Soulquarians works④【アルバム解説:Mama's Gun / Erykah Badu (2000)】

ネオソウルのカリスマ、エリカ・バドゥの最高傑作です。
この最高傑作が生まれた背景に触れながら、いったい何が凄いのか、その魅力を探っていきたいと思います。
概要
アメリカのシンガーソングライター、エリカ・バドゥ(Erykha Badu)の2枚目のアルバムです。
2000年11月18日にモータウン・レコードからリリースされました。
前作のデビュー・アルバム"Baduizm"(1997)に続き、ネオソウル(ソウルをベースにHIPHOP、ジャズ、ファンクの要素を融合)を深耕発展した作品です。
前作に比べて本作はややバラエティに富んだ作風になっています。
エリカ・バドゥは"Baduizm"発表後、当時のパートナーであるアウトキャストのアンドレ3000との息子を出産しました。
彼女はインタビューで、「タイトルの”Mama's Gun"は息子を守るメタファーであり、祖母がナイトスタンドに拳銃を置いていたことから着想を得た」と発言しています。
確かに、ジャケットは息子を銃で守る闘士のようです。
本作はエリカ・バドゥのプロデュースです。
本作の制作が開始されたのは1999年4月頃と言われており、1999年5月にエレクトリック・レディ・スタジオに拠点を移し、ソウルクエリアンズとの共作を始めました。
クエストラブ、ピノ・パラディーノ、ジェームズ・ポイザーなどのソウルクエリアンズの面々とジャム・セッションを行いながら作曲し、その後それぞれの曲に合う歌詞を考えていったと言います。
やがてエリカ・バドゥもソウルクエリアンズと呼ばれるようになります。
ソウルクエリアンズはエレクトリック・レディ・スタジオにて同時進行でアルバムを作成しました。
この活動から、ディアンジェロの”Voodoo"(2000)、コモンの"Like Water for Chocolate”(2000)、エリカ・バドゥの”Mama's Gun"(2000)などの超ド級の名盤が生まれました。
この三枚は三部作なんて呼ばれたりもします。
ソウルクエリアンズの概要についてはこちらをご覧ください。
前作も名作でしたが、このアルバムは別格です。生々しいサウンドとグルーヴに溢れ、エリカ様のノリと表現力がレベルアップしています。
ソウルクエリアンズのケミストリーが詰まった傑作です。
曲の順番にはかなりのこだわりがあったようで、CDのライナーノーツ印刷後も曲の順番が入れ替わりました。
初版版はライナーに記載されている内容と実際の曲順が違っていたそうです。
このアルバムは、前の曲のアウトロのフレーズがそのまま次の曲のイントロになっていたりして、全体が繋がるように構成されています。
まるでジャズクラブでのライブを見ているかの様なアルバムです。
曲解説
1.Penitentiary Philosophy
この曲は、エリカ・バドゥ、クエストラブ、ピノ・パラディーノ、ジェームズ・ポイザーのセッションから生まれました。
ライブ感あふれるロック色の強い曲です。
クエストラブのタイトなドラムとピノ・パラディーノの柔らかいベースが凄く良い。
曲をドライブさせつつ、音のスペースも感じる緩急が絶妙です。
調カッコいい!
エリカ様は歌詞をフリースタイルで歌い、歌詞の意味は後から理解したと言います。
タイトルを直訳すると「刑務所のセオリー」です。
歌詞のテーマは、魂の監獄からの解放、自己探求、そして怒りです。
[intro]
Why, why are all these voices in my mind?
どうして、どうして頭の中にこんな声が響くの?
(I have to write a song again)
(また曲を書かなきゃ)
:
[Verse 1]
Here's my philosophy
これが私の哲学
Livin' in a penitentiary
刑務所暮らし
:
[Bridge]
Evil, don't you test me
邪悪よ、私を試さないで
Evil, you won't win
邪悪よ、お前は勝てない
[Hook]
:
Why world Do want me to be so mad yeah
なぜ世界は私をこんなに怒らせたいの
彼女は当時スランプに陥っていました。
"Livin' in a penitentiary”(監獄に住んでいる)は、レーベルや市場(世界)からのプレッシャー(邪悪)を指すのではないかと思います。
イントロのささやき声は、プレッシャーからくる頭の中の混乱を表しています。
この曲でエリカ様は、魂の自由を求めて怒っておられます。
フリースタイルで作曲したせいか、Vers1とVers3は同じメロディーラインですが、Vers2はメロディーが異なります。
曲構成にライブ感と自由への渇望を感じます。
ボーカルスタイルはいつになく強く、太い。
後半のシャウトはまるでロック・ボーカルです。
名盤にふさわしい最高のオープニングショットです。
2.Didn't Cha Know
この曲はJディラ(J Dilla)とエリカ・バドゥのプロデュースです。
エリカ・バドゥはコモン(Common)に紹介され、Jディラの自宅を訪れます。
Jディラの自宅には、エリカが聴いたことが無い大量のレコードがあり、Jディラはその中から好きなものを1枚選ぶように言いました。
エリカは「名前が気に入った」という理由で、ジャズ・ファンクのタリカ・ブルーの”Tarika Blue"(1977)を選びました。
Jディラはそのレコードをかけ、さらにその中から1曲選ぶように言い、エリカは"Dreamflower"を選びます。
Jディラはその"Dreamflower"をチョップし、コンガを足し、ビートを作成します。
そしてこの曲はグラミー賞「最優秀R&Bソング」にノミネートされました。
凄い話ですね。
歌詞のテーマは「迷いながらも前に進む」というものです。
“Tried to move, but I lost my way”(進もうとしたけど、道に迷ってしまった)、"As long as you don't stop"(止まらなければいい)と歌い、その迷いの中で”Didn't Cha Know?"(知ってた?)と人生の大切な気づきを問いかけます。
楽曲は、柔らかなベースラインにエリカ様のスモーキー(甘くかすれたセクシーな感じ)なボーカルが凄く良いです。
全体的にジャジーですが、タイトなドラムループがHIPHOPを感じさせます。
3.My Life
この曲はJディラ、ジェイムス・ポイザー、エリカ・バドゥのプロデュースです。
もともと1995年にデモとして作成されましたが、Jディラ、ジェイムス・ポイザー、エリカ・バドゥによって再構築されました。
Jディラの乾いたドラムループとジェイムス・ポイザーのピアノが心地よいグルーヴです。
テーマは「弱さや矛盾を抱えながらも前進する」といったもので、「不完全こそ完璧」というバドゥ哲学そのものです。
歌詞には、"So many people out there chase the sun"(太陽を追いかける人が大勢いる)、"You'd better dance a dance to make the rain come down"(雨を降らせるにはダンスを踊ったほうがいい)、"Every now and then I Wanna throw my hands up in the sky"(時々、空に手を上げたいと思う)など天気のモチーフが多く使われ、人生を前向きに生きることを歌っています。
エリカ様の歌は明るくジャジーです。
こういう気怠さと軽やかさが同居した歌い方は彼女の得意分野の一つです。
4....& On
この曲は、前作"Baduizm "(1997)収録の”On&On"の続編にあたります。
”On&On"に続き、ジャボーン・ジャマルとエリカ・バドゥのプロデュースです。
また、ビリー・ホリディを思わせる抑制的でジャジーな歌唱スタイルも前作”On&On"と共通しています。
テーマは、盲目な物質主義への批判です。
"I'm 'bout ta give birth to church, But everybody want to ask this Earth"(私は教会を産み落とそうとしているが皆は地球に問いかけようとしている)、"Two fish, one swimmin' up stream, One swimmin' down livin' in a dream"(2匹の魚、1匹は流れに逆らって泳ぎ1匹は夢の中で流れに身を任せて泳いでいる)といったラインが象徴的です。
前曲と似たリズムなので、この曲の冒頭の「…ワン、トゥー」とうブレイクを挟んで曲が続いている様な構成が粋で好きです。
シンセベースの倍音が心地よい。
スネアドラムは、スナップ、リムショット、ブラシなど細かい使わけがされています。
ピアノも凄く良いですね。
使っている音はHIPHOP寄りですが、構成は完全にジャズの様式です。
途中4小節だけウォーキングベース(ジャズに特徴的な歩く様に音階が上下するフレーズ)にになるあたりなんか、「おぉっ」と思います。
”Bridge!"という掛け声でブリッジに入るところがカッコいい。
ジェームス・ブラウンやプリンスへのオマージュを感じます。
ライブ映えする曲です。
5.Cleva
この曲はジェイムス・ポイザーとエリカ・バドゥのプロデュースです。
この曲もスタンダードなジャズの様式で作られています。
前曲のエンディング・フレーズが引き継がれてこの曲が始まっており、まるでジャズのライブを見ているような感じです。
そして”King of The Vibes"の異名で知られるジャズ・ミュージシャン、ロイ・エアーズのヴィブラフォンが素晴らしい!
後半自分でスキャットしながらヴィビラフォンを叩くあたりが、実に味があって良いなぁ。
歌詞は、自分の容姿のイケてない部分に触れつつ"But I'm clever when I bust a rhyme”(でも韻を踏むとき私は賢い)と内面的な自信を表現しています。
正直な「不完全な容姿」の描写で共感を呼びつつ、「不完全こそ完璧」なバドゥ哲学が示されます。
6.Hey Sugah
エリカ・バドゥのプロデュースによるインタールード的作品です。
ボーカルはスキャットで、レトロな雰囲気がライブの幕間といった印象を受けます。
7.Booty
この曲はジェイムス・ポイザーとエリカ・バドゥのプロデュースです。
いきなりクエストラブのドラムブレイクから始まり、このスカスカのブレイクがそのままリズムパターンになるところが面白い。
このニュアンスを出すのはなかなか難しいのよね。
ベースはJディラです。
MPC(サンプラー的なもの)の指ベースでしょうか。
跳ね感の無い裏拍フレーズが、普通のベースでは出せないニュアンスです。
全体的に音数が少なく、スペースを活かしたファンクです。
すごくソリッドで、引き算の美学が感じられます。
エリカ様は、不倫相手の女性に対し「自分は簡単にパートナーを取り戻せるが、浮気をする男には興味が無い」と言います。
自分に敬意を払わない男を蔑むとともに、相手がいるとわかっていながらそれに敬意を払わない女性に対しても蔑みを与えています。
恋愛より復讐より誇りを取る、強い女性像が表れています。
"Booty"は「戦利品」ですが、「お尻」のスラングでもあります。
8.Kiss Me on My Neck (Hesi)
この曲はジェイムス・ポイザー、Jディラ、エリカ・バドゥのプロデュースです。
Jディラの、コンガを活かしたしなやかなファンクが凄く気持ち良い。
フルートがアーバンな雰囲気を醸し出しています。
エリカ様のボーカルは、前面のメインメロディと後ろの合いの手の2重構成になっています。
前面は声が重ねられており都会的、後ろの合いの手はスキャットによるシャウトが入ったりしてエモーショナルです。
いやぁ、いいわぁ。
プロダクションがきっちり噛み合っていて実に気持ちが良い。
この曲の歌詞構成はシンプルで、リフレインとフックの繰り返しになっています。
前曲では浮気相手に毅然とした態度でしたが、この曲では精神的な愛情を欲しています。
シンプルな内容の繰り返しで、曲全体にしなやかなグルーヴが生まれています。
[Refrain]
I want somebody to walk up behind me
誰かに背後から近づいてきて
And kiss me on my neck and
首にキスして
breathe on my neck
息を吹きかけてもらいたい
[Hook]
If you want to feel me
私を感じたいなら
Better be divine
神聖である方がいい
9.A.D. 2000
この曲は、1999年2月にニューヨーク市警の私服警官4人によって射殺された、22歳のギニア移民アマドゥ・ディアロへの追悼の曲です。
警官たちは、ディアロが連続強姦犯の特徴に合致すると判断し、ディアロがが丸腰であるにもかかわらず発砲し射殺しました。
警官たちは無罪になり、警察の暴力行為および人種差別に対する大規模な抗議デモが各地で発生しました。
こうした、警官が黒人を射殺しても無罪になる例は多く、連邦政府で「反リンチ法」が成立したのは2022年です。
タイトルの"AD 2000"はディアロの死亡した年であるとともに、”AD"がアマドゥ・ディアロのイニシャルになっています。
エリカ・バドゥは「多くの人がアマドゥ・ディアロの曲を歌っていたので、『名前』に注目を集めたくなかった」と言います。
また、「もし彼が今歌を歌えるとしたら、何と言うだろうか?」という視点で歌詞を書きました。
そのため、歌詞では"No you won't be name'n no buildings after me"(僕の名を冠した建物は残らない)と表現しています。
この曲の作詞作曲のクレジットは「ザ・ライト・シスターズ」で、ソウルシンガーのベティ・ライトと共作しています。
エリカ・バドゥの本名のエリカ・ライトです。
なお、ベティ・ライトはバックボーカルも担当しています。
プロデューサーは、ジェイムズ・ポイザー、クエストラブ、ピノパラディーノ、エリカ・バドゥです。
アコースティックギターで始まりアコースティックギターで終わる感じは、プロテスト・フォーク(社会批判のフォークソング)のスタイルです。
ジェイムズ・ポイザーのキーボードがちょっとドリーミーで良いですね。
追悼の雰囲気を感じつつ、暗くなりすぎない良いバランスです。
エリカ様のボーカルもやさしく思い出す雰囲気で、沁みます。
ところで"surely"(きっと)と言う繰り返しが"shaolin"(少林)に聞こえてしまうのは僕だけでしょうか?
初めて聞いた時は「少林寺」の歌かと思いました。
なんかすみません。
10.Orange Moon
実に美しいラブバラードです。
太陽と月を男性性と女性性のメタファーに使い、穏やかで精神性の高い愛情を描いています。
I'm an orange moon
私はオレンジ色の月
Reflecting the light of the sun
太陽の光を反射して輝く
Many nights he was alone
幾晩も彼は孤独だった
His light was so bright that they turned away
彼の輝きは背を向けたくなるほどまぶしく
And he stood alone
彼は一人で立っていた
Then he turned to me
彼は私の方を向いた
He saw his reflection in me
私の中に自分の姿を見た
And he smiled at me when he turned to me
そして私の方を向くと微笑んだ
Then he said to me
それから彼は私に言った
How good it is, how good it is
なんて素晴らしい、なんて素晴らしい
なんとまぁ美しい詩でしょう!
この少ない表現で豊かな情景が目に浮かびます。
個人的にはエリカ様の書いた詩の最高峰の一つだと思います。
なおこの時期エリカ・バドゥは、同じソウルクエリアンズでラッパーのコモンと付き合っており、コモンはエレクトリック・レディ・スタジオの別の部屋でアルバムを作成していました。
この時制作されたコモンの"Like Waer for Chocolate"(2000)には、"The Light"(これも名曲!)というエリカ・バドゥへのラブレター・ソングが収められており、そこでも太陽と月のメタファーが使われます。
ちなみに"The Light"のMVにはエリカ・バドゥも出演しています。
この曲はジェイムス・ポイザーとエリカ・バドゥのプロデュースです。
ストレートにジャズの様式で作られています。
ピアノとフルートがしっとりとして良いですね。
ドラムはジーノ・ロック・ジョンソン・イグルハート(Gino Lock Johnson Iglehart)です。
この遅いテンポをキープしつつニュアンスを出すのは流石。
この人のドラムはスペースを活かすのが本当に上手いよねぇ。
遠く虫の声が流れており、夜の草原で月に照らされている様が浮かびます。
エリカ様のしっとりとしてちょっとスモーキーなボーカルがたまりません。
あの歌詞もこの歌声あってこその説得力です。
あまりの美しさにいつも涙が出てしまいます。
このアルバムのハイライトとなる名曲です。
11.In Love with You
この曲は、ボブ・マーリーの息子であるスティーブン・マーリーとの共作で、デュエットもしています。
家族に反対されてもお互いを愛している、という切ないラブソングです。
プロデュースは、ジェームズ・ポイザー、スティーブン・マーリー、エリカ・バドゥです。
アコースティックギター主体の引き語りに近いスタイルです。
スティーブン・マーリーのしゃがれた声とスキャットが良いですね、実に味があります。
リラックスしていながら哀愁がある良曲です。
後半、エリカ様が歌いながら「エヘッ」って笑うところが好きです。
バックに遠く鳥の声が聞こえて屋外感があります。
これは前曲から「屋外でのラブソング」というコンセプトを引き継いでいるのでしょうか。
12.Bag Lady
この曲では、傷ついた女性たちに「荷物を軽くして自分を大事しなさい」とやさしく歌います。
"Bag Lady”とはホームレスの女性のことですが、"Bag"(鞄=荷物)は心の重荷であり、物質主義の象徴でもあります。
プロデュースは、ジェームズ・ポイザーとエリカ・バドゥです。
ジャズの雰囲気を持ったソウルで、優しく気怠い歌声が良いです。
なお、Dr.ドレーの"Xxplosive"(1999)がサンプリングで使用されています。
13.Time's a Wastin'
この曲は、若者に「時間を無駄にするな」と歌いいます。
この曲のプロデュースと演奏は下記のメンバーです。
ジーノ・ロック・ジョンソン・アイグルハート(ドラム)
ブレイロン・レイシー(ベース)
ショーン・マーティン(キーボード)
ジェノ・ヤング(キーボード)
エリカ・バドゥ(ボーカル)
ジャズ様式の曲です。
やわらかくアーバンな雰囲気は、お酒を飲みながら聴きたい感じです。
14.Green Eyes
ラストを飾るのは三部構成の失恋ソングです。
アルバム制作中にアウトキャストのアンドレ3000と別れたので、そのことを歌ったといわれています。
この曲のプロデューサーは、ジェームズ・ポイザー、ヴィクター・デュプレ、エリカ・バドゥです。
第一パートはレトロなジャズです。
ノイズと共にレコードが流れている様で、ビリー・ホリディを思わせます。
歌詞の中に「野菜をたくさん食べるから私の目は緑色」とあります。
エリカ・バドゥはベジタリアンです。
「あなたの新しい友達とは何の関係もない」とあるので、彼の新しい彼女はベジタリアンではないのでしょう。
もしかして別れの原因は食事の不一致でしょうか?
My eyes are green
私の目は緑色
'Cause I eat a lot of vegetables
野菜をたくさん食べるから
It don't have nothing to do with your new friend
それはあなたの新しい友達とは何の関係もない
I don't care, I swear
気にしない、誓って
I'm too through with you, I am
もうあなたにはうんざりだ
You don't mean nothing to me
あなたは私にとって何の意味もない
So go ahead and be with your friend
さあ、友達と一緒になろう
第二パートは現代的なジャズです。
不安をコントロールできず、傷ついた様子が歌われます。
I can't remember the last time I felt this way About somebody
誰かに対してこんな風に感じたのはいつ以来か思い出せない
You've done something to my mind
あなたは私の心に何かをもたらした
And I can't control it
そして私はそれを抑えられない
But I don't love you any more
でももうあなたを愛してない
Yes, I do, I think
そうだ、愛してると思う
Loving you is wrong
あなたを愛するのは間違っている
第三パートは現代的なR&Bです。
「戻りたいがもう元には戻れない」と葛藤しつつも、自分に区切りをつける様子が描かれます。
"growing pains"(成長痛)というワードセンスが素晴らしい。
痛みと前を向く姿勢とが、短い言葉で絶妙に表現されています。
I know our love will never be the same
私たちの愛はもう同じにはならないってわかってる
But I can't stand these growing pains
でもこの成長痛には耐えられない
Thank you
ありがとう
レトロなジャズ、ソウル、現代的なジャズ、現代的なR&Bと黒人音楽のレガシーをスタイルに用いながら、HIPHOPの影響を感じます。
このアルバムの最後にふさわしい、集大成となる名曲です。
まとめ
オールドジャズからロックやHIPHOまで、実にバラエティに富んだ作品です。
ある意味実験的なのですが、エリカ・バドゥの存在感が統括し、散漫な印象は全く受けません。
むしろ統一感を感じます。
エリカ・バドゥの歌声は、上手いのはもちろんですが、表情がとても多彩です。
声のトーンに、微妙で複雑な感情を乗せることに長けています。
間違いなく、当代1,2を争う女性ボーカリストであり、ミュージシャンです。
サウンドプロダクションは音数が少なく極めてソリッド。
スペースの使い方が上手く、空間の醸し出す雰囲気が豊かです。
そうした中で多彩な様式の演奏があります。
本当に良いミュージシャン陣でのみ成し遂げられることです。
何度も何度も繰り返し聞きたくなっちゃう名盤です。
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