見出し画像

マイル・ポイント対象外となるクレジットカード利用の全貌 Part 2:税金・公共料金・独自項目編


第3章 税金・公共料金の攻防:高額決済におけるルール変更の波

かつて陸マイラーにとって、固定資産税や自動車税、毎月の公共料金といった高額かつ定期的な支払いは、大量のマイル・ポイントを安定的に獲得するための「聖域」でした。しかし、この領域でもカード発行会社の戦略転換が進んでいます。

この変化の背景には、収益性の問題があります。カード会社が国や地方自治体、公共料金事業者から受け取る加盟店手数料は、一般的な小売店に比べて低く抑えられていることが多いです。例えば、カード会社の手数料収入が決済額の0.8%であるにもかかわらず、会員に1.0%のポイントを還元すれば、その取引は赤字となります 。この構造的な問題を解決するため、特にプレミアムカード発行会社を中心に、新たなルールが導入されつつあります。  

還元率引き下げクラブ:アメックスやダイナース、セゾンカード

この問題に対する発行会社の解決策が、「特定加盟店における還元率の引き下げ」です。この動きを先導しているのが、アメリカン・エキスプレスダイナースクラブカードです。両社は、税金や公共料金の支払いに対し、通常の「100円=1ポイント」ではなく、「200円=1ポイント」という半減したレートを適用しています 。  

このルールが適用される範囲は広く、国税、地方税、電気・ガス・水道料金、さらにはNHK受信料や国民年金保険料まで含まれます 。セゾンカードも2024年から同様の動きを見せており、税金や一部の公共料金を還元率が異なるカテゴリに指定しました 。具体的には、永久不滅ポイントの場合は2,000円ごとに1ポイント、SAISON MILE CLUB登録時は2,000円ごとに10マイルの付与となります。これは、リワードコストと取引収益のバランスを取るための構造的な再編であり、陸マイラーは「税金・公共料金」を、一般のショッピングとは異なる独自の決済カテゴリとして捉え、専用の最適カードを割り当てる戦略が求められます。  

特定項目の完全除外

還元率の引き下げよりもさらに厳しい措置が、特定の支払いを完全にポイント付与の対象外とすることです。代表的な例が「国民年金保険料」で、三井住友カードdカードはこれをVポイントおよびdポイントの付与対象外と明確に定めています 。このような完全除外項目については、代替となる支払い手段を確保しておく必要があります。

一方、三井住友カード(一部対象外あり)やdカードは、電気・ガス・水道料金をポイント付与の対象としていますが、還元率に差があります。三井住友カードの場合は、200円(税込)ごとにVポイントが1ポイント(0.5%)付与されるのに対し、dカードは1%の還元率を維持してきました。しかし、2026年2月からはdカードも0.5%還元へと改定されました。

また、ANAカードは税金の支払いは積算対象ですが、公共料金についてはENEOS電気・ENEOS都市ガス・北海道電力の3社のみ、クレジット決済200円(税込)ごとに1マイルが付与されます。

JALカード・ JCBカードでの税金・公共料金支払い:すべて積算対象

JALカードでは、公共料金(電気・ガス)や税金(自動車税、固定資産税、国民年金保険料など)の支払いに対しても、ショッピングマイルが積算されます。マイル付与の基本ルールは、利用金額100円につき1マイル(ショッピングマイル・プレミアム未加入の場合は200円につき1マイル)となっており、日常的な固定支出でも効率よくマイルを貯めることが可能です。

他社カードでは還元率が低下したり、ポイント付与対象外となるケースも少なくない中、JALカードは税金や公共料金でも安定的にマイルを獲得できる点が大きな魅力です。実際、私自身もこれらの支払いをすべてJALカードで行っています。

また、JCBカードも公共料金の支払いで還元率が下がることはなく、通常と同様に1,000円=1 Oki Dokiポイントが付与されます。1 Oki Dokiポイントは5円相当の価値があるため、還元率は0.5%となります。

陸マイラーの対抗策:「納税ルート」の概要

クレジットカード会社による税金支払いへのポイント付与制限が年々厳しくなる中、上級陸マイラーの間では、これを回避するための高度な「納税ルート」が考案されています。基本的な発想は、直接支払うと低還元または対象外となる「税金の支払い」を、間接的かつ高還元な「電子マネーへのチャージ」に置き換えるというものです。

代表的な例として、JCBブランドのカードでFamiPayにチャージし(ここでカードのポイントを獲得)、その後ファミペイ翌月払いで税金の請求書を支払う方法があります。この場合、1.0%の還元率に加え、請求書1件ごとに10円相当のファミマポイントも付与されます。

こうした仕組みを利用することで、直接カード払いでは得られない、または還元率が下がる税金支払いでもポイントを獲得できるのです。
ただし、これらのルートは非公式で複雑であり、カード会社や決済サービスの規約変更により突然封じられるリスクが常に存在します。まさに、ハイリスク・ハイリターンな上級者向け戦略と言えるでしょう。

第4章 カードブランド別 詳細分析:独自の除外項目とプログラムの特性

これまでのテーマ別分析に加え、各カードブランドが独自に定める特有の積算対象外ルールが存在します。ここでは、それぞれのカードの特性を深く理解するため、個別の詳細な分析を行います。

JALカード

フライトマイルマイル積算は、航空券の予約クラス(運賃種別)に厳密に紐づいています。対象外の予約クラスで予約された航空券は、たとえ有償であってもマイルは積算されません 。また、特典航空券や幼児運賃、他社運航のコードシェア便(一部例外あり)も対象外となります。空港での当日アップグレードを行った場合でも、マイルはアップグレード前の元の予約クラスに基づいて計算されます 。

ショッピングマイル:前述の広範な電子マネーチャージ除外に加え 、JALの新しいステータスプログラム「Life Status ポイント」においては、各種キャンペーンで付与されるボーナスマイルは積算対象外となるケースが多い です。また、総務省による制度改正に伴い、「JALふるさと納税」は2025年9月30日をもってマイル積算対象外となる予定です。

ANAカード

フライトマイル:JALと同様、予約クラス(O、I、R、Xクラスは対象外)や運航会社がマイル積算の可否を決定します 。提携航空会社が運航するコードシェア便は、ANA便名で予約・搭乗した場合でも、運航会社のルールが適用され、積算率が異なる、あるいは積算されない場合があります 。  

ショッピングマイル:ルールがカード券種ごとに細分化されているのが最大の特徴。ANA JCB一般カードはEdyチャージでマイルが貯まらないが、ゴールドやプレミアムでは貯まります 。ANA Payへのチャージも、法人用カードや海外発行カードは対象外となります 。また、総務省による制度改正に伴い、「ANAのふるさと納税」も2025年9月30日をもってマイル積算対象外となる予定です。  

アメリカン・エキスプレス

ポイント:公共料金・税金の還元率半減や電子マネーチャージの対象外化に加え、NHK受信料や特定の寄付団体(日本赤十字社など)への支払いもポイント加算対象外と明記しています 。  

提携プログラム:デルタ航空やマリオット・ボンヴォイといった提携カードは、アメックスが独自に実施するキャンペーンやポイントプログラムの対象から除外されることが多いです。  

JCBカード

Oki Dokiポイント:前述の通り、電子マネーチャージに対する除外リストは業界でも屈指の広範さを誇ります

提携サイトの罠:ポイントアップモール「Oki Dokiランド」の利用には注意が必要です。例えば、モールを経由して提携ショップサイトにアクセスした後、そこからさらに別のサイトに移動して商品を購入した場合や、モール経由前に既にカートに入れていた商品は、ボーナスポイントの対象外となる可能性があります 。  

三井住友カード

Vポイント:そのルールの複雑さと具体性で知られます。国民年金保険料やPiTaPaの利用はポイント付与の対象外です 。また、Amazon Mastercardのように独自のポイントプログラムを持つ提携カードでは、Vポイントは貯まりません。  

タッチ決済の罠コンビニなどでの高還元キャンペーンを狙う際には、決済方法が決定的に重要となります。スマートフォンのタッチ決済(例:Visaのタッチ決済)が条件である場合、同じカードであっても物理カードを端末に挿入したり、スワイプしたり、あるいはiDで支払ったりすると、ボーナスポイントの対象外となります 。  

ビューカード

JRE POINT:ポイントシステムの全てが「VIEWプラス」を中心に構築されています。最大の除外対象は、この優遇エコシステムの外側で行われる取引です。例えば、えきねっとでオンライン予約・決済した場合(最大3%)に比べ、同じきっぷをみどりの窓口でビューカードを使って購入した場合は、還元率が大幅に低い0.5%となります 。  

特定除外項目:モバイルSuicaの通学定期券を、親権者などが代理で決済した場合、その決済を行ったカード会員本人にはポイントが付与されません 。 

TOKYU CARD

TOKYU POINT:ポイント付与の可否が、個別の加盟店に大きく依存するのが特徴です。東急プラザ蒲田の中にあるセブン-イレブンやダイソーのように、東急関連施設内のテナントであってもポイント加盟店対象外となる場合があります 。  

商品別の除外:東急ストアのポイント5倍デーのようなキャンペーンでは、商品券、たばこ、ビール類などの商品は対象外となることが多いです 。また、金券類やプリペイドカードへのチャージもキャンペーンの対象外とされています。

dカード

最大の矛盾:dカードの最も有名な除外項目は、ドコモ自身の携帯電話料金やドコモ光の利用料金の支払いが、カードの基本ポイント(100円につき1ポイント)の対象外であることです 。これらの支払いに対するポイントは、カード決済の特典としてではなく、dポイントクラブの会員優待という別のプログラムを通じて付与されます。  

d払い:d払いの支払い方法をdカードに設定した場合のポイント付与ルールも複雑化しています。カード決済ポイントは付与されず、代わりにd払い独自の特典としてポイントが進呈される形に移行しています 。  

セゾンカード

永久不滅ポイント:前述の通り、近年、税金や公共料金に対するポイント還元率を変更する動きを見せています 。  

エコシステムの分断:セゾンカードが提供するポイントプログラムが一つに統一されておらず、カードの種類や登録しているサービスによって、貯まるポイントの種類やルールが異なり、それらのポイントを合算したり自由に交換したりすることができません。例えば、ある人が「永久不滅ポイントが貯まるカード」と、「SAISON MILE CLUBに登録したカード」の2枚を持っていても、それぞれの利用で貯まる「永久不滅ポイント」と「JALマイル」を合算することはできません 。  同様に、「永久不滅ポイント対象外の提携カード」で貯めたポイントを、別のセゾンカードで貯めた「永久不滅ポイント」と合算することもできません 。

ダイナースクラブカード

ポイント:プレミアムカードとして、還元率が半減(200円=1ポイント)するカテゴリのリストは極めて広範です。公共料金、税金、保険料、さらには病院での支払いまで、生活に密着した多くの高額決済が含まれます 。  

加盟店別の除外:ポイントアップのボーナスプログラムにおいても、ショッピングセンター内の店舗やガソリンスタンド併設店舗などが対象外となる場合があります 。また、提携オンラインモールでも、Yahoo!ショッピング内の一部の取引(例:ヤフオク!)は対象外となるなど、細かい規定が存在します。  

結論:マイル獲得を最大化するための決済アーキテクチャ設計

本記事で明らかになったのは、クレジットカードのポイント・マイル積算ルールが、発行会社の収益戦略と密接に結びついた「意図的に設計されたシステム」であるという事実です。普遍的な対象外項目、電子マネーチャージを巡る攻防、そして税金・公共料金の価値再定義――これら3つの主要な戦場を理解することは、もはや上級陸マイラーにとって必須の知識と言えるでしょう。

これらの制約は、単なる障害ではありません。それはむしろ、より洗練された戦略を構築するための設計図です。ここからは、本記事の知見を実践に移すための具体的な行動指針を提案します。

1. 「ポイントレス決済」の監査を実施する

まずは、自分の現状を正確に把握することから始めましょう。過去3カ月分のクレジットカード利用明細を確認し、本記事で取り上げた「積算対象外」または「還元率が低下する」カテゴリに該当する支払いをすべて洗い出します。これにより、問題が具体化し、どこに改善の余地があるかが明確になります。

2. 複数カードによる「ウォレット・アーキテクチャ」を設計する

「1枚のメインカードですべてを賄う」という発想を捨て、支出カテゴリごとに最適なカードを割り当てる「ポートフォリオ戦略」を導入しましょう。これこそが、真に最適化されたマイル獲得戦略の核心です。

ANAマイルやJALマイルをゴールとした最適なカード構成については、こちらのシリーズ記事をご参照ください。
私自身の現在のカード構成については、こちらの記事で詳しく紹介しています。よろしければぜひご覧ください。

戦略モデル例

  • 交通(Suica利用): ビューカードを割り当て、VIEWプラスの恩恵を最大化。

  • 一般ショッピング: JALカード(ショッピングマイル・プレミアム入会)やANAカード(10マイルコース)など、1%以上のマイル還元率を誇るカードがおすすめです。決済額によっては、たとえばソラチカゴールドカードなども有力な選択肢となります。なお、マイル獲得を前提としない場合は、楽天カードやその他の高還元カードを主軸に据えると良いでしょう。

  • ネットショッピング:ポイントモールを経由した利用が王道です。楽天リーベイツ、JALマイレージパーク、ANAマイレージモールなどのポイントサイトを経由してネットショッピングを行うことで、ポイントやマイルの「多重取り」が可能になります。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

  • 航空券購入:基本的に、航空会社が発行するカードの方が2%以上の還元率(JALショッピングマイル・プレミアム入会、ANA10マイルコース)となるため、航空券の購入はそれらのカードを優先的に利用した方が有利です。

  • 税金・公共料金: アメックスやダイナースは避け、JALのような高還元カードを直接利用、またはFamiPayルートなどで活用可能なJCBブランドの「納税専用カード」を準備。

  • 旅行・ダイニング: アメックスやダイナースを利用し、ポイント還元率ではなく、特典・保険・サービス価値を重視。

3. 常に警戒し、学び続ける姿勢を持つ

この「ゲーム」のルールは静的ではありません。発行会社は常に規約の変更(いわゆる「改悪」)を発表し、一方で利用者コミュニティは新たな迂回ルートや最適解を発見し続けます。最新情報を常に収集し、自身の戦略を柔軟に見直し続けること。それ自体が、陸マイラーという専門家としての規律です。

最終的に、この知識は我々を縛る制約ではなく、むしろ解放する力となります。システムのルールを深く理解することで、我々はそのシステムを超越し、誰よりも速く、効率的に、自らの旅の目標を達成するマイル獲得マシンを構築することができるのです。

最後までご覧いただきありがとうございます!もしこの記事が役に立ったと思われたら、ぜひ「いいね」「フォロー」で教えてください。とても励みになります。

いいなと思ったら応援しよう!