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「朝ごはん」では不十分;定義と妥当性の大切さ(やさしい疫学解説10)

読んでいると自然に「疫学」に詳しくなり、その重要性や活用法が理解できるようになる「やさしい疫学解説」シリーズをお届けしています。全記事はこちらのマガジンで確認できます。

どんな疫学研究の研究デザインでも重要になるのが、集団と測定方法です。前回のnoteでは、そのうちの、疫学の「測定」での注意点を考える際に知っておきたい、疫学データの特徴を紹介しました。

疫学データは異なる人を測定するがゆえの値の違い(個人間変動)と、同じ人でも状況によって値が異なる(個人内変動)があるのでした。

そのようなデータを実際に測定するときにどのようなことに注意する必要があるのか、今回のnoteで確認していきたいと思います(文献1)。



●「定義する」に尽きる

どのような研究デザインの疫学研究を実施するときでも、その結果を数値で表したい場合には、測定が必要になります。そして疫学は科学の分野のひとつですから、科学的に示すこと、つまり「誰でもどこでも同じ状況を想像できるように書いている」ことが大切です。科学とはそのようなものだ、ということは、以下のnoteで説明しています。

そして、「集団」を説明するときにも、科学的に示すことの大切さを説明しました。

結局、それは「定義を明確にする」ことになるわけですね。集団だけでなく、測定方法も同じく、「定義する」が大事なんです。

●意外と難しい!?朝ごはんの定義

それでは実際に「測定方法を定義する」って、どういうことをすればよいのでしょうか?ここで、以前の「集団特性」を定義しておくのが大事、というnote記事で紹介した、「最近の若い人は朝ごはんを食べていない」という一文を例に考えてみますね。以前は「最近の若い人」という、集団を示す語を、誰もが同じ状況の人を想像できるように、年齢は?性別は?居住地は?といった内容がわかるように説明しておく必要がある、とお伝えしました。

この文の中で「朝ごはん」と「食べていない」が、測定方法に関わる、定義すべき語になります。まず「朝ごはん」って、何でしょうか。朝食べるごはん、とイメージできますが、それでは、朝起きて、果物ジュースだけで済ませた場合は「朝ごはん」でしょうか。それとも飲み物だけの摂取は、朝の「食事」としてはカウントしないほうがよいのでしょうか。

また、起きるのが遅くて、午前10時半くらいに食べたごはんは「朝ごはん」でしょうか?それとも「昼ごはん」でしょうか。

このように、「朝ごはん」というものがどのようなものなのか、定義しておかないと迷う場面がたくさん出てきそうということがわかるかなと思います。食べた内容、そこに含まれるエネルギー量、食べた時刻、などの項目に関して、定義するとよいのかもしれません。

●「食べていない」をどうはかる?

さて、「朝ごはん」がどういうものかを決めたら、それをどういう状態にしたときに「食べていない」とすればよいのでしょうか。そして、どのように対象者の人にたずねればよさそうでしょうか。

毎日食べている人は、どんな尋ね方をしても「食べていない日はない」と迷わずに答えてくれそうです。難しいのは、たまに食べる日がある人です。週に何回くらい食べていない人が「食べていない」人になるでしょうか。1回でも食べない日があれば「食べていない」人でしょうか。それとも、週に半分以上の4回以上食べていない日がある人が「食べていない」人でしょうか。

そしてそれをどのように尋ねたら、質問に回答する対象者は答えやすいでしょうか。もし、「週に4回以上食べない日がある」状態が「食べていない」人とする、と定義づけるのであれば、「今朝は朝ごはんを食べましたか」という質問の仕方では不十分なことはわかると思います。けれども「この1週間で4回以上朝ごはんを食べましたか」という質問にするとどうでしょうか。この1週間は4回だったけれども、その前の1週間は毎日食べた人の場合、この人は「朝ごはんを食べていない」人になってしまいます。それでよいのでしょうか…。

こんなふうに、単に「朝ごはんを食べていない人の人数を調べる」ということをしたいだけでも、質問文の作り方によって、回答数はかなり変わってきそうですね。同じ質問文を使ってたずねた結果は、他の研究で使っても比較することができますが、異なる質問文で調べた結果を単純に比較することができなくなります。この点もとても大事です。

●質問票に求められる妥当性

そして、そんなふうに疫学研究で使う質問文(質問票)の文言を、ああでもない、こうでもない、と迷いながら決め、測定の定義を明確にできたところで、求められるのが、質問票の「妥当性」です。たとえば、先ほどの「この1週間で4回以上朝ごはんを食べましたか」という質問で回答してもらった「はい」の回答は、実際に朝ごはんの摂取回数が4~7回の人で「はい」という回答になっているか、あらかじめ調べておく丁寧さが求められるのです。

以前のnote記事で、習慣的な食事摂取量を調べるために開発した質問票には「妥当性研究」というものが必要で、それなしに「作りました、使います」と言ってはダメなんですよ、と説明しました。

この考え方は、食事摂取量の測定だけでなく、疫学での測定すべてに求められる考え方です。その質問票が測定したいものをきちんと測定できているか、確認できている場合にようやく、丁寧な研究を行っている、と認めてもらえます。

●まとめ

集団でも大切だった「定義を明確にする」という作業は、測定のときにもやはり大切です。疫学での測定は、どのように測定するとよいのか、定義が決まっておらず、その都度その研究を始めるときに定義づけすることが必要な項目がたくさんあります。そして、測定方法を明確に定義した場合も、その方法で妥当なのか、確認することも求められます。

こういうことが認識できるようになると、日常生活の中でやりとりする会話には、かなりあいまいで、定義がしっかりしていなくて、それぞれの人が勝手に解釈できる、思い込みも生じやすい情報になっていることが多々あるな、と気づかされますよね。科学で議論するときには、まずは定義。水掛け論にならないように、肝に銘じたいところです。

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【参考文献】
1. 佐々木敏. わかりやすいEBNと栄養疫学. 同文書院. 2005.


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