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【ショートショート】 ミトコンドリア・イブ セカンド


2037年。

一人の女児が誕生した。

出生時の遺伝子検査で、彼女のミトコンドリアDNAに前例のない変異が見つかった。

成長するにつれ、その異常は奇跡へと変わった。

病気にほとんどかからない。

驚異的な身体能力。

並外れた知性。

回復力、持久力、感覚、そのすべてが人類の常識を超えていた。

彼女はやがて「ミトコンドリア・イブ セカンド」と呼ばれるようになった。

その能力は母から子へ受け継がれた。

世界は歓喜するどころか、恐怖した。

新人類の誕生。


各国政府は厳格な監視体制を敷き、子孫の行動や生殖を制限した。

一方、セカンドたちは最後まで対話を望んだ。

「私たちは人類の敵ではありません。」

しかし、その言葉は届かなかった。

やがて監視を逃れた者たちは地下へ潜り、各地で密かに共同体を築き始めた。

旧人類とセカンド。

世界は、一触即発の均衡の上に立たされていた。


その頃、別の異変が静かに進行していた。

世界中で出生率が急激に低下し始めたのである。

原因は分からない。

各国の研究機関は総力を挙げたが、解明できなかった。


そして、旧人類とセカンドの最終交渉を目前に控えたある日、一つの極秘文書が流出した。

そこには、政府機関が秘密裏に進めていた研究計画が記されていた。

セカンドだけを標的とし、その生殖能力を失わせるウイルスの開発。

しかし、それは完成していなかった。

選択性は不完全なまま実験段階にあり、事故によって外部へ流出した可能性が極めて高いという。

会議室は騒然となった。


さらに、その直後。

諜報機関の責任者が青ざめた表情で入室し、一枚の報告書を机に置いた。

「確認が取れました。」

誰も口を開かなかった。

「セカンド側は、すでにワクチンの開発に成功しています。」

重苦しい沈黙が部屋を満たした。

窓の外では、報道陣のライトが夜空を白く染めている。

交渉開始まで、あと十分。

その扉の向こうには、旧人類の代表団と、セカンドの代表団が待っていた。


人類の未来は、まだ誰の手にも渡っていなかった。



※ 本作は、『ミトコンドリアとは何者なのだろうか』のコメント欄で、「占いの不思議堂|ひろん」さんからいただいた「ミトコンドリアといえば、映画は、パラサイト・イブを思い出します。」という一言から始まった、ひとつの思考実験です。
一つのコメントが、新しい物語の扉を開いてくれました。🤭🧬


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