#060|世界放浪-ユーラシア横断編-Day25~28🇰🇿|53時間の寝台列車、カザフスタンを東から西へ
前回はこちらから。
アルマトイから、カザフスタン西部のアクタウへ向かう。
この辺りを横断する王道は、ウズベキスタンを経由して少しずつ進んでいくルートのようだ。
しかし昨年ウズベキスタン(と合わせてトルクメニスタンとタジキスタンも少し)はじっくり回ったので、今回は一気にぶっ飛ばしていく。
移動時間は53時間。長い。
中国で乗った39時間の寝台列車がこれまでの自己最長だったが、それをあっさり更新することになった。
真夜中に始まった、53時間の列車旅
日付が変わろうかという23:50過ぎ、列車は定刻通りに出発した。



とりあえず寝る。
列車内で3泊、53時間の大移動が始まった。
楽しみは長時間停車の売店くらい
翌日。
窓の外には、草原と荒野のみ。
ひたすら広い同じような景色が続いていた。


カザフスタンは広い。
それは地図で見れば分かるが、実際に何時間も何時間も同じような大地の中を進み続けると、その広さを肌で感じる。
列車は数時間に一度、長めに停車する。
20分から30分ほど停まる駅もあり、そのたびに乗客たちは外へ出る。
タバコを吸う人。
売店で食べ物を買う人。
ホームを少し歩く人。


自分にとっても、この停車時間がほとんど唯一のイベントだった。
駅の売店には、ナンや惣菜、飲み物が並んでいる。
どこの駅でも似たようなものが売られているのだけど、それでも見に行ってしまう。



ある駅では、ナンとディムラマ(肉じゃがにかなり近い中央アジア料理)を買った。

しっかりと濃い味付けが病みつきになる。
安くて、ボリュームもあって普通に美味しい。
1日目の楽しみはこの程度。
貸切になった部屋と、少しの寂しさ
2回目の夜明け。
起きると、同じ部屋にいた親子がいなくなっていた。
いつの間にか降りていたらしい。
部屋は完全に一人になった。
貸切だ。
これはこれで悪くない。
窓の外を気兼ねなく見られる。
好きなタイミングで窓も開けられる。
荷物にも気を使わなくていい。
外の景色も、気づけば緑とは程遠い乾いた広い台地のみが広がっている。

そんな車窓からの景色も相まって、誰もいない部屋に少し寂しさも感じる。
長距離列車は、ただの移動ではある。
でも、同じ空間で何十時間も過ごす以上、そこには小さな生活のようなものが生まれる。
誰もいない部屋は快適だった。
でも少しだけ空っぽだった。
人が変わると、車内の空気も変わる
昼過ぎ、新しい乗客が乗ってきた。
小さな子どもを連れた母親と、一人で乗ってきた女性。
部屋の空気が一気に変わった。
翻訳アプリを使いながら、少しずつ会話する。
カザフスタンの人は、年齢関係なくほとんどみなロシア語が話せると言っていたのが印象的だった。
キルギスでは、キルギス語だけの人、ロシア語だけの人、両方話す人がいて、人によって違う印象だった。
その違いは面白い。
子どもたちは音楽を流して踊り始める。
隣の家族もこちらの部屋に来る。
元々知り合いなのか、列車の中で仲良くなったのかは分からない。
でも、いつの間にか人が集まっている。
昨日まではどちらかと言うと静かな車内だった。
移動時間をしっかり休憩にあてているような親子だった。
そうやって移動時間を休憩にあてる人もいれば、こうやって列車の時間そのものをエンタメにしてしまう人もいる。
人が変わるだけで、同じ列車の空気がここまで変わるのかと、少し面白い。
上段ベッド最強説
この列車では、上段ベッドだった。
長距離列車では下段が人気らしい。
確かに、座りやすいし、荷物も扱いやすい。
交流もしやすい。
でも自分は上段がかなりいいと思った。
理由はシンプルで、逃げ場があるからだ。
言葉が通じない中で、ずっと同じ空間にいるのはなかなか疲れる。
子どもたちが元気に遊び回っていると、荷物も少し気になる。
その点、上段なら自分のスペースに戻れる。
少し疲れたら、上に逃げられる。
中国でもカザフスタンでも、たまたま上段しか空いていなかった。
でも結果的にそれでよかったように思う。
今後も選べるなら上段を選ぼう。
子どもたちと大交流
とはいえ、ずっと逃げていたわけではない。
子どもたちにはとびきり懐かれた。
全く言葉は通じない。
そんな中でも子どもたちは真っすぐ素直に向かってくる。


通路で追いかけっこに近いこともさせられたし、一度高い高いのようなことをしたら大行列になった。
遊んで遊んでと本当に大盛況。


言葉なんて実はいらないんじゃないかと思う瞬間でもあった。
もちろんそんなことはない。
言葉があればもっと分かり合えるのは言うまでもないのだが。
でも子どもたちの素直さは時々その壁を軽く飛び越えてくる。
ひたすら遊んでいたら、すっかり日が傾いていた。
長すぎるはずの列車移動が、少しずつ楽しい時間に変わっていた。
朝焼けのマンギスタウ駅へ
3回目の夜明け、朝5時。
「もうすぐ着くぞ」と言わんばかりに、乗務員が各部屋を回っている。
その声で目が覚めた。
外はまだ暗い。
荷物をまとめ、窓の外を見る。
何もない乾いた土地が、少しずつ明るくなっていく。
地平線のあたりがオレンジ色に染まっていく。

長い移動の終わりに見る朝焼けは、少し特別に見える。
雲はそれなりに多かったが、それはそれで綺麗だった。
朝5時50分、列車は定刻通りマンギスタウ駅に到着した。

53時間。
3泊の列車移動。
でも、中国での39時間の列車ほどの長さと退屈さは不思議と感じなかった。
駅の売店をのぞき、窓の外を眺め、子どもたちと遊び、時々自分のスペースに逃げる。
それだけで、53時間は意外とあっという間に過ぎていった。
カザフスタンは広かった。
でも、その広さの中にもちゃんと人の時間があった。
次は、カスピ海沿いの街アクタウを散策する。
続きはこちらから。
