#16 精神科病床を減らす前に、“受け皿”と“過剰医療”を見てほしい
最近「精神科・療養型のベッドは多いから減らすべき」という議論を耳にします。方向性は理解できます。ただ、10年にわたり認知症の母を介護してきた立場から見ると、現場の実感とは少しずれているように感じます。ここで私の経験と厚労省のデータから見えることを整理してみたいと思います。
1 「ベッドを減らす」議論
維新、猪瀬直樹さんのYouTubeでも「精神科に入院している高齢者をグループホームなど地域に移せばコストが下がる」と話されているのを見ました。
方向性は分かりますが、介護している側から見ると現実とはズレているように感じます。
2 問題は“ベッド数”より“誰が入っているか”
厚労省の調査では精神科入院患者の約6割が65歳以上。
すでに「高齢で複合的な事情を抱えた人」が多いのです。
私自身、認知症の母の易怒性(感情の抑制がきかなくなって怒りっぽくなる、認知症の一つの症状です)がひどくなり、ご近所に迷惑がかかるので、
ケアマネさんと一緒に「一度入院で落ち着かせられないか」と
かかりつけ医に相談したことがありますが、
人権上の配慮などで入院は難しいと言われたことがありました。
そのとき「今、精神科に残っている人たちは、他で受けられなかった最後の層なんだな」と実感しました。
3.社会保険料の負担軽減という方向性は理解できます
社会保険料が高すぎるという問題意識は、私も現役で働く身としてよく分かります。手取りの細さには本当にがっくりさせられることもあります。
ただ、老々介護の事件に触れると、家族の負担はすでに限界に近いと感じます。ここを見ないまま「病床削減」だけを進めてしまうと、数字の上では改善しても、現場の生活は持ちこたえられないのではないでしょうか。
4 グループホームは万能の出口ではない
精神科に入院している高齢者の多くは、認知症によるBPSDや身体疾患を抱え、すでに在宅だけでは受け止めきれない段階にあります。
そのため、グループホームがすべての方を
受け入れられるわけではありません。
職員の配置や建物の設計、想定している入居者像が異なるためです。
※認知症のBPSDとは、認知症に伴って現れる「行動・心理症状」のことです。 記憶障害などの「中核症状」に加えて、環境や心理状態、性格などが影響し、徘徊・暴言・幻覚・抑うつなどの行動や精神面の変化が出ることを指します。
5 ベッドだけ減らすと起きること
病床削減が先行すると、介護の負担が増え、家族が就労を続けることが難しくなるケースが出てきます。その結果、世帯収入が減少し、公的支援を併用せざるを得ない状況が生じることもあります。
さらに、介護者自身の心身の不調が進み、医療や介護サービスを
新たに必要とする事態も少なくありません。
6.「削減」と同じ熱量で受け皿の整備計画を示していただきたい
病床削減を進めるのであれば、それと同じ熱量で「受け皿」の整備計画を
具体的に示していただけると大変心強く感じます。
どのくらいの人を地域で受け入れるのか
どのサービスで支えるのか
いつまでに整備を完了するのか
そのための財源をどう確保するのか
これらの点が明確になれば、介護している家族も「それなら安心して地域移行に協力できます」と思えるはずです。
7 医療側の“ふくらんでいるコスト”も一緒に見てほしい
終末期の延命医療や重複検査など、医療提供の慣習によって膨らんでいる
コストについても、同じ目線で検討していただけるとありがたいです。
そこをそのままにして「精神科の高齢者は地域で」とだけ言われると、
どうしても「弱い立場の人から先に減らしているのではないか」
という印象が残ってしまいます。
8 アンケートのお願い
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