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父のnote 3話

1997年 6月 

修太は父さんがnoteを書いている横で今日も、
「見せて!」
と言ってくる。
小学生3年生になった修太は毎日学校楽しそうだ。
今は店の外で野球ボールで遊んでるぞ。

店にくるなり宿題やっていたが、
もうこんな難しい漢字も読めるのか?
子どもの成長は早いものだ。

あんなに小さくて、歩くのもやっとだったのがついこないだのような気がする。


ところで、父さんはopenした自分のお店の名前を、
『元乃屋』という名前にした。
何でかわかるか?

もしかしたら、
もう少し大きくなった修太がお店の名前のこと聞いてくるかもな。

一応話しておくが、
これは修太のおじいちゃんから取った名前なんだよ。
修太のおじいちゃんは、
大泉川 富元オオイズミカワ トミゲンって言う名前だろ?
富元だから、”元”の字をとって元乃屋。
そこから取った名前なんだ。

でも実は父さんは子どもの頃からおじいちゃんに対して良い思い出があまり無い。
別に悪い事をしたわけでも無いのに親父の気分で小さい頃からよく殴られていたんだ。
何でこんなに殴られるのかと思っていたぐらいだ。

意外だろ?
今の優しいおじいちゃんとは大違いだ。

後々聞いた話だと、元々優しい性格なのにそれが仇となって借金を背負わされたらしい。精神的に辛かったんだと思う。外ではいつも頭を下げて回っていて、家では父さん達に八つ当たりすることしかできなかったんだと思う。


中学生の頃は姉さんと本気で家出しようと考えていた程だ。

でもな、
それでもやっぱりおじいちゃんは父さんの父親だったんだ。

父さんは高校生の頃漫画家を目指したいと思っていたんだが、
親父には絶対言えないと思っていたが勇気を出して、
「漫画家になりたいから東京に勉強してくる」
と伝えたら、

「お前の人生だろ、好きにしろ」
と言ってくれた。

父さんは今でもその言葉は忘れない。

『自分の人生は自分で決めて生きろ』
と教えてくれた。

結局漫画家の夢は諦めたが、東京で飲食店のバイトで料理が好きになって、母さんに出会って、結婚して地元に戻って店をやろうと決意した。

店をやろうと決意した時には、
親父の名前を付けてお店をやろうと決めていたんだ。

どんなに親父との辛い思い出があっても、
後押ししてくれた親父の言葉があるから今がある。

最大限の感謝と親孝行だと思ってお店の名前を
『元乃屋』にしたんだ。

そして今ではその店は沢山のお客さんが集まってくれる。

こんな嬉しいことは無い。

全ては親父の後押しの言葉からだった。

だからこのnoteを読んでいる修太にも伝えたい。

どんな辛いことがあっても、
感謝を忘れてはいけない。

今苦しかったり、怒りがあったとしても必ず”意味”がある。
投げやりになるのではなく、今起こっている事、
出逢っている人達に感謝して自分の将来に繋げるんだ。

そして修太にとって大きな節目になる時には、
必ず不安に立ち向かう勇気が必要な場面が必ずある。

父さんは高校生の時、勇気を持って親父に漫画家になりたいと伝えた。
それを言ったら殴られると思って押さえ込んでいたら今の現実は起こっていないだろう。


いいか、
『自分の生き方は、自分で決めるんだ』

修太の歩む道は何百通りとあるかもしれない。
どの道に行っても正解だ。

ただし、
不安だが、勇気を持って行く道には自分自身の可能性を切り開く道である事が多い。

それを忘れないで欲しい。

今の修太を見てると、好奇心も旺盛で、
自分から色んなことに興味を示して挑戦しているぞ。

大人になった修太はどうだ?
自分の生きる道を決めて進んでるか?

修太なら大丈夫だ。
いつでも父さんが付いているからな。

遠慮なく相談しろよ。

その頃には元乃屋も、もっと繁盛しているのかもな!

ではまた次のページで会おう。

次はどんな事書こうかな?

父さんより


涙が溢れた。

父さんは本当にこのnoteを僕に遺してくれたんだ。

ただ元乃屋も畳んでるし、父さんもいない。
まともに話もしていなかった。

また自分の不甲斐なさと、
父さんに対して何も出来なかった申し訳なさが込み上げてきた。

noteを開き、強めにnoteの両端を握りしめて、
父さんの書いた文字を見つめることしか出来なかった。

ただ、
自分の『生き方』
って言われてみれば何だろう?

僕は美容師をしている。
地元の専門学校を出て、6年程東京で働いて、
結婚や子ども達の育児をきっかけに地元に去年戻ってきた。
生まれ育った街でお店を出そうと考えていて、
今は知り合いのお店で働きながら何となく独立について考えていたところだ。

そう言えば美容師になったのも行き当たりばったりだったな。

僕が美容師になったきっかけは至って単純。
中学からの親友の翔平ショウヘイが高校生の時に美容師になると言っていて、
「それじゃあ俺も!」
みたいな感じで美容専門学校に行き、
何となく東京で就職し、
美容師としての仕事も楽しく続けていたんだという事を思い返した。

自分で決めたと言われたら決めたけど..

俺、このままでいいのか?

このまま自分が美容師として自分のお店を持って、
順調に暮らしていくという考えが当たり前だと思っていたけど、
『自分の生き方を、自分で決めろ』と言われると、
何となく腑に落ちない感覚がった。

そんなことを考えながら僕は、
また次のページを捲った。


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