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電子書籍なんて絶対イヤだった

学生の頃、私は紙の本が大好きだった。

友人も同じだった。

私たちは、お金がなかった。

でも、本はたくさん読みたかった。

だから、しょっちゅう本を貸し借りしていた。

普通の小説から、よくわからないマニアックな本まで、紙袋いっぱいに詰めて、自転車で運んで、交換する。

「これ面白かったよ」

「次これ貸して」

「それ読み終わった?」

そんなことを延々と繰り返していた。

ある日、その友人が言った。

「なんか、電子書籍ってものがあるらしいよ」

画面で本を読むんだって、と。

私たちは顔を見合わせた。


「ええー! 絶対イヤだよね!」


「本は紙じゃなきゃ!!」


そう言いながら、本の表紙をなでなでした。


紙の匂いとか、重さとか、ページをめくる感じとか、そういうもの全部込みで「本」だと思っていた。

そしてまた、大量の本を紙袋に入れて、交換会をした。



月日は流れた。


十五年くらい経った頃だったと思う。

私は図書館で本を借りた。

借りる時はタイトルしか見ていなかったのだが、帰り道でふと表紙を見て、私は立ち止まった。

著者名が、あの友人だったのである。

もう長いこと連絡を取っていなかった。

だから余計に驚いた。

しかも、あとがきか何かに、

「電子書籍の可能性を早くから感じていた」

みたいなことが書いてあった。


私は思わず笑ってしまった。

あんなに、

「紙じゃなきゃイヤ!!」

と言っていた人だったのに。


さらに後日、その人の電子書籍版の広告が、私のパソコンに大きく表示された。


ババーン!と。


時代は変わるし、人も変わる。


そして、そんなことを言っている私自身、今ではかなり電子派になってしまった。

私の周りには、本を出す人が多い。

ありがたいことに、サイン入りの献本も増えていった。

でも私は、紙の本を処分して、電子書籍版を買い直すことすらある。

印税は入るだろうから、許してほしい。


ちなみに、自分の著書もKindleで買った。

電子版には、著者割引がなかったにも関わらず。

本棚がいっぱいにならないことの方が大事だった。


あの頃の私たちが見たら、かなり驚くだろう。


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