志望理由書や自己推薦書で、自分の強み(長所)をいかにしてアピールするべきか?【志望理由書対策】
更新日:2025/04/02
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、作文・小論文・志望理由書作成における実践的な技法をレクチャーするのが、このシリーズ【文章作成の実践】。
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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
志望理由書や自己推薦書で自己PR(自分の強み)をどのように言語化するべきか
ある大学受験予備校の統計調査によると、志望理由書や自己推薦書(※名称は各大学・各選抜により異なる)などで自己PRを書く際に受験生が最も困ったことは、「自分の強みを言語化すること」のようです(28.1%)。この結果を見て私は少し意外に感じました。志望先大学の魅力などではなく、自分自身のことを言葉にすることに最も苦労するのかと少し驚きました。しかし考えてみれば、日常生活においても、人間、自分のよさのことこそなかなかわからないものです。そう考えると、割とうなづける結果かもしれません。
(ある予備校の統計調査)
そこで今回は、「自分の強みをどのようにアピールするか(言語化するか)」に焦点を当てて、記事をまとめることにしました。
「それはあなたの強み(長所)にならない!」、受験生のあなたにとって大変残念なお知らせ
ということで、「自分の長所や強みをいかに言語化するか」というお話をしていくわけですが、のっけから「大変残念なお知らせ」をしておかなければなりません。しかし、これはとても大事なお話しですから、しっかり聞いてください。
単刀直入に言いましょう。「あなたのその「自分の強み」と思っていること、その大概は志望先の採点官や評価官から見れば『全くあなたの強みとして評価されていません』」。ショックですよね。自分が、高校生活の中で、今まで頑張ってきたこと、その大抵は相手(志望先)から大して評価されていません。がっかりするかもしれません。でも、これは、志望理由書や自己推薦書で自己PRする上で、前提とすべきとても大事な考え方です。あなたの「その自慢の強み」、それは大して評価されていないと思ってよいです。
たとえば、あなたが生徒会長として、自身の高校の制度改革に大きく貢献したとします。そしてその実績を志望先大学に是非アピールしたいと考えたとします。その意気やよし。しかし、考えてみてください。「そうした生徒会長、あなた以外に全国にどのくらいいると思いますか?」、10人?50人?100人?いやいやそれよりもはるかに多いでしょう。
高校受験が「地区予選」なら、大学受験は「全国大会」です。高校はその近隣の地区の生徒が受けに来ます。しかし、たとえば大阪の大学だからといって大阪地区の高校生だけが受けに来るわけではないですよね?他の近畿圏はおろか、遠く九州圏や関東・東北圏からも受けに来ます。そんな「全国の猛者」の中に「優秀な生徒会長」は一体何人いるんでしょうかね?
ことは野球部のキャプテンだって同じです。全国に一体どれだけの野球部のキャプテンがいてその抜きんでたリーダーシップや指導力をアピールするのでしょう?自分の高校がSSH(スーパーサイエンスハイスクール:文部科学省が特定の高校に指定する、先進的な科学技術、理科・数学教育を通じて、生徒の科学的な探究能力等を培うことで、将来社会を牽引する科学技術人材を育成するための取組の呼称)に認定されていてそこでの活動をアピールしたい?それもいいでしょう。でも、それ全国で225校あるんですよ(2025年現在)!その活動は、全国であなただけが取り組んだオリジナルな取り組みでも何でもありません。ある探究学習のコンテストで優秀賞をもらった、それはとても立派です。でも、それ、国や自治体、企業がやっていることを数えると全国で40近くあります!他にも他の大会での受賞者は多くいるでしょう。
何が言いたいかわかってもらえましたか?つまり、「どんな実績を挙げたか」、「どんな成果を挙げたか」、「どんな賞をもらったか」という事実そのものが、他の受験生との差別化をはかる「自分の強み」として機能するのではないのです。「こういう賞とりましたよ!すごいでしょう!みなさん!」ではないのです。そうした賞をとった人たちがわんさか大学受験に来ているのです。いわんや校内コンテストの結果をやです。高校内のポスターコンクールで入賞?きつい言い方ですが、「全国大会」では鼻にもかけられません。相手の反応は「へーそれは頑張ったね」で一蹴されるでしょう。
さらにきついことを言えば、「社会経験や実績もなく学習量も十分でない一学生」が「大人」にアピールできること、それは「熱意」以外あり得ません。部活動のキャプテン経験で培ったリーダーシップ、それが実社会の仕事の実践の場でフルに発揮できるとお思いですか?高校生時代に学業と両立してアイドル活動も頑張りました、それはすごいことです、でもその経験だけで今後芸能界で生きて俳優なり歌手なりで表現者として大成する確証はそこにありますか?過疎化する地域の活性化のために尽力したボランティア活動、立派な活動です、しかしたったそれだけの高校生時代の経験だけで将来「地域創生プロジェクト」を立ち上げてそれを成功に導けると考えていますか?
それは残念ながら、大人から見たら「実績や成果」ではありません。その事実そのものは、ただの「きっかけ」に過ぎないのです。だから、その事実の提示だけをもってそれを「自分の強み」としてアピールするのは、「大人」からすれば少し違和感を覚えるのです。では、何があなた方の強みなのでしょう?大人があっと思う、あなたたちの強み、それは「根拠のない自信と共に未知のものにチャレンジする熱意」です。これは「(かつては持っていたが)今の大人」には持ちえない、みなさんの世代しか持てない「武器」なのです。社会にも出ていない、人間的にも未熟、実践経験もほぼない、だから「根拠(エビデンス)がなくて上等」。でもだからこそ、「打算なく全身全霊でそれに取り組める」、そんな「熱意」に「大人」はぐっと胸をつかまれるのです。
あなたの強み、それは、その「根拠のない自信と熱意」なんだ。
ここまでの話を聞いて「じゃあ、どうしたらいいの?」と途方に暮れている生徒も多いかもしれません。「だったら、何をPRしたって無駄じゃないか」と。でも、勝機はあります。その実例をここで一つ挙げてみましょう。
とある予備校と教育情報機関が主催する、よくある「医学部受験説明会」に、予備校講師の相談員として、私は以前参加したことがあります。大きな会場を借りて、そこに各大学医学部が個別ブースを作って、各々講師や教務課のスタッフが常駐しているわけです。そこに興味をもった中高生や受験生が相談にやって来るというスタイル。入場・退場自由で参加者には特典つき。いわゆる「就職説明会スタイル」ですね。一日で、しかもその一か所の中で多くの医学部の説明が聞けるとあってその日も盛況でした。その中には、予備校のブースもあるんですよね。まあ、これいわば予備校の宣伝のためのブースなんです(笑)が、その相談員として予備校講師の私は予備校から派遣された来たのです。私は文系担当。もう一人の化学科講師は理系担当といったところでしょうか。そこで、苦手科目の勉強の仕方や勉強スケジュールの立て方のアドバイスをする、そんな「仕事」です。
さて、そこへ1人の男子高校生が来ました。「相談、いいすか?」、「はい、どうぞおかけください」、うながすと彼は開口一番こう言いました「小説家になりたいんですが、どこの医学部がいいんでしょうか?」。二人とも、一瞬目が点になりました。片方の講師が「文学部がいいんじゃないかな」とぼそっと、でも私はそれをさえぎって彼に聞きました、「なんでそう考えたの?」。すると彼は雄弁に話を始めました。元々小説が大好きなこと。好きな作品の著者を調べたら医学部出身者が多いこと(※実際、森鴎外を筆頭に、なだいなだや北杜夫、香山リカ、南木佳士、渡辺淳一など、文筆家に医学部出身者は非常に多い)。小説家に自分もなりたいと思い、それには医学部に入るのが近道だと思ったこと。「医学部に入ったらいい小説が書ける秘訣がわかりそうな気がするんですよね」、と彼は口角泡を飛ばして興奮気味に語りました。彼の語りからは医学部に行って小説家になりたい気持ちがビンビンに伝わってきました。「しかしね、医学部というのは医師になるための養成機関であってね……」ともう片方の講師が眼鏡をクイッとしながら言ったのをさえぎって、「君、おもしろいね、ちょっと向こうの○○大学の説明ブース行ったら?何か教えてくれるかもよ」とその子をその○○大学の説明ブースに私は案内しました。もしかしたら、これがこの子の「強み」かもしれないと、私は予感がしたからです。
その〇〇大学の教務課スタッフとは、私は当時懇意でした。会うと「おもしろい受験生いたら先生紹介してきてよ~」とよく言っていたユニークな人でした。「あ、△△さん、ちょっとこの子の相談に乗ってあげてよ?小説家になりたいんだって!」、「え、小説家?なんでまた?」、「まあ、いいからいいから。」、「先生の教え子?」「違う、さっき相談ブースに来た子だよ。」、「まいいや、どうぞ座って」。すると、彼はまた持論の「小説家になるには医学部に入るべき論」を熱く語り出しました(私はその様子が面白いので保護者みたいにその子の横について話をずっと聞いていました)。「へー、なるほどねーそんな志望動機初めて聞いたよ、おもしろいね!いいじゃん!チャレンジしようよ医学部!」、△△さんはにやにやしました。「でも…」、その子はちょっと言いづらそうにこう言いました。「理系教科、苦手っす。数学とか全然。」、「あー、でもさ『医学部って文系なの』知ってた?」、おいおい△△さん、受験生に自分のところを受験させたいからって適当言ってないか?さすがの受験生もいぶかしい表情になっているぞ。「理系と文系って何が違うと思う?」、「理系は、国語とかと違って答えが必ず決まってるとか?」、「そうだよね、でも医学って答え決まってないんだよ。」、「え?」、「数学は必ず決まった答えが出るけど。医学はそうじゃない。君が風邪ひいて僕が医師で治したとするよね。で、次の患者も同じ風邪だから君にしたように僕は治療した。治ると思う?」、「治るかな?」、「そう限らないんだよ。同じ風邪でもね。身長も体重も性別も違う、体質も違う、持病もあるかも。あと性格も違うよね、『食後に薬飲んでね』って言ってもめんどくさがって飲まないとかさ。……人間だからだよ。相手は数字や機械じゃないんだ、人間なんだ。医学は文系だし人間学なんだよ。」、「……」、「小説家ってさ、僕は知らないけど、人間知ってないと書けないよねたぶん?心の動きとか人の行動パターンとか。医学部出身者に文筆家が多いのって、そういうことなんじゃないかな?医学の勉強って人間の勉強なんだよ。だから君の考えはまんざら間違いではない。」。△△さん、さすが教務スタッフ営業スタッフだな、話がうまいぜ。「数学とか苦手なんだよね、それが不安かな、たとえばこんなのどうかな」、△△さん何やら資料出してきたぞ。営業はじめたぞ。「こういう地域枠選抜(※1)ってあるんだけど、どうかな?教科試験の得点も一般選抜ほど高い得点が要求されないし、で、志望理由書とか自己推薦書に君の考えを書いたらいいんじゃない?小論文でアピールするのもいいかもね!」「『Dr.コトー診療所(※2)』好きなんですよね!そういうの興味あります!」「ねー、でしょ!じゃあ出願資料渡しておくね!受験待ってるよ!」商売うまいなー。そして△△さんは彼にこう言いました。「その君の小説家になりたい熱意、絶対君の『武器』になるから!それ生かしてみよう!」
※1 地域枠選抜:地方における医師不足や診療科の偏在といった問題を受けて、医師少数区域を解消することを目的として作られた選抜制度(合格人数が限られている)。医師不足が深刻な地域において、原則卒業後規定の年数その地域で働くことを出願の条件にしているという特徴がある。この特徴からか、一般的に受験生の人気があまり高くなく、定員割れを起こしている大学もしばしばあるため、一般選抜よりも入りやすいことが多い。ただし、志望理由書や自己推薦書、調査書、誓約書など提出書類が多いのも特徴。
※2 Dr.コトー診療所:山田貴敏による日本の漫画作品。主人公五島健助は優秀な医師で、東京の大学附属病院に勤めていたが、とある理由から医師不在の離島である古志木島の診療所に赴任する。その先での奮闘記を描いたもの。ドラマ化・映画化もされ、関連書籍も出た。
まとめ ~あなたの「活動実績自体」では強みにならないが、「活動への熱意を具体的に説明する」と、それはあなたの強みになる。~
前述では、ちょっと極端なケースを挙げましたが、ここで重要なことは「『実績』や『成果』という事実ではなく『熱意』が人を動かす」ということです。これは大学受験に限ったことではないかもしれません。就職試験など、あらゆる選抜試験に共通することだと思います。ただ、誤解して欲しくないのは、なにも「生徒会長や文化祭実行委員、運動部のキャプテンやボランティア活動歴、探究学習の成果が自分の強みとして活かせない」ということではありません。問題は、「そのトピックそのものを提示することだけで、それが他の受験生との差別化をはかる、『自分の強み』になるのではない」ということなのです。その活動に対してどれだけの熱意をもって取り組んだのか、そしてその熱意がいかに進学の動機に強固に結びついているかが大きな評価ポイントとなるのです。これが、本日の話の要諦です。ですから「自分の強みを言語化するとき」はこうした点に注意して、「ただの活動記録や報告」にならないように、「どのようにそれに熱意を持って取り組んだのが具体的に描写する」ように心がけてください。そして、それを自らの将来像につなげて述べてみてください。
(TVプロデューサーで演出家の佐久間信行氏も言っていたように、トピック自体は、独自性のあるオリジナリティーがあるものでなくてもよいのです。凡庸なものでもよいのです。問題は、そのトピックをどう演出してエピソードに仕立てるかにあります。)
さて、前述の彼はその後どうなったか気になりますよね。彼は私の勤務していた予備校には入らなかったので直接は知りませんが、△△さん(もう〇〇大学を退職された)の話によれば、○○大学の地域枠選抜に見事現役合格。そして、今はその地域の僻地(へきち)にある診療所にDr.コトーさながら勤務しているのだとか。なお、小説の執筆に精を出しているかどうかは不明だそうです(笑)。
〈参考資料〉
(何か特別な活動や実績がなくても、自己PRはできる。そのための一冊)
〈追記〉
こちらの記事内容に関連したことが朝日新聞の対談記事となっていたので、こちらも是非ご参照ください。
『大学の入試・広報担当者の本音座談会【中編】 総合型選抜、どうやったら受かるの…?』(朝日新聞)Yahooニュース 2024/12/23(月) 17:00配信
以下、重要なところだけ引用・抜粋します。覆面座談会記事です。
A大学担当者「(前略)何かに参加したこと自体は、何のアピールにもなりません。例えば、留学なら行く動機があって、留学先で何を学び、それを自分が志望する学部でどう生かしたいのか。総合型選抜では、そういったストーリーを語れることが大事です。」
C大学担当者「うちの大学の総合型選抜では「主体性評価」に加点があります。資格検定で一定以上の級を持っていたり、クラブや委員会の部長をしていたりなどの経験に加点をしているのですが、「副部長じゃダメでしょうか」「役職についたことはないし、高校時代に何もやっていないんです」という質問も多く受けます。そんなときは、「〇〇をやってコミュニケーション力が高まった」とか、「入学後にこんなふうに生かして勉強したい」など、そこから得たことを書くようにお伝えしています。」
B大学担当者「結局、総合型選抜で一番大切なのは、熱意やモチベーションです。「〇〇をしたいから、この大学に入りたい」という気持ちを評価する選抜なんですね。(中略)高校の勉強はしていなかったけれど、パソコンのことなら自信があるという受験生がいたら、「自分のための入試だ」と思うでしょう。そういう特別なポテンシャルを生かしてほしいし、総合型選抜はそれが生かせる入試です。」
こちらの内容も是非参考にしてみてください。
(志望理由書作成のためのサイトマップはこちら)
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