
どうしても苦しかった。
先生に理由を聞かれても、
何も言えなかった。
今なら少し分かる。
私は、
隣の子が安心できていないのに、
自分だけ安心することが、
できなかった。
中学校では、
授業よりも、
給食と休み時間が苦手だった。
一人になるから。
みんなは友達と笑いながら食べている。
私は一人だった。
「一緒に食べてもいい?」
その一言が、
どうしても言えなかった。
だから、
急いで給食を食べた。
箸だけを動かして、
顔は上げられなかった。
食べ終わると、
ベランダへ出た。
外を眺めていた。
あの時間だけは、
誰とも目を合わせなくて済んだから。
ある日、
同級生が私に言った。
「食べるときだけは、一人じゃないほうがいいんじゃない?」
私は何も答えられなかった。
ただ、
その言葉だけは、
今でも覚えている。
大人になってからも、
あまり変わらなかった。
工場で働いていた頃、
初めて営業に同行した。
訪ねた家の玄関で、
チャイムを押した瞬間、
大きな声で怒鳴られた。
「また売りつけに来たのか!」
以前の営業担当が、
必要以上に商品を注文してしまい、
家には使い切れないほど残っていた。
お客様は怒っていた。
言葉が出なかった。
ただ、
怒りより裏に、
困っている気持ちが伝わってきた。
話を聞いているうちに、
お客様がぽつりと言った。
「小分けにできたら、誰かにあげられるのにね。」
その言葉が、
胸に残った。
会社へ戻り、
できることを考えた。
上司は静かに首を振った。
「前例を作れば、同じことが続く。」
それでも諦めきれなかった。
もう一度、
もう一度その家を訪ねた。
後日、
「本当にやってくれると思わなかった。」
そう言って笑ってくれた。
私は嬉しかった。
でも、
それ以上に思った。
あの時、
私は怒られていたのではなかった。
困っている人に、
出会っていたのだ。
長い間、
私は、
この性格が嫌いだった。
考えすぎる。
気を遣いすぎる。
疲れやすい。
もっと強くならなければ。
そう思って生きてきた。
でも、
違った。
私は、
安心を探していたんだ。
安心できる場所。
安心できる人。
安心できる時間。
安心できる空気。
安心できる自分。
それを、
ずっと探していたんだ。
私が、
本当に欲しかったものは、
成功でも、
賞賛でもなかった。
安心だった。
安心があると、
人は穏やかになる。
競わなくなる。
劣等感に追われなくなる。
ありのままで笑える。
人を受け入れられる。
自分も受け入れられる。
優しくなれる。
そして、
人が愛おしくなる。
私は、
ようやく少しだけ、
その安心に触れられた気がしている。
まだ途中だ。
また自分を責める日もあると思う。
不安になる日もあると思う。
でも、
以前とは一つだけ違う。
戻る場所を知った。
安心は、
どこか遠くにあるものではなかった。
誰かにもらうものでもなかった。
少しずつ、
自分の中で育てていけるものだった。
私は、
子どもの頃から、
ずっと安心を探して生きてきた。
今日、
ようやく、
その旅の終わりではなく、
安心を育てる旅に立てた気がしている。
海の日。
今日から、
「安心」という言葉を、
少しずつ育てていこうと思います。
いつか、
この言葉が、
誰かの安心になりますように。

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