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目標を達成する人が、絶対にしないこと

「今年こそは…!」
年の初め、ある営業部長が新しい手帳を開きました。

今年の目標として、次の三つを書き込みます。

部門売上を前年比10%伸ばす。
新規顧客を20社獲得する。
秋の資格試験に合格する。

昨年は目の前の仕事に追われ、思うように動けなかった。今年こそは変えたい。そう考えながら、売上計画や勉強の予定も書き加えていきます。

書き終えるころには、今年はうまくいきそうな気がしています。まだ何も始めていませんが、少し前に進んだような感覚さえあります。

ところが、仕事始めを迎えると、手帳を開いていたときとは別の日常が始まります。
朝からメールに対応し、午前中は会議。午後は部下からの相談と顧客対応。予定していなかったトラブルも発生します。

新規営業は時間ができてから。資格の勉強は帰宅してから。そう考えているうちに、一日が終わります。

翌日も似たようなものです。

本人は怠けているわけではありません。目の前の仕事には真面目に取り組んでいます。むしろ責任感があるからこそ、顧客や部下から頼まれたことを優先します。

そうして一週間、一か月と過ぎるうちに、年初の目標は日常から切り離されていきます。
久しぶりに手帳を見返したときには、こう思うかもしれません。

「今年も続かなかった」
「もっとやる気を出さなければならない」

しかし、目標を立てた直後の気分の高まりと、目標に向かって行動を続けることは同じではありません。

新しい手帳に目標を書き、達成後の姿を想像すれば、前向きな気持ちになります。ただし、その高揚感が一年間続くことはありません。

目標達成に必要なのは、気持ちを高く保ち続けることではなく、気分にかかわらず、必要な行動を淡々と続けることです。

成果目標を、今日の行動に変える

そのためには、まず「成果目標」と「行動目標」を分けて考える必要があります。

成果目標と行動目標の違いは、自分でコントロールできるかどうかです。

「部門売上を前年比10%伸ばす」「新規顧客を20社獲得する」「資格試験に合格する」は、いずれも成果目標です。

努力することはできますが、売上や顧客獲得数は相手や市場環境にも左右されます。資格試験も、合格という結果そのものを自分で決めることはできません。
何より、成果目標だけを見ても、今日何をすればよいのかが分かりません。

私はアパレル業界に長く関わってきました。アパレル店舗では、スタッフごとに毎月の売上目標が与えられます。

ところが、「今月は100万円売ってください」と言われても、何をすべきか分からないスタッフは意外に多くいます。

接客には入るものの、誰に対しても同じ説明を繰り返す。売上が伸びなければ、「もっと積極的に接客しよう」「もっと頑張ろう」という曖昧な話になりがちです。

そこで、売上ではなく、「来店したお客様を何回試着室へ案内できたか」を追うようにします。

すると、スタッフが考える内容が変わります。

お客様は何を探しているのか。
普段はどのような服を着ているのか。
どのタイミングで試着を勧めるのか。
何を組み合わせれば、着てみたいと思ってもらえるのか。

売上という結果だけを見ていたときよりも、今日何をすべきかが具体的になります。
実際に着てもらえば、お客様はサイズ感や着心地を確認でき、購入後の姿も想像しやすくなります。試着は、来店から購入へ進む途中にある重要な行動です。

ここで大切なのは、何でもよいから行動目標を設定することではありません。成果が生まれるまでの過程を分解し、その途中にある、自分たちが働きかけられる行動を見つけることです。

どの行動を選ぶべきかは、業種や会社によって異なります。ただ、成果目標だけを掲げるより、自分で実行できる行動まで落とし込んだ方が、現場は動きやすくなります。

行動を日常に組み込む

ただし、行動目標を決めただけでは十分ではありません。

先ほどの営業部長が、「毎週、新規顧客へ5件連絡する」と決めたとします。
売上目標だけを掲げるより具体的ですが、いつ実行するかが決まっていなければ、目の前の仕事に押されて後回しになります。

「時間ができたら連絡する」ではなく、「火曜日と木曜日の午前9時に連絡する」と決める。さらに、「火曜日の朝、パソコンを立ち上げたら、最初に候補先を確認する」と、普段の行動に結びつけます。

心理学では、このように特定の状況と行動をあらかじめ結びつける計画を「実行意図」と呼びます。「いつ、どこで、何をするか」を決めておくことで、目標を実際の行動へ移しやすくなることが示されています(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。

すでに定着している習慣を、行動の合図にする方法もあります。

朝礼が終わったら、営業候補先を一社確認する。
昼食を終えたら、資格試験の問題を解く。
営業会議が終わったら、行動目標の実績を確認する。

同じ状況で同じ行動を繰り返すと、その状況自体が行動の合図となり、次第に少ない意識でも始めやすくなります(Lally et al., 2010)。

新しい行動を思いついたときに行うのではなく、すでにある日常の流れに組み込む。そうすれば、毎回「今日はいつやろうか」と考える必要がなくなります。

一方で、実行する時間を決めても、行動そのものが重ければ始められません。
たとえば、「昼食後に資格試験の勉強をする」と決めても、毎回一時間の学習を求めれば、忙しい日は手をつけにくくなります。

その場合は、最初の行動を小さくします。

問題集を開く。
まず一問解く。
一問を終えた時点で、続けるかどうかを決める。

習慣に結びつけることが「始める合図を決めること」だとすれば、行動を小さくするのは「始める負担を下げること」です。

※面倒くさいことを克服する方法はこちらの記事をどうぞ。

作業を始めると、後から気分が乗ってくることを「作業興奮」と説明する場合があります。

ただし、行動を始めれば、必ず気分が高まるとは限りません。それでも、一問解けば一問分の進捗が残り、一件連絡すれば一件分の反応が得られます。

気分が乗っているかどうかにかかわらず、行動した分だけ目標には近づきます。

観測し、修正しながら続ける

最後に、決めた行動を定期的に確認します。

空き家は、人が出入りしなくなると傷みやすくなります。掃除や換気が行われず、小さな異変にも気づきにくくなるからです。

目標も、見なくなれば少しずつ日常から消えていきます。

毎週5件連絡すると決めても、確認しなければ、今週は3件、翌週は1件となり、やがて実施しなくなるかもしれません。本人も、いつから止まったのか分からなくなります。

進捗を定期的に確認することは、目標達成を促します。特に、進捗を記録したり、他者へ報告したりする場合に、効果が高まりやすいことが示されています(Harkin et al., 2016)。

毎週金曜日に連絡件数を記録する。
月に一度、上司や部下と実績を確認する。
資格試験であれば、解いた問題数や進んだ範囲を残す。

観測する目的は、未達を責めることではありません。
決めた行動ができなければ、実行する時間が悪かったのかもしれません。回数が多すぎた可能性もあります。行動しても成果につながらないのであれば、追いかける行動そのものを見直す必要があります。

観測するから、修正できます。

年初の高揚感は、いずれ薄れます。それを保とうとする必要はありません。

成果目標を、自分で実行できる行動へ変える。
行動する日時や合図を決める。
始めにくければ、最初の一歩を小さくする。
進捗を確認しながら、必要に応じて修正する。

目標を達成する人が、常に意欲に満ちているとは限りません。
試着を一人に勧める。見込み客へ一件連絡する。問題を一問解く。週末に実績を記録する。

一つひとつは地味な行動です。

目標は年初の決意だけで達成されるものではありません。
目標を達成する人が絶対にしないのは、やる気に身を任せることです。必要な行動を日常の中に置き、淡々と続ける。その積み重ねが、目標を少しずつ現実に近づけていきます。


※ちなみに目標に正解はありません。その先のビジョンにも正解はありません。それではどうすればいいのか。この記事を参考にしてみてください。


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