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日本とアメリカのコンサート運営の違い 4

テクニカルライダーって何?

前回のブログ記事で言及したテクニカルライダーとは、コンサート開催に必要な条件が克明に記された資料です。契約・準備・当日のクオリティを支える根幹と言ってもいいほど大事なものです。

ブッキングエージェントがプロモーターに連絡する際、条件と一緒にライダーも送ります。それに基づきプロモーターがコストを試算して見積もりを出し、ギャラなどをエージェントと擦り合わせていきます。

ライダーが曖昧だったり不完全だと、こちらが要求したはずの物が用意されなかったりします。揉めます。逆に、ライダーがしっかりとしていれば、問題が起きる確率は飛躍的に下がります。

詳しく書いていきます。



1. 内容

コンサート開催に必要な条件が明記されているため、契約書くらい重要なものだと考えてください。書き方や内容はツアーによって変わりますが、共通して記載されてある主な項目はこちらです。

  • 公演のタイトルと概要

  • 主要スタッフの名前、役割、電話番号、メールアドレス

  • 飛行機、ホテル、移動に関するリクエスト

  • 当日の参考スケジュール

  • 控え室とホスピタリティ

  • セキュリティ注意事項

  • 物販

  • テック関連の要件(次の項目を参照)

大体平均で20〜25ページほどになります。長く詳細です。

アメリカでは、ライダーに書かれていないことは準備されません。仲の良いプロモーターならある程度は融通を利かせてくれますが、その範囲は日本より圧倒的に狭い。それはライダーをちゃんと書かなかった方、つまりプロダクション側の責任、という考え方だからです。

プロモーターも現場スタッフも色々と準備しやすくなり、無駄な混乱も避けられるため、しっかりと書かれたライダーを出すのは必須です。


2. テックの要件の詳細

テックに関連することは極力細かく書きます。ツアーに帯同する自分のテックチームに、それぞれの項目を書いてもらうと楽です。

運用・スケジュール

搬入時間、ゲネプロ、休憩時間、本番時間など大体のスケジュール感、必要なローカルクルーの人数を書きます。

持参する機材リスト・レンタル機材リスト

自分達で現場に持ってくる機材、レンタルして欲しい機材を明記します。PA、コンソール、マイクリスト、DI、ワイヤレス、IEM、電源容量、など。

機材レンタルを「Backline Rental」と言います

マイクスタンド、ケーブル、譜面台、イスのレンタルは、実際に必要な数より5〜10個ほど多めに書いておきます。向こうが気を利かせて余分に持ってくることはありません。

図面系

Stage Plot(ステージ図)、Lighting Plot(照明図面)、Input List(回線表)を入れます。補足的なことも書きます。

  • Stage Plotには、奏者の立ち位置、ライザー、譜面台や椅子の場所などに加えて、ステージ寸法、天井高、吊りポイント、スクリーンの大きさや位置などを描きます。プロジェクターの仕様も指定します。

  • Lighting Plotには、照明がどこにどう設置されるのかを描きます。文章で必要な照明機材のリストも記載します。

  • Input Listには、どのチャンネルがどのパートなのか、マイクの指定、ワイヤレスなのかワイヤドなのか、など記入します。


3. その他の要望

他にもこういったことを書きます。至って普通のことですが、書いてなければ対応されません。それぞれの項目に対し、文章で補足説明を追加します。

  • インターネット環境必須

  • ステージ脇に全員分のフェイスタオル

  • 演者の立ち位置の足下に水ボトル2本

  • 控え室にシャワーとバスタオル

  • Comp Ticketの枚数(知人・家族・メディア用の無料チケット)

  • Meet & Greet(ファンと終演後に挨拶してサインや写真をする)の場所や時間制限

  • Merchandise(物販)ブースの位置


4. まとめ

ライダー共有後

ブッキングが確定したら、こちら側のプロダクションマネージャーやテックチームを含めて、テックに関するコミュニケーションが会場スタッフと始まります。

相手側でどうしても対応できない箇所があれば、そこは話し合って妥協案を見つけます。よくあるのは「控え室の数が足りない」「スクリーンの位置をこれ以上後ろに動かせない」など、会場の物理的な制限によるものです。

ゴールは公演の成功

日本的な「言わなくても判るだろう」「やってくれるだろう」という期待を持って臨むと、高確率で揉めます。

ライダーを周到に準備すれば、現場の混乱を防ぎ、当日の作業効率を上げ、みんなが気持ちよく働ける環境が整います。

アメリカ現場のおもてなし精神は日本の10%程度です。公演を成功させるために、徹底したテクニカルライダー作成を心掛けましょう。


5. ライダー逸話

先に述べたように、ライダーの中身はライブ内容によっても、書く人によっても、ツアーでも変わります。有名な逸話を幾つか挙げてみました。

  • ヴァンヘイレン: 茶色のやつだけ抜いたM&Mの袋を控え室に用意

  • マライアキャリー: 控え室に白猫20匹とハト100匹

  • ビヨンセ: 飲料水の温度は21度、控え室の壁は白塗り、トイレの椅子を新品にすること

  • フーファイターズ: 塗り絵ページがあり、よく塗れたスタッフにギフト贈呈

  • エミネム: 鯉の池

  • オアシス: 何時に自分たちが到着しても、開いてるバーにすぐ連れて行け

ヴァンヘイレンに関しては、プロモーターがきちんとライダーを読んだか試すために書いたことだそう。

他はもはや要求から世界観作りが始まっていますが、アリーナやスタジアムを埋める大物アーティストだから許される内容です。真似しないようにしましょう。


6. 他のブログ記事

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