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沖縄的になれたのにならなかった日本をほっつき歩く 第3章|横須賀ドブ板通り──エキゾティックな陽気さの向こうにある現実

横須賀という街は不思議だ。
民間人にとっては、駅を出た瞬間からアメリカの匂いがぷんぷんするものの、歩いてしまえば、いたってのどかなエキゾティックな街に過ぎない。
たとえば京浜急行・横須賀中央駅に降り立ち、三笠ビル商店街を抜け、タトゥー屋など横間に見て、ドブ板通りに入って、軍もの屋(フライト・ジャケット、コマンド・セーター、シャツ類、アサルト・リュック、バッグ類)、なお、軍もの屋には不思議と白いセイラーキャップは見あたらない)。スカジャン屋、(スカジャンはアメリカ兵がジャンパーに刺繍をほどこして欲しいよいう依頼からはじまったらしい。)ハンバーガー屋、ビリヤード台のあるバーなど散策し、ショッピングモールのCOASKA BAYSIDE STORRSの前から海軍基地を眺める。潮風の匂いを嗅ぎながら、どんな印象を持っていいのかわからない。まるでティーンエイジャーの恋人たちのデートコースである。ノスタルジックに甘く、陽気で、セピア色の写真のように、無防備な散歩道だ。そのすぐ向こう側で、世界の緊張が日常業務として管理されているというのに。

横須賀のドブ板横丁の洋服屋に飾られるスカジャンたち、
その光沢のある化学繊維のジャンパーの背中には、
龍、虎、雷神、富士山、芸者、ベティブープなどの刺繍が施してある。
スーヴェニール・ジャケット、軍役のおもいで。
私は想像する。
おれはグレン・キャンベルなんか好きじゃねーよ、
と言い張りながら実はリンダ・ロンシュタットが大好きな
アーカンソー出身の太っちょのエド、
ハンバーガーとチョコレートケーキばっかり喰ってる、オクラホマのテッドたちは、
いまいったいどんな訓練をしながらどんな日常を送っているだろう。
だが、そんなかれらの日常は私たちには見えない。

ぼくは軍艦めぐりクルーズ解説つき45分、2200円に乗ってみる。桟橋の向こうはアメリカ海軍基地で、2万人が暮らしていて、学校も病院も映画館もあるそうな。アメリカ海軍の灰色のイージス艦が見える。亀の甲甲羅の形のレーダーが貼り付けてある。その脇には大砲を積んだ日本海軍自衛隊の軍艦も停泊している。そして空母ジョージ・ワシントン号である。なんと6000人が乗っているそうな。潜水艦も見える。

横須賀は福生(横田基地)と並んで、首都圏を守る「日米同盟の重要拠点」で、横須賀は海軍拠点なのである。横須賀は、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」を維持するため、このいたってハッピーなスローガンのもとで、横須賀は米海軍にとって世界で最も重要な前方展開拠点となっている。横須賀は、空母打撃群が実際に出撃し、艦船を修理し、ミサイル防衛にあたる「オペレーション(作戦実行)の現場」なのだ。なお、海上自衛隊の自衛艦隊司令部もここにあり、日米の軍艦が日常的に顔を合わせる「現場レベルの強固な結束」となっている。

クルーズ船の客の誰かが話している。トランプ米大統領が、南米ヴェネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束し、米ニューヨークへ移送したことを。だがそれも、親子連れの客たちの記念写真撮影のざわめきのなかにかき消される。

ぼくはどんな感想を持っていいのかわからない。アメリカはヴェトナム戦争で、かの地に枯葉剤まで撒いたではないか。ヴェトナム人たちの悲劇は言うに及ばず、アメリカ兵とて気の毒ではないか。そんな戦争犯罪はいまなお止むことがない。とっくに戦争も平和も経済に巻き込まれている。もはやそれはピープルの経済とはかけ離れている。また、戦争商売人たちも、きっとひとりひとりは「良い人」なのだろう。スカジャンはただただ哀しい。

トランプ米大統領は2025年10月28日、高市早苗首相とともにアメリカ海軍横須賀基地を訪問し、原子力空母「ジョージ・ワシントン」上で演説を行った。トランプ氏は「力による平和」と日米関係の重要性を強調し、高市首相も日本の防衛力強化と日米同盟の発展を誓ったものだ。その後、高市総理は国会で「台湾有事は日本有事」と口を滑らせ、トランプ大統領に叱られることになりもすれば、中国共産党は激怒し経済制裁として日本に各種レア・アースの輸出を止める可能性をちらつかせている。しかも、真偽は不明ながら、中国はただいま尖閣諸島電撃奪取計画を立てているという噂もある。

ドブ板通りのレストラン・バーTSUNAMIでは、ドナルド・トランプ・バーガーを売っている。店頭ポスターによると、700g ピーナッバター、目玉焼き、ベーコン2枚、メキシコ産の激辛青唐辛子ハラペーニョの輪切りを加えた赤いミートソースのスラッピージョー、チェダー・チーズ2枚、パテ、レタス、トマト、オニオン、バンズ。じゃがいものソテー添え。これをフレンチズのマスタードとヘインツのケチャップをかけて食べるようだ。

ぼくはトランプ・バーガーは食べず、結局、ネイヴィーバーガーとしいて言えばエジプト~中東料理のATHENA soflakiで、Philly Cheese Steak(サンドウィッチ)を食べた。ご高齢の小柄な給仕の日本女性はアメリカ人客には上手に英語で応対している。手が空いたちょっとした閑にぼくに話しかける、「きょうは横須賀散歩? どこからいらしたの?・・・あら、あたしの実家ご近所ね。・・・横須賀は田舎なのよ、軍港があるだけだもの。」彼女の名前は佐々木京子さん、こちらでの週末バイトは7年目。オウナーはエジプト系で日本在住35年だそうな。

横須賀は田舎なのよ、軍港があるだけだもの。ーーぼくは思った、たしかにそのとおりなのだろう。軍港があって、ドブ板通り商店街がある。日本人たちに混じって、アメリカ人たちの姿がちらほらする。ネイヴィーバーガーと軍もの衣類、スカジャン、海軍カレー、いくつかのバー。あとはしいて言えばカクテルの横須賀ブラジャーか、ブランデーとジンジャーエールのカクテルなんだってさ。異文化との邂逅の産物はそれだけなのだ。横須賀もまた、沖縄になれなかった街なのである。

つづく



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