トマス・フミモテの、World Crazy Wars Report。戦場Ⅹ:ナイジェリア、ポスト植民地の、さらなる地獄
わたしの名前はトマス・フミモテ。ニューヨークのハーフ・ユダヤ、世界でいちばん臆病なジャーナリストです。Yes, I’m scared。very scared。
どこの国の歴史も血まみれですよ。過去にトラウマを持たない国は存在しません。産業革命で欧米列強は植民地獲得競争に乗り出した。あんな非道がまかり通った。わたしは大英帝国がインドでやったことを思い出します。東インド会社? あれただの会社でしょ。それがインドを勝手に支配して、やがてBritish Empire政府が乗り出してきて、洗いざらい奪い取り、搾取の仕組も完成したし、植民地経営もカネがかかるゆえ、インドを独立させて、最後は映画『ガンジー』でかれの生涯を聖人として描き、感動ポルノに変える。悪い奴でしょ、英国人って。
それでもインドはその後、あれこれ問題を抱えつつも、どうにか成長できた。まだ救いがあります。他方、アフリカはどうですか? 独立したはずが、植民地時代よりひどいありさまじゃないですか。今回はナイジェリアを見てみましょう。わたし、ナイジェリアが怖いです。怖くてたまりません。
しかもタイミングが悪いことに、(ジャーナリストのカズ・イシダさんはビル・ゲイツの影がちらつくと推理しておられますが、それはともあれ)、石破総理が移民政策を推進しているなか、2025年8月末、アフリカ開発会議(TICAD)で発表したことには、あらら、JICA(国際協力機構)が「日本とアフリカを双方向に人材交流させよう」として、特別VISAカテゴリーなるものを創設し、日本4都市とアフリカ4か国とのパートナーシップ(ホームタウン政策)を拡大するんですって。そのうちのひとつが――ナイジェリアと木更津ですよ。え? 房総半島の海風が吹くあの気持ちのいい街にナイジェリア人がどかどかやってきて働きはじめる!?? アフリカもハッピー、労働者人口の減っている日本も助かる!?? That's ridiculous. なんですか、お祭りの姉妹都市提携じゃないんですよ、JICAさん、本当にわかってますか、ナイジェリアの現実を。はいはいはい、期限つきで、期限が過ぎればナイジェリアに戻っていただく。たとえそうであるにしても、かなりヤバいです。どこがどう激ヤバなのか――今回のエッセイを読めばぜんぶわかります。
ナイジェリアは人口2億人、GDPは4千億ドル。数字だけなら「アフリカの巨人」。しかし実態は「巨人の赤ん坊」、でかいだけでしょっちゅう転んで泣き叫ぶ。1999年の「民主化」? あれはただのコントです。仕事はない、電気は止まる、街角では警察が市民を殴る。ギャングのボコ・ハラムに誘拐されるか、警察にカネを巻き上げられるか、究極の二択。犯罪は横行。ナイジェリア流恐怖のゲーム・ショウですよ。
原因は3つ。
ひとつめ、英国は紛争の火種を残して植民地を去る。 民族も宗教も違う人々をまとめて「ナイジェリア」にしたお得パック。中身は火薬。独立した瞬間にビアフラ戦争。
ふたつめ、バカは石油を活かせない。 ニジェール・デルタは石油の出る地域。にもかかわらず、中央政府が利益を持ってゆき、地元にカネはまったく落ちない。地元は極貧のまま。OPEC加盟国なのに停電だらけ。石油収入は政治家と軍閥の胃袋に吸い込まれ、国民にはガソリン不足だけ残される。
みっつめ、なんちゃって民主主義。 軍政、腐敗選挙、買収合戦。民主化は看板だけ、国会は漫才劇場。
そしてナイジェリアには「三大カオス産業」が生まれた。
第一、ボコ・ハラム。かれらは北部スンニ派の武装集団で 超狂暴な連中ですよ。(南部はキリスト教の地域です。)かれらボコ・ハラムの主張は「西洋教育は罪」。わたしなんて毎日『ハーヴァード・ビジネス・レビュー』を読んでるから、即アウトです。
第二、ナイジェリア詐欺メール。 「わたしは王子です、財産を分けたい」。王子がこんなメールを市民に書くわけない。でも、これに引っかかる人がいる。わたしがナイジェリア人ならば言いますよ、「王子さま、まず停電を直してください。」
第三、誘拐ビジネス。 人間が商品、保険会社が「誘拐保険」を売る。なにせ、ナイジェリアでは人質市場こそが資本主義の最先端ですからね。いやはや。
西側諸国の知識人たちは、この現実をどう思うでしょう? 欧米ではいま、植民地主義時代を反省して、「あの時代は間違いだった」とか言うでしょ、たとえ口先だけだとしても。けれど、現実はどうでしょう。独立したアフリカ諸国は、その自由を恐怖の悪夢社会に変えてしまった。「社会は少しずつ良くなる」? そんな寝言は、アフリカの地面の上では冗談にしか聞こえません。
それでも街角からはアフロビートが鳴り響く。1970年代フェラ・クティのジャジーなサックスがアフリカン・ビートを刻むトニー・アレンのドラムとともに新しい音楽のフォームを生み出した。かれらはアフロセントリック(アフリカ中心主義)と共闘しアフリカ黒人解放運動を盛り上げました。そして黒いテレキャスターをクールにカッティングしながら歌ったキング・サニー・アデ、かれもまたとっくに伝説の人。しかしアフロビートはますます盛り上がっています。Davido。Rema。Kiss Daniel・・・。地獄の現実から生まれてくる(哀愁に満ちた)陽気な音楽。しかし、未来もまた暗黒。希望はまったく見えません。わたしは祈ります――どうか、踊りながら人間が人間を食い物にしない日が来ますように。
ナイジェリアよ、あなたはアフリカの未来か、それとも世界全体の未来か。

