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トマス・フミモテの、World Crazy Wars Report。戦場Ⅸ:サウジアラビアーー石油成金の不安、二度と貧乏に戻りたくない!

わたしの名前はトマス・フミモテ。Half-Jewish, half-coward, and 100% scared journalist from New York. Yes, I’m scared. Very scared. わたしは世界でいちばん臆病なジャーナリストです。

わたしの国の大統領ドナルド・トランプは3つ良いことを教えてくれました。
1つめ、「男が人生の目的を『カネ、美女、名誉』とすると、道化者になりかねないこと」。
2つめ、「いくらカネと美女と名誉を手に入れても、バカは結局尊敬されないこと」。
3つめ、「毎日ハンバーガーばかり食ってるとアルツハイマーになりかねないこと」。

But as a Jew I must add carefully:「人を傷つけるものが三つある。悩み、いさかい、空の財布(貧乏)。そのうち空の財布がもっとも人間を傷つける」。そりゃそうですよ、わたしだってド貧乏に落ち込むのは御免ですからね。


さて、今回の戦場はサウジアラビア。リヤドの新国際空港建設現場で、わたしは一人のサウジ人エンジニア、Ahmedと話していた。かれの目には、野心と不安が同居している。「“wallahi, I’m not sure,” (この空港は世界最大級になるちゅうねんけど。でも、ほんまに人はサウジに来てくれるんか?)」
その呟きが、砂塵に舞う建設現場で風に消えてゆく。

そう、This is a battlefield. たとえ爆撃機や戦車は見えなくても、しかし石油という黒い血をめぐって、アメリカ、中国、ロシア、イラン、ヨーロッパが水面下で殴り合っているのだ。


沙漠の貧乏国から石油王国へ

20世紀初頭、この土地はただの沙漠だった。ベドウィンの遊牧民がラクダとともに移動し、世界から忘れられた不毛の地。

だが1938年、アメリカの石油会社が掘り当てた黒い液体が運命を変えた。サウジは「世界の油壺」と化し、アラビア半島は一夜にして国際戦略の最前線に。

“Allahu Akbar!”
沙漠から湧き出る石油は神の恵みと信じられ、アメリカは石油を確保する代わりに王族を守る。石油はただの燃料ではなく、同盟という武器になった。


生意気になった子分の反撃

1970年代、オイルショック。サウジは「アメリカの子分」から「石油価格の決定者」へ。
王宮の一声が、東京のガソリン価格も、ニューヨークの株価も動かす。

だがこれはたんなる経済の話ではない。原油価格は冷戦の弾丸よりも強力な武器となり、ソヴィエト連邦の弱体化にも影響した。石油は国家の命運を左右する「見えない戦争兵器」だったのだ。


悪夢の始まり:埋蔵量詐欺疑惑

2010年以降、WikiLeaksが暴露した外交文書がサウジに疑問を突きつけた。
「サウジは石油埋蔵量を盛ってるんじゃないか? ほんとは埋蔵量は半分しかないんじゃないの? 証拠もあるぜ。」

アメリカはシェール革命で自立を強め、中国は輸入先を diversifying、ロシアは天然ガスで欧州を揺さぶる。サウジは「もう自分たちが王様じゃない」と気づきはじめた。

同時に脱炭素の潮流。パリ協定、再エネ、カーボンニュートラル。サウジの王族たちの頭に浮かんだのは、かつての貧しい沙漠の記憶だった。
「“Never again,”(二度とあの頃には戻りたくない!)」


1兆ドルの大賭博:沙漠のユートピア「ネオム」

そこで打ち出されたのが「ヴィジョン2030」。総額1兆ドルの未来都市計画。その中心「ネオム」には、170キロメートルの直線都市「ザ・ライン」、500メートルの鏡面ガラスの壁。

……いや、サウジ、巨大な姿見を作ってどうするんですか。自分の顔を確認したいんでしょうか。ナルシシズムもここまで来ると壮大な建築様式です。

空飛ぶ車が行き交い、人工知能が都市を管理する。まるで「スターウォーズの砂漠惑星タトゥイーン」を大改装したようだ。もしも実現するならね。


市民の本音

巡礼土産屋のアブドゥラは言う。
「イスラムの教えと未来都市は両立するのか?」

大学生ファティマは希望を語る。
「女性の社会進出も進んでいる。
誇らしいこと。新しいサウジを作るのは私たちの世代。」

しかしガソリンスタンドの老人ムハンマドはつぶやく。
「石油で豊かになったが、神はいつまでも与えてくれるだろうか。もしも賭けに失敗したら、ilā al-sahra、また砂漠に戻るだけだ。」


ドバイの悪夢ふたたび?

2008年、ドバイ・ショック。人工島と世界一の塔は実は借金まみれだったのだ。みんなおもった、やっぱりね。サウジのネオムもまた「世界最大の未完成プラモデル」となるリスクがある。

作業員の大半は南アジアからの出稼ぎ労働者で、劣悪な環境は国際問題と化している。眩しい未来都市の下に積み重なるのは、人間の汗と涙なのである。かれらは叫ぶ、ya rabbi、誰がわたしたちのことを気にかけてくれるだろう?


戦場の結末は?

夕日がネオム建設現場に沈む。骨組みは蜃気楼のようでもあり、オアシスのようにも見える。

サウジは今、歴史上最大の賭けに挑んでいる。
石油という「神の恵み」から、人間の知恵で未来を切り拓けるのか。
それとも「脱炭素」という名の戦場で、敗者として砂に埋もれるのか。

確実に言えるのは──この勝負の行方が、中東の未来だけでなく、エネルギーをめぐる世界戦争の勝敗をも決めるということだ。

砂漠の風はまた、新しい戦場の物語を運んでくる。

では、わたしは? 砂漠の空を見上げて囁く。
「Adonai、Allah、どうかわたしを破産させないでください。財布は満タンで、頭は冴え渡り、勇気は――まあ、ゼロより少し多く。

Amen, inshallah.」




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