父のnote 6話
1999年 4月
修太へ
この頃の修太はもう5年生。
野球頑張っているよ。
毎日楽しそうだ。
実は今、
父さんは病室でこのnoteを書いている。
少し体が悪くなってしまってな、しばらく入院することになりそうだ。
5日後には手術がある。
その間は母さんがなんとかお店を手伝ってくれてるみたいだが肝心のシェフがいないから店はどうにもならんわな。
どうしたことか。
こんなことになってしまうなんて。
でも父さんは諦めないぞ。
どうだ?今までnoteに書いてあることは考えてみたか?
そしてこのnoteをここまで読んだ修太がまず初めにやることは何だ?
よく考えてみて欲しい。
自分の価値を思う存分発揮して、
人生を楽しく生きるんだ。
このnoteを読んでいる修太はどんな仕事をしているんだろう?
安定した会社にいるか?
このnoteを父さんが修太に渡してる頃には、
プロ野球選手か?!
父さんみたいな何か職人的なことか、
自分で事業を作って社長でもやってそうだな!
早く大きくなった修太にこのnote見せたいな。
大きくなった修太に会えるかな。
実は最近もしかしたらその時まで生きていないのかもと考えてしまうこともあるんだ。
少し弱気になってしまったな
早く修太とまたキャッチボールやりたいな。
もし手術が成功していたら、
俺は生きているってことだから、
次のページにまた何か文章が書かれているだろう。
多分成功するから、変な言葉は書かないぞ!
また次のページで会おう。
修太も体だけは気をつけろよ。
父さんより
病室にて
父さんに癌が発覚して入院してた時に書いたnoteだった。
小学校5年生の時、野球が終わって夕方の帰り道、
母さんと歩いてると、
「父さん、癌が見つかって入院することになったんだ」
と言われた。
僕はその時、
父さん死んじゃうの?
と考えた記憶が鮮明に残っていて、
同時に悲しい感情を必死で抑えた記憶が蘇ってきた。
ここで思い出したのが、
この時期ぐらいから父さんと話すことが無くなったんだ。
今までは何となく恥じらいで話していないと思っていたが、
そういうことが理由では無かったのかもしれないと思い始めた。
僕は続きが気になり、すぐさま次のページを開こうとした。
だがそうこうしている内に、最寄りの駅に到着してしまった。
電車を降りるために急いでnoteを鞄に仕舞い、電車を降り、改札へ向かった。
雨が降っていたので、
妻が車で迎えに来てくれていて、車の中から笑顔で手を振っていた。
僕は急いで車に乗り込んだ。
「おかえり、少しはゆっくりできた?」
「ありがとう、ゆっくりできたよ!」
「柊と桃は、おばあちゃんの家にいるからそのままお迎えしてから、家に戻るね」
妻にはnoteの事をまだ伝えていないが、
翔平と楽しく過ごせた事を報告した。
早く子ども達に会いたい気持ちと、
noteの続きを見たい気持ちの両方が入り混じる。
そうこうしている内に、
僕の実家に到着し、母さんと千秋、子ども達が迎えてくれた。
「パパーおかええりー!」
柊と桃が駆け寄ってきた。
「ただいまー、ごめんね急に少しだけ一緒に寝れなくて!」
と子ども達に言うと。
「もっちゃんは全然平気だったよ!」
と桃が相変わらず大人びた事を言っている。
2人を抱えたまま実家に入り、母さんが、
「せっかくだからご飯食べて行ったら?」
と声を掛けてくれたので少し遅いお昼ご飯を実家で食べることになった。
実家には仏壇がある。
父さんも長男だったし、僕も長男だ。
遺影が仏壇の前に掛けられている。
みんなで食事の前にお線香を上げた。
手を合わせている途中、
「じぃじは今はお空から見てるんでしょ?」
と柊が言った。
「そうだね。お空からいつも見てくれているから柊もちゃとお手伝い沢山している所をじぃじに見せないとね!」
そう言うと柊は張り切って母さんの料理のお手伝いに行った。
僕も柊ぐらいの時は、父さんの手伝い沢山してたかな。
そんなことを考えながら僕は、
一瞬だけ父さんの部屋を見に入った。
まだ片付いていないな。
部屋は本屋書類が散乱し、散らかっている。
他にも似たようなnote無いのかな?
でもこんなに沢山書類やらノートやらがあったら探すのは至難の技だな。
まぁいつかなんか見つかるかも。
この部屋も片付けないとな。
そう思いながら父さんの部屋の扉を閉め、
リビングに戻り、皆んなで食事を楽しんだ。
少し遅めの食事を食べ終えると、
子ども達はワイワイ騒いで2人とも寝てしまった。
母さんにまた近い内に来ることを伝え、実家を出て、
寝た子ども達を妻と背負い車に乗せ、自宅へと戻った。
自宅のベッドまで子ども達をおぶって寝かせ、
一息ついたところで、リビングのソファに腰掛け、
ふぅーっと深呼吸した。
弾丸だったなー。でも行って良かった。
そうだnoteの続き見よう。
僕はコソコソと自分の部屋に戻り、
父さんのnoteを机の上に置いた。
机の上に置いたnoteを見ながら、
父さんが言っていた
”ここまで読んでまず初めにやることは何だ?”
という問いに対して考えていた。
ただ僕はその答えは自分なりに考え、
何となくやることは分かっていた。
それは、
母さんの髪を切ってあげることだ。
僕は母さんに対しても意地や恥ずかしさがあったりで自分から髪を切りに来てと言ったりしたことが無い。母さんも僕に気を使ってか自分から髪きって欲しいと言われた事も無く、一度も髪を切って上げたことが無い。
本当は一番感謝を伝えないといけない人なのに。
未だに親孝行が何一つも出来ていない。
母さんの髪切って上げよう。
ちゃんと伝えよう。
そう決意した僕は、
僕は机の上に出したnoteを開き、
次のページを捲った。
