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人手不足倒産の正体は「餓死」ではない ─ 普通の人を拒絶して自滅する組織のバグ

「人手不足倒産が過去最多を更新した」

そんなニュースが流れる一方で、
転職市場には「何十社受けても採用されない」という人が溢れています。

このちぐはぐな現象を、どう捉えればよいのでしょうか。

一見すると、これは「働き手が足りない」という
物理的な欠乏に見えます。

しかし、業務設計者の視点から
その「スキマ」を覗き込むと、
全く別の景色が見えてきます。

これは、食糧(労働力)がない飢饉ではありません。

目の前に食べ物はあるのに、
「これは私が食べたい最高級フレンチ(即戦力)ではない」
と言って食べるのを拒否し、
結果として静かに衰弱死している──。

そんな選り好みによる餓死の構造が、
多くの組織で起きているように見えるのです。

今日は、私たちが無意識に求めてしまう
「ユニコーン(幻の生物)」の正体と、
組織が生き残るための「普通」の設計について
考えてみたいと思います。

「そのスペック、社内に一人でもいますか?」

求人票を眺めていると、
一見普通に見えても、
実務家が見ると「ん?」と
手が止まる要件に出会うことがあります。

【必須要件(Must)】
・法人営業および営業企画の実務経験(5年以上)
・SQL等を用いたデータ抽出・分析スキル
・数名のマネジメント経験(プレイング含む)
・自ら課題を発見し、
 周囲を巻き込んで解決まで導ける
 「高い当事者意識」をお持ちの方

いかがでしょう。
「あるある」と思われた方もいるかもしれません。

この求人は、パッと見はまともそうに見えます。
しかし、その行間を翻訳するとこうなります。

営業のエースで、
データの専門家で、
かつマネジメントもできて、
さらに
仕組みがない場所で、誰の指示も受けずに、勝手に正解を作ってくれる人
を募集します。

ここで、胸に手を当てて考えてみてください。

今、あなたの社内に、
この条件をすべて満たす人は
何人いるでしょうか?

もし、これだけのスキルと自走力を持った人がいたら、
とっくに社内で「手放してはいけない中核人材」
になっているか、
あるいは自分で事業を立ち上げているはずです。

少なくとも、
「普通の転職市場」には滅多に流れてきません。

「社内の人間ですら誰も満たせない要件」を、
外の人には平気で求めてしまう。

現場は「誰でもいいから手が欲しい」と叫んでいるのに、
組織の入り口(採用基準)だけが
「スーパーマン」以外を通さないフィルターになっている。

これが、人手不足倒産の入り口にある
構造的なバグです。

求人票に取り憑く「4つの亡霊」

なぜ、私たちはこれほどまでに
ハードルを上げてしまうのでしょうか。

意地悪をしているわけではありません。
そこには、採用する側の
切実な「弱さ」と「同調圧力」が潜んでいます。

業務設計者の視点で分析すると、
多くの企業の求人票には
4つの亡霊が取り憑いていることがわかります。

1. 記憶の亡霊(美化された前任者)

「あの人は、言わなくても全部拾ってくれた」

辞めてしまったエースの記憶です。

しかし、人間の記憶は都合よく美化されます。
その人も入社当時は「普通の人」だったはず。

長い時間をかけて学習し、
組織に適合したプロセス(時間の変数)を無視して、
最初からその「完成形」を求めてしまうパターンです。

2. 安心の亡霊(精神安定剤としての部下)

「自分の横にいて、ツーカーで通じる人がいい」

これは能力の話ではありません。
マネージャー自身が抱える不安や孤独を
埋めてくれる「相棒」を求めています。

それは「労働力」の募集ではなく、
精神的なケアラーの募集になってしまっています。

3. 夢の亡霊(自分の挫折を託す)

「自分が成し遂げられなかった変革を、実行できる人が欲しい」

自分自身ができなかったことを、
権限も文脈も持たない新人に
「期待」という名で丸投げする。

これは採用ではなく、
他者を使った
リベンジ(代理戦争)です。

4. 世間の亡霊(見栄とインフレ)

「他社もこれくらい求めてるから、うちも……」

自社の実務検証よりも、
見栄が勝ち、
業界標準という名のインフレを起こしています。

「高い当事者意識」は仕様書のバグ埋めではない

必須要件に紛れ込む
「当事者意識」や「自走力」。

業務設計の視点では、
高い当事者意識をMustにした時点で、その業務プロセスは未完成
と判断します。

それは、
仕組みの不備(バグ)を
個人の「察する力」や「踏ん張り」で
埋め合わせようとしている宣言だからです。

人が来ないのは、
やる気がないからではありません。

その車(組織の構造)が、
あまりにも乗りにくそうに見えているからです。

倒産しないための「ハードル下げ」

ユニコーンを探すのをやめ、
「普通の人」が活躍できる高さまで
ハードルを地面まで下げる。

これは妥協ではなく、
企業の生存戦略としての最適化です。

  • 精神論を要件から外す

  • 業務を切り分ける

  • スロープ(育成導線)を設計する

「いい人がいない」と嘆くことは、
スーパーマン以外お断りの不親切な設計です
と自己紹介しているのと同じです。

結び:選ぶ側から、受け入れる側へ

人手不足倒産のニュースを見るたびに、思います。

その会社は、
「人」がいなくて潰れたのではなく、
「自分たちの形を変えられなくて」
潰れたのではないか、と。

市場にユニコーンはいません。
いるのは、凸凹を持った現実の人間だけです。

その凸凹を、
「選別」ではなく「設計」で受け入れる。

その覚悟を決めた組織だけが、
この時代を生き残れるのだと思います。

🍵 もっと深く「スキマ」を覗きたい方へ

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