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#しくみのスキマ|引き算の視点がしくみを整える

私たちが業務改善やDXを進めるとき、つい「何かを足す」ことから考えてしまいます。
新しいツールを入れる、新しいルールを設ける、チェック工程を追加する…。
一見すると前向きで、解決に向けて動いているように見えるこの「足し算」の発想は、現場からも歓迎されやすく、上層部へも説明がしやすいものです。

でも、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
その足し算を繰り返した先に、私たちが本当に目指していた、風通しが良く働きやすい現場の姿はあるでしょうか。

足し算だけで進んだ結果、現場の画面にはいくつものシステムが並び、通知は鳴り止まず、かえって手順が複雑になってしまう。そうした「便利という名のノイズ」に現場が押しつぶされていくケースを、私は何度も見てきました。 


足し算ではなく「守るもの」と「変えられるもの」を仕分ける

例えば、ある工場の建屋を計画しているとします。
これから入れる荷物や新しい設備が増えそうだから、手っ取り早く建物自体を拡張しよう、という話が出ます。
あるいは、設備をもっと高性能なものに置き換えたり、数を増やそうとするかもしれません。

でも、それを安易に実行すると、建物のサイズ以外の要件、例えばコストや安全基準、それを動かすための人員配置のバランスまでが破綻してしまうことがあります。

そこで、設計者に求められるのは発想の転換です。
「建屋を増やす(足す)」のではなく、「流量や中を流れる業務そのものをコントロールして、今の枠に収まるようにする(引く)」ことを検討するのです。
流量を減らすために、情報の流れを整理する仕掛けやルールを作る。
「本当に守るべきものは何か」と「変えてもいいものは何か」を見極め、前提をひっくり返して考えることです。

曖昧な作業にも「機械的なルール」を与える

もう一つの例を挙げましょう。
現場から「並び替えの業務を自動化したい」という要望があったとします。
しかし、その業務をよく観察すると、システムやロジックには落とし込みきれない、長年の経験に基づく「曖昧な判断」や「イレギュラーな手作業」が混じっていることがあります。
それを無理にすべてシステム化(足し算)しようとすると、例外処理のための設定や確認作業が増え、かえって人の手間が増えてしまうケースがあります。

そこで、あえて「機械的なルール」を付与して、業務の形を削ぎ落とします。
今まで曖昧に、よしなに判断していた部分を「これからはこうする」と明確に決め、そのルールを周辺の部署や前後の工程と調整することで、完全な自動化を実現する。
あるいは、いっそのことその業務自体をやめる、極端に簡略化する。
「どちらか」を明確に選び、機能を絞り込む(引き算する)ことで、結果としてプロセス全体がスリムになり、持続可能な仕組みへと生まれ変わります。

「引き算」は冷たさではなく、未来への優しさ

「何かをやめる」「削る」「標準に合わせる」という話は、どうしても冷たく響きます。
現場が大切にしてきたこだわりを手放してもらうことになり、時には痛みを強いることもあります。設計者自身にとっても、口にしづらく、摩擦を生むテーマです。

しかし、私はこう信じています。
「引き算」は、最終的に人を幸せにするための、構造的な優しさであると。

むやみに足し算を続けることは、その場しのぎの優しさに見えて、実は複雑さと見えない負荷を未来の現場に押しつけているだけです。
反対に、勇気を持って刀を下ろし、何を削るか、何を終わらせるかを決めることこそが、現場の余白を守り、長く息のできる仕組みを生み出す道なのです。

設計者に求められるのは、単にコスト削減や効率化のために無機質に削ることではありません。
現場と対話し、未来の姿を見据え、「本当に残すべきもの」を見極めること。
そして「削る」という決断を伝えるときには、そこに込められた優しさと、最後は必ず幸せにできるという設計者としての信念を示すことです。

引き算がつくる持続可能なしくみ

足し算だけで膨らみきったシステムや業務は、いつか必ず限界を迎えます。
だからこそ、引き算の視点を持つことが、結果的に「何かを加えるよりも豊か」な仕組みをつくります。

しくみのスキマを見つけ、守るべきものと変えられるものを仕分けし、時には刀を下ろす。
それは冷たい選択ではなく、組織が呼吸を続けるための未来への優しさです。

あなたの現場にも、そんな「引き算」を待っている余白があるかもしれません。
一度立ち止まり、「本当に足すべきか?」「減らすことで豊かにならないか?」と問いかけてみてください。
そこから、新しい仕組みの可能性が静かに広がっていくはずです。

もっと深く「スキマ」を覗きたい方へ

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