【読書記録 -120】ORIGINALS
以前、このシリーズで、アダム・グラントの著書『GIVE & TAKE』と『THINK AGAIN』を紹介した。
本作『ORIGINALS』も同氏の著作だ。
本当は『THINK AGAIN』よりこっちを先に読むべきだったが、順番が逆になってしまった。

なぜそんなことを気にしているかというと、この3冊を遡っていくと著者の思考の軌跡が見えてくるからだ。ボクには、これら3つの著作は独立したビジネス書ではなく「人が変化に適応するための一連のプロセス」として書かれているように見えている。
さて、本書のタイトルでもある「本当に独創的な人(ORIGINALS)」とは、リスクを恐れない無謀なギャンブラーのことではない。彼らは圧倒的な行動量と賢い伝え方によって、リスクを最小限に抑えながら慎重に変革を起こす人々だ。
ボクたちは普段、偉大なイノベーターを「破天荒でリスクを恐れない特別な天才」だと思い込みがちだ。しかし、その思い込みこそが、ボクたちの挑戦を阻む「現状維持バイアス(変化を嫌い現状を肯定する心理傾向)」の原因になっている。歴史に名を残すような「オリジナル」な人々は、本当はは人一倍恐怖を感じ、人一倍失敗を恐れ、リスクを分散させていたのだ。
そう、彼らは無謀だから成功したわけではない。
リスクを慎重にヘッジする術を知っていたからこそ、成功するまで打席に立ち続けることができたのだ。
「圧倒的な量」によるリスクヘッジ
レオナルド・ダ・ヴィンチ:数千ページのスケッチを遺しているが、発表された絵画は20点に満たない。
トーマス・エジソン:1,093個もの特許を取得しているが、その大半は世に出ていない。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:350を超える楽曲を作ったが、その大半は凡作だった。
「本業の確保」によるリスクヘッジ
ワービー・パーカーの創業者たち:起業後も、万が一に備えて就職活動を続けた。(ワービー・パーカー:2010年にニューヨークで誕生したECアイウェアブランド)
スティーブ・ウォズニアック:Appleのコンピュータを設計中も、本業のHP社を辞めなかった。
ジョン・レジェンド:デビュー作がヒットするまで、昼間は経営コンサルタントとしてフルタイムで働いた。
「欠点の開示」によるリスクヘッジ
ルーファス・グリスコム:投資家に「自分の会社(Babble.com)に投資すべきではない5つの理由」を自ら開示して資金を集めた。(Babble.com:ルーファス・グリスコムとアリサ・ヴォルクマン夫妻が2006年にアメリカで立ち上げた、子育て世代向けのウェブサイト・メディア企業)
ボクなりに考える、グラントの思考の繋がりはこうだ。
①孤立を防ぎ味方を増やす
GIVE & TAKE:周囲に価値を提供し、信頼のネットワークを築く。他者との関わり方を定義することによって「人間関係の土台」を強固にする。
②リスクを最小限に抑えながら行動を起こす
ORIGINALS:周囲からの支援を基に、圧倒的な量と賢い伝え方でリスクを抑えつつ「社会への挑戦」を行う。
③他者からのフィードバックを受けて軌道修正する
THINK AGAIN:新しい挑戦を始めると、人はどうしても自分の正しさに固執し、独善的になる。本当にこの方法が最適なのかを常に疑い「自己修正の技術」を身に着ける。
ー信頼を蓄積し、それを元手にリスクを抑えて賢く仕掛け、独走しそうになる自分を客観的にチューニングするー
その3つのフェーズによって人生を成功に導こうというのが、グラントが伝えたいことなのではないだろうか。それは、変化の激しい時代を生き抜くための「持続可能な行動サイクル」だ。
ボクたちは、自分のアイデンティティを「古い信念」ではなく、誠実さや好奇心といった「価値観」に置くべきだ。なぜなら「信念」は外的な情報によって揺らぐが、「価値観」は内から沸き立つものだからだ。
ボクたちが考えを改め、古い常識を捨て去ることは、決して敗北ではない。それは新しい『オリジナル』な自分へと進む成長の証なのだ。
参考リンク
・Amazon『ORIGINALS』書籍紹介ページ
・アダム・グラント 公式サイト
ウォートン校 著者プロフィール:
https://management.wharton.upenn.edu/profile/grantad/
