受精率が低いときに確認したいこと|卵子・精子・培養条件
受精率が低い・受精しない原因について、卵子側・精子側・培養条件の観点から整理します。鍼灸で改善するとは断定せず、確認事項をお伝えします。
結論
体外受精・顕微授精で受精率が低い、あるいは受精しない場合、その原因は卵子側・精子側・培養条件など多岐にわたり、いずれも医療機関での検査・評価が必要な領域です。鍼灸によってこれらの原因を直接取り除くという医学的なエビデンスはありません。本記事では、考えられる原因と、医療機関で行われる対応、当院での向き合い方を正直にお伝えします。
このページが対象とする人
体外受精・顕微授精を行ったが、受精率が低かった、または受精しなかった方
受精しない原因について知りたい方
次回に向けて確認すべきことを整理したい方
(上記は検索傾向からの推測であり、断定するものではありません)
このページを読む前に:受精率が低いことは、多くの場合ご自身の生活習慣が直接の原因ではありません。まずはその点をお伝えした上で、以下をご覧いただければと思います。なお、本記事は特定の症状や疾患の診断・治療を目的としたものではありません。ご自身の状態に関する判断は、必ず医療機関にご相談ください。
用語の説明
受精障害:成熟した卵子に対して体外受精・顕微授精を行っても、受精が成立しない状態
卵子活性化障害:精子が卵子に到達・進入した後、卵子が活性化して受精のプロセスが進むために必要な反応(カルシウムイオン濃度の上昇等)が起こらない状態
透明帯:卵子を包むタンパク質の膜。通常は1個の精子が通過すると硬くなり、複数の精子の進入を防ぎます
医療機関で一般的に行われる検査・治療
受精率が低い・受精しない原因として、医療機関では主に以下のような要因が挙げられています(要確認:詳細は培養を担当した医療機関にご確認ください)。
卵子側の要因
卵子の未成熟:排卵時に十分成熟していない卵子は、受精率が低くなる傾向があるとされます
透明帯の異常:透明帯が通常より硬い・厚い場合、精子が通過できないことがあります(顕微授精ではこの影響は少なくなります)
卵子活性化障害:卵子側の要因で、活性化がうまく進まない場合があります
精子側の要因
卵子活性化因子(PLC-ζ)の欠損:受精の際、精子から放出される卵活性化因子が卵子内のカルシウムイオン濃度の上昇(カルシウム・オシレーション)を引き起こしますが、この因子が精子側で欠損している場合、受精が進みにくいことがあります
精子のDNA損傷:精子のDNAの状態が、受精や胚の発育に影響する可能性が指摘されています
医療機関での対応
上記のような受精障害が疑われる場合、医療機関では卵子活性化処理法(カルシウムイオノフォアやストロンチウムを用いて、人為的に卵子を活性化させる方法)が行われることがあります。また、不動精子(動きのない精子)しか見られない場合には、HOSTEST(精子の生存性を確認する検査)を用いて生存精子を選別する方法もあります。これらはいずれも医療機関でのみ行われる医療行為です。
東洋医学的な考え方・理論
東洋医学には、「受精率」という現代医学的な概念そのものはありません。東洋医学では、卵子・精子の元となる生殖の力を「腎精(じんせい)」と呼び、体全体の状態(気血の巡り等)を整えることを大切にしてきました。ただし、受精のプロセス(卵子活性化因子、透明帯の状態等)は、現代の生殖医学によって解明されてきた、非常に専門的で微細な生物学的プロセスであり、東洋医学の考え方で直接説明・改善できるものではありません。
(上記は東洋医学における伝統的な理論・考え方であり、現代医学的に検証された生理学的機序ではありません。)
鍼灸で行うこと
不妊鍼灸は、体調を整えることを目的とした施術です。
受精率そのものを直接変える施術ではありません。
研究で分かっていること
受精障害の原因(卵子活性化障害、精子のDNA損傷等)については、生殖医学の分野で研究が進み、対応方法(卵子活性化処理法等)も確立されつつあります。一方、鍼灸が受精率に影響するかどうかを検証した質の高い研究は、現時点で確認できていません。
まだ分かっていないこと
受精障害の原因は、卵子側・精子側それぞれに複数考えられ、原因不明のケースもあります
鍼灸によって受精率が向上するかどうかについて、検証された医学的なエビデンスはありません
これらを踏まえ、本記事では「鍼灸によって受精率が改善する」といった断定的な表現は使用しません。
当院での対応
当院では、受精率そのものへのアプローチではなく、体外受精・顕微授精という負担の大きいプロセスに向き合う中での体調面のケアを大切にしています。受精率についてのご不安がある場合は、まず培養を担当した医療機関・胚培養士に詳しい説明を受けることをおすすめしています。
匿名症例・院内データ
本記事のテーマ(受精率)について、当院独自の集計データは現時点でありません。
通院の目安
採卵前後の通院頻度の目安は「採卵前の鍼灸|受ける時期と体調管理の考え方」でご紹介しています。
費用
はり・きゅうの施術は、原則として健康保険の対象外であり、全額自己負担となります。費用の詳細は「不妊鍼灸の料金はいくら?費用・回数・医療費控除を解説」をご参照ください。
リスクと注意点
鍼灸施術には、一般的に以下のようなリスクが伴う可能性があります。
痛み:刺鍼部位に一時的な痛みを感じることがあります
内出血:刺鍼部位に内出血(あざ)が生じることがあります
倦怠感:施術後に一時的なだるさを感じる方がいます
医療機関への受診を優先すべきケース
受精率が低い・受精しない原因や、卵子活性化処理法等の次のステップについては、必ず培養を担当した医療機関・胚培養士にご確認ください。鍼灸は医療機関での検査・診断・治療の代わりになるものではありません。
よくある質問
Q1. 受精しなかったのは、自分のせいですか?
多くの場合、そうとは言い切れません。受精障害の原因は卵子側・精子側それぞれに複数考えられ、原因不明のケースもあります。まずはご自身を責めすぎず、医療機関で詳しい説明を受けることをおすすめします。
Q2. 受精率が低い場合、次はどうすればよいですか?
医療機関では、卵子活性化処理法等の対応方法があります。次回の治療方針については、必ず培養を担当した医療機関にご相談ください。
Q3. 鍼灸で受精率は上がりますか?
受精のプロセスは非常に専門的な生物学的プロセスであり、鍼灸によって直接改善するという医学的なエビデンスはありません。当院では、体調面のケアを目的として施術を行っています。
Q4. 精子側にも原因があるのですか?
はい、あります。卵活性化因子(PLC-ζ)の欠損や、精子のDNA損傷など、精子側の要因が受精障害に関わっている場合があります。
Q5. 受精しなかった場合、何を確認すればよいですか?
卵子の成熟度、透明帯の状態、卵子活性化障害の有無、精子の状態など、複数の要因について、培養を担当した医療機関・胚培養士に詳しい説明を受けることをおすすめします。
まとめ
受精率が低い・受精しない原因は、卵子側・精子側・培養条件など多岐にわたり、多くの場合ご自身の生活習慣が直接の原因ではありません。
鍼灸によって受精率が改善するという医学的なエビデンスはなく、本記事ではそのような表現は用いていません。
そのうえで、結果を待つ間の心身の負担に寄り添い、体調を整えていくことも、鍼灸ならではの関わり方だと当院では考えています。
今後の治療方針については、必ず培養を担当した医療機関にご相談ください。
参考文献
全国健康保険協会「はり・きゅう、あん摩・マッサージのかかり方」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3080/r140/
※受精障害・卵子活性化処理法等の医学的な内容は、複数の医療機関・胚培養士による情報発信を参考に整理していますが、個々の状況については必ず培養を担当した医療機関にご確認ください。
執筆者/監修者/更新日
執筆:福本晋平
監修:福本晋平(ふくもと治療院 院長・はり師/きゅう師)
更新日:2026年8月13日
