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ふわふわ言葉って、なんのはなしですか|自閉症育児日記

「これはなあに」

保育園最後の日を終えて帰宅した双子たち。

ふたりは、次々にカバンから制作物を取り出してくる。
普段は、もらったプリントも出す仕草さえ見せないくせに。よっぽど、最後の数日間が楽しく、思い出深かったんだろうと感じる。
その中で、双子兄が出してきたカードに私は目をとめて、聞いてみた。

「ふわふわ言葉だよ」

彼はそう言って、それを見せてくれた。

「ちょっとまってて」
ちが反対なのはご愛敬
「すこしにがて」

色をぬって、かわいく切ったんだよ~と教えてくれた。

「ふわふわ言葉って。なんだったっけ」

私が聞くと、彼は少し首をかしげて
「うーん、やさしいことば」

と、そう答えた。

「そうだね」と私は言った。

人に対して使う言葉は「ちくちく言葉」ではいけません
「ふわふわ言葉」で、相手が受け取りやすいように届けましょう

卒園した保育園での先生方の教えだ。
世の中には、ちくちく言葉もあふれている。ちくちくなんて、生易しいもんじゃないことだってある。
子どもたちも、無意識のうちにちくちく言葉を使ってお互いを傷つけあってしまうこともある。それが相手にどんな影響を及ぼすのか……言葉の力の大きさを、彼らはまだ知らないからこそ、起きてしまうことだ。

だからこそ、今のうちから。言葉がいかに大切かということ、相手を想って言葉を発することが重要だということを、保育園では毎朝のように伝えてきてくれた。ありがたいなあと思う。


「ふわふわ言葉」を教えてくれた双子兄は、自閉症だ。
幼児クラスにあがってから苦手なことが顕著に現れだした彼。保育園の先生方は日々の様子をじっくりと様子をみていただいたうえで、療育などのサポートを提案してくれた。

その話をすると「保育園に、お宅のお子さんがおかしいから療育に行けといわれたってこと?」とびっくりされることがある。それにはむしろ、私がびっくりした。そんなとらえ方になるのか、まあ、それも致し方ないか……と。

保育園の先生は彼のことを「おかしい」だなんて、ひとことも言ってない。

「集団行動の際には、とくに不安なようで、部屋の隅にやってきて様子をみています。こんな風に指をしゃぶったりですね……」

といった感じで、園での様子も動画に収めてくれて、困っている様子を教えてくれた。親としても、やはり違和感を感じることや、難しいと感じることも出てきていた頃だったので、それが確信になった。むしろ、今後に向けての、彼の得意と苦手を明らかにして、もっと生きやすくできるチャンスだと思えた。

きっと勇気が必要だったろうと思う。それを伝えても受け入れがたい親がいることは、教育業界に長らく勤めているので私も感じている部分がある。
だから、勇気を出して伝えてくれた保育園には、感謝しかない。

そしてそこから、自分でも理解を深めようと思って、児童発達支援士も取得した。それを報告したときの先生方のうれしそうな顔は、私の大切な思い出のひとつだ。

「ちょっとまってて」
「すこしにがて」

彼にとっての、このふたつの「ふわふわ言葉」。

彼は筆圧の問題で、字がうまく書けない。だから、時間がかかる。それに自分でイライラして、いつも「書いて」と先生や双子弟に言っていた。でも、時間をかけてでも自分でやろうという意識が、年長になってぐんとのびた。

「ちょっとまってて」

焦らないでいい。ちゃんとみんな待っててくれるよ。

これは、彼自身を守る言葉。

また、人よりも少し食感に敏感な部分もある。
キノコなどがとくにそうで、あのふにゃ、とした感触を感じると、吐いてしまうことすらある。

「すこしにがて」

無理はせずに。でも、自分の思いはちゃんと伝えるために。
彼が、自分を大事にするための言葉。

保育園でも。家でも。
伝え続けてきた言葉が、彼の中に根付いていたんだと感じて、うれしかった。

双子兄から、1分遅れて生まれた双子弟。
双子でもまったく違う性格で、だからこそ、お互いを好きで毎日ぎゅぎゅっと側で感じながら過ごしていて。

双子兄は支援級。双子弟は普通級で、クラスも別々。
ついに離れて過ごすこと、いったいどこまでわかっているのか。
私の方が、どんどんさみしくなってる。

いつも至近距離

そんな弟はとても器用で、文字を書くのも工作するのも大好き。
器用な長女と気が合って、今日も春休みの暇を持て余して段ボールで共作していた。

そんな彼が書いてきた言葉は、たくさん練習した「旅立ちの日に」の歌詞。

この歌詞だけで泣けてくる

歌詞を思い出しながら、たくさん書いたよ。と、どっさり渡してくれた。
きっと難しい言葉も多かったけれど。感じるものがあったのかな。


双子は当然、年頃の男の子同志。
喧嘩もするし。怒ってお互い大声を出すこともあるけど。

双子弟が、双子兄ができないことを見てバカにしているのは見たことがない。兄が一生懸命書いた文字を読んで「できてるよ!」という。
双子兄は、双子弟が器用にものを作ったり、イラストを描いたり、逆立ち歩きで10m歩いたりするのを見たら「すごすぎるよ!」と心から褒める。

ああ、いい男になったなあ。と思う。

弟のイラストがかわいくて、ツボ

ふわふわ言葉を教えてもらったとき。
ふと、頭をよぎった言葉がある。

#なんのはなしですか

これも、まさに「ふわふわ言葉」だなって思うのだ。

オチがなくてもいい。
なんのはなしかわからなくてもいい。
面白いとかつまらないとか評価はしない。
すべてを包み込む魔法の言葉。

先日のインタビュー記事を見て、より一層、このふわふわ言葉がいかに人々を救っているのかを思い知ったところだ。



同じようでまったく違う、彼らの未来がどうなるかはわからない。
でも、今も毎日のように言っているように。
「双子でよかったね」と、そう思い続けてほしい。

もし悩んだ道の先で、ふたりがどうしようか途方にくれたら。
いっしょに「なんのはなしですか」とささやくことを勧めたいと思う。
きっと、彼らも、この路地裏のふわふわ言葉に照らされて、次の道しるべを見つけられることだろう。
母がそうだったように。




いよいよ来週は小学校入学式。
それまでに母は、すっかり物置にかくして忘れたフリしている、お道具箱・算数セット・学校生活用品×2の名前つけ作業に着手できるよう、ただ神に祈るのみである。



#なんのはなしですか




Specialthanks
世界自閉症啓発デーに、私も思いを寄せて。


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