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「何かあるぞ」から、職員室が動き始めた― 個別最適な学びが学校に広がっていくまで

前回は,取り組んだ単元のテストの平均点が4点上がったところから,
授業観・教師観の転換の始まりとなったことを書いた

校長として異動した学校での取組を綴る……


一人の先生の実践が,職員室に広がった

校長として異動した学校でも,
個別最適な学びのある授業づくりを進めていきたいと考えていた

そのきっかけの一つになったのが,校長1年目,
中学校校区内の学校で持ち回りっている研究会の開催だった

ある学年の先生と一緒に教材研究をし,
個別最適な学びのある授業を計画した
自由進度学習に,取り組んでみようと……

どの教材なら,子どもたちが自分で選びながら学べるのか
あの子が,取り組みやすくするためには,
どんな手立てを,仕組みを入れるのか
どこで自己決定の場面をつくるのか
どのように自己選択を保障するのか
友だちの考えを参照できる場面を,どこに置くのか
つまずいた子どもに,教師がどのタイミングで関わるのか

そうしたことを,学年の先生と一緒に考えた

個別最適な学びとは……

個別最適な学び
言葉で言うのは簡単だ
けれど,実際の授業にするには,教材研究が欠かせない

中には,個別最適な学びや自由進度学習は,
教師が楽をしている
放任学習だ
という方がいるが,
個別最適な学びや自由進度学習への教材準備は,
想像以上に,準備が必要
子どもに任せるためには,
任せられるだけの準備がいるからだ
自分で選べるようにするには,選べるだけの道筋が必要になるからだ
友だちの考えを参照できるようにするには,
参照したくなる場面や手立てをつくる必要があるからだ

その準備を重ねたうえで,個別最適な学びのある授業を公開した

一時間だけには,ならなかった

私にとってうれしかったのは,
挑戦してくれた先生方の存在,
いつもより学習に取り組もうとする子どもたち……
だけではなく!
その授業が,研究会のための一時間で終わらなかったことだった

先生たちは,その後も3回,4回と,
同じような考え方で授業に取り組み続けてくれたのだ

さらに1回目と違ったのは,
子どもたちの実態を見ながら教材を準備してくれた

そして,
自己決定や自己選択の場面をつくる
必要なときには教師が支援する
子どもたちが自分で学びに向かう場面を,
日常の授業の中に積み重ねていった

その結果,テストの平均点が4点,5点と上がっていった

もちろん,ここでも点数だけですべてを語るつもりはない

何かあるぞ?!

けれど,その変化は職員室でも話題になった

「子どもたち,よく動いていましたね」
「うちの学年でも,あんな形でできるかな」
「教材をどう準備したらいいんだろう」

そんな会話が生まれていった

一人の先生の実践を学年で共通理解をし,
別の学年の先生への関心につながっていく……
そして,違う学年でも,個別最適な学びのある授業に取り組み始まった

学校全体が一気に変わったわけではない

でも確かに,授業を見直す動きが広がり始めていた
この取組,何かあるぞ?!と……

外へ学びに行く中で,見えてきたこと

校長2年目になると,私は外へ学びに行くようになった
教頭時代になかなか研究会に参加できず,
土日にセミナーや附属の小学校の授業を見るようにしてきた
平日に学ぶことができる立場になったのだから,
また学ばない校長は,前へは進めない
学んだことを教職員へ,子どもたち還元すべく,
学びに出かけた

石川県加賀市立山代小学校山中中学校へ視察の機会を組合が作ってくれた
委員会事務局ではなく,組合が……だ
もったいなくも,全市の校長にも声をかけてくれた
私は二つ返事で参加希望を出した
その翌月には,神戸市立長田中学校の研究会に参加した

長田中学校の研究会の1回目は私一人で参加した
しかし,百聞は一見にしかず……
2回目,3回目,そして4回目は,本校の教員にも,参加してもらった

校長が見てきたことを職員に伝えるだけでは,どこか一方通行になる
できることなら,同じ場を見て,同じ空気を感じて,一緒に考えたかった

他にも,
愛知県東浦町立緒川小学校
奈良女子大学附属小学校の研究会にも足を運んだ
これは,
奈須正裕先生(上智大学),
藤本勇二先生(武庫川女子大学)のお勧めでもあった

プレーヤーではない,私の役割は?

それは,単に先進校の方法から学び,
真似から入る「守破離」の原則もあったが,
本校で起き始めていた変化が,どの方向へ向かっているのかを
確かめたかったからだ

子どもたちが,自分で学び始めている
教師が,黒板前で教え続けるだけではなく,
必要な子どもに,必要な支援を用意し提供する
学びが,一人ひとりの実態から出発し始めている

この動きは,本当に大切にしてよいものなのか
もっと深めるには,何を見ればよいのか
プレーヤーではない私の役割は何か
それを知りたかった

研究会に参加するたびに,見えてくるものがあった

個別最適な学びとは,
子どもをただ自由にさせることではない

 教材の準備
 選択肢の用意
 他者参照できる環境
 必要なときに教師が関わるための準備
これらの中で,子どもが自分の学びを進めていく……

それは,授業法の話であると同時に,
これらを実現するためには,
子どもの「み方」,
つまり,背景理解と実態把握が重要なのだ


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