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「私がやった方が早い」と言うあなたへ─それは優秀さではなく、組織のバグを人力で回収しているに過ぎない

部下からの相談を受けたとき。
あるいは、上がってきた資料の出来が悪かったとき。

つい、口癖のようにこう言っていませんか。

「貸して。私がやった方が早いから」

実際、あなたがやった方が圧倒的に早いのでしょう。
質も高い。

部下に何度も修正させる手間を考えれば、
自分で巻き取ってしまった方が、プロジェクトは進みます。

あなたは「現場の穴を埋める、頼れるリーダー」として振る舞っています。

けれど、少し立ち止まって考えてみてください。

その「忙しさ」は、本当にあなたの仕事でしょうか。
もし明日、あなたが倒れたら、そのチームはどうなるでしょうか。

あなたは、組織にとって最も危険なボトルネックになりかけている

結論から言えば、
「私がやった方が早い」という言葉が出る瞬間、
あなたは組織にとって最も危険なボトルネックになりかけています。

それは、あなたの能力が高いからではありません。

組織という「しくみ」のバグを、
あなたという「高コストな人力」で無理やり埋め合わせている状態だからです。

今日は、そんな
「優秀な回収者」になってしまっているあなたへ。

少し耳の痛い、
けれど、これから確実に楽になるための話をします。

あなたは「高性能なバッファ」になっている

なぜ、あなたがやった方が早いのでしょうか。

それは、その業務が標準化されておらず、
あなたの頭の中にある
「暗黙知」や「経験則」に依存しているからです。

業務プロセスの中には、必ず

  • イレギュラーな事象

  • 判断に迷うグレーゾーン

が存在します。

本来であれば、それらは

  • なぜ起きたのかを分析し

  • ルールを整備し

  • ツールで自動化し

誰でも処理できるように「設計」し直すべきものです。

しかし、あなたは優秀すぎました。

設計し直すよりも早く、
その場の判断力と処理能力で、
イレギュラーを「例外処理」としてさばけてしまう。

応急処置が「恒久運用」になっている

システム開発の用語で言えば、
あなたは

「バグだらけのプログラム」を修正せず、
エラーが出るたびに手動でデータを書き換えている

ようなものです。

これを「運用」とは呼びません。
これは「応急処置の恒久化」です。

あなたはマネージャーという高給を受け取りながら、
本来システムがやるべき

「例外処理の吸収」=ただのバッファ(緩衝材)

の役割を果たしてしまっているのです。

「忙しい」に依存しない

厳しいことを言うようですが、
この状態は、あなた自身にとっても
ある種の「快感」を伴います。

  • 「自分がいないと回らない現場」

  • 「トラブルを次々と解決する自分」

これらは、自己肯定感を満たしてくれます。

忙しさは、ときに
自分の存在意義を確認するための麻薬になります。

しかし、業務設計者の視点で見れば、
優れたリーダーとは

「自分が何もしなくても、
チームが勝手に回り、成果が出続ける状態」を作れる人

です。

自分の仕事をなくすこと。
自分を不要にすること。

これこそが、
マネージャーが目指すべき究極の設計です。

あなたが汗をかいてボールを拾っているうちは、
その組織はいつまでたっても
「あなたのコピー」以下のパフォーマンスしか出せません。

自分が「ボトルネック」だと認める勇気

では、どうすればいいのでしょうか。

まずは、
「私がやった方が早い」という言葉を飲み込むことから始めてください。

そして、部下がつまづいているそのポイントを、
個人の能力不足ではなく
「プロセスの欠陥」として捉え直すのです。

  • なぜ、この判断で迷ったのか?
    → 基準が曖昧だからではないか

  • なぜ、このミスが起きたのか?
    → ツールの設定が不親切だからではないか

  • なぜ、私に聞かないと進まないのか?
    → 情報が私に集まりすぎているからではないか

あなたがやるべきは、
部下の代わりに走ることではありません。

部下が転ばないように、
道の凸凹を舗装すること。

あるいは、
転んでも怪我をしないガードレールを作ることです。

手を動かすな。しくみを描け

それは、一時的には
「自分でやる」よりも時間がかかります。

  • 部下が育つまでの忍耐

  • マニュアルやルールを作る手間

どれも、楽ではありません。

しかし、その時間を投資しなければ、
あなたは一生、組織のバグを回収し続ける
「優秀な作業員」のままです。

勇気を持って、手を止めてみてください。

そして、その手で「作業」をするのではなく、
「しくみ」を描いてください。

あなたが暇そうにしているチームほど、
実は健全に回っている。

そんなパラドックスが、
業務設計の世界にはあるのです。

▼ この記事を読んだ方への処方箋

「では、具体的にどうやって
自分の仕事を切り出し、他者に渡していけばいいのか?」

そう思った方のために、
思考の補助線となる記事を用意しました。

■ どこから手を付ければいいかわからない時

すべてを一度に変える必要はありません。
「一点」だけ変えることで、
ドミノ倒しのように状況が好転することがあります。

👉 しくみのスキマ|一点突破がしくみを広げる法則

■ 自分の立ち位置を変えたい時

マネージャーは「管理者」である必要はありません。
チームの反応速度を上げる
「触媒」としての役割を意識すると、動き方が変わります。

👉 しくみのスキマ|機能にない触媒という立ち位置がしくみを変える

■ 「任せる」のが怖い時

仕事を任せることへの恐怖は、
「統制が効かなくなる」ことへの不安から来ます。

正しく設計された
「密な結合」があれば、
安心して権限を手放すことができます。

👉 結びの設計|密結合の美しさと統制の力

■ そもそも「問い」がズレているかもしれない

なぜ成果が出ないのか。
なぜ忙しいのか。

その「問いの立て方」自体を見直すためのヒントです。

👉 問いの設計|DX推進者に贈る10の問い

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