【 レビュー 】 アコーストロニック・シンセサイザー × グラニュラー・エフェクト ▶︎ SONICWARE LIVEN Evokə
2025年6月18日、日本の電子楽器メーカーSONICWARE(ソニックウェア)から、LIVENシリーズ第9弾となる新製品
『 Evokə 』(イヴォーク)がリリース
されました。
Evoke:(感情や記憶などを)呼び起こす/喚起する という意味
本製品には、新たに開発された
音作りの核となるシンセエンジン
Acoustronic Flux Oscillator
(アコーストロニック・フラックス・オシレーター)と
グラニュラー・エフェクトが搭載
されています。
ピアノや弦楽器などの生楽器をベースにしたシンセ音と、音を劇的に変化させるグラニュラー・エフェクトを組みあわせることで、
シネマティック・アンビエントや
ポストクラシカルが制作できる
グルーヴボックス
です。
今回は、その第一印象をレビューしていきます。筆者の主観ですので、あらかじめご了承ください。
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【 目次 】
・最初に
・製品の特徴
・魅力的なポイント
▶︎ 筐体カラー
▶︎ 搭載音源
▶︎ エフェクト
▶︎ グラニュラー・エフェクト
▶︎ リバーブ
▶︎ シーケンサー
▶︎ コード機能
▶︎ MIDI
▶︎ 本体
・おわりに
▶︎ グラニュラー・エフェクトは効果が強烈
▶︎ 生楽器を実際の鳴り方に近づける
▶︎ 制約があるからこその魅力
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【 最初に 】
筆者がEvokeを手にした経緯についてですが、SONICWARE様よりプリセットパターン制作のご依頼をいただき、それに伴い製品もご提供いただきました。


発売前に製品の仕様を理解しながら
同時にパターンを
制作していくというのは、
人生で初めての経験
でした。
限られた時間の中で、機材の特徴や魅力を活かしつつ、自身の個性も反映させながら、Evokeに興味がある方にとって音作りの参考になるよう意識して制作しました。
ありがたいことに、本製品には筆者の活動名義「NicaFelt(ニカフェルト)」による
2パターンの公式プリセットを収録
していただいています。Evokeを手にされた際は、よろしければぜひお聞きください。
パターン名:
・ATSE(After the Still Echoes)
・CHNC(ChronaChrono クローナクロノ)
また、パターン制作後には、SONICWARE様から演奏動画制作の依頼もいただきました。
▼ ATSE(After the Still Echoes)
▼ CHNC(ChronaChrono)
収録されている2パターンについては、改めて別記事に解説を書く予定です。
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【 製品の特徴 】

以下、SONICWARE 公式サイトから引用させていただきました。
■ ノスタルジーを誘うアンビエント・ミュージック・ボックス
シネマティック・アンビエントからポスト・クラシカルまで、ドラムレスな4楽器編成が織り成すノスタルジック・アンサンブル
■ 新しいシンセエンジン Acoustronic Flux Oscillator
アコースティック楽器のエッセンスをシンセサイズし、独特なアコーストロニック・サウンドを生み出す新しいシンセエンジン
■ Grain FX:音楽的なグラニュラー・エフェクト
フレーズを極小グレインに分解し、音楽的なグリッチやテクスチャーへと変換・再構築
■ 濃密で奥行きのある多彩な空間リバーブ
ベールに包まれたような空間「MIRAGE」をはじめとする多彩な10種類のリバーブ
■ オールインワン 4トラック・シーケンサー
演奏の録音と音色の変化が記録できる LIVENシリーズ伝統の4トラック・シーケンサー
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【 魅力的なポイント 】
詳しくはメーカー公式サイトを見ていただくとして、ここでは筆者が
とくに魅力的に思ったポイントを抜粋
して以下にご紹介します。

▶︎ 筐体カラー
最初にEvokeを手にした際、製品名のフォントも含めた筐体のカラーリングがとてもかっこいいと感じました。
・ノスタルジックな印象を与える「Evoke」のフォント
・グレーを基調とし、パラメーター名にはゴールドカラー
・最上段の4つのノブはミッドナイトブルーカラー
そして、
すべてのノブは素材の表面に
細かい凹凸模様がある シボ加工 仕様
になっています。

光の当たり方で見え方が変わります
カラーや細部へのこだわりは、Evokeが生み出す音との親和性が高く、
筐体を眺めているだけで
曲のアイデアが湧いてきそうな印象
を持ちました。
▶︎ 搭載音源
新開発シンセエンジンAcoustronic Flux Oscillator(BACKTIDEモジュレーション搭載)
・34インストゥルメント
・20ウェーブ+2ノイズ
4トラック構成、各トラックにアンプ・エンベロープ、フィルター、LFO2基 装備
・同時発音数11ボイス
・ワンフィンガー・コード・モード(16スタイルのコード・セット)
ピアノ、エレピ、チェロ、フルート、ハンドパンなどの生楽器の音を核としたシンセ音に、サイン波やノイズなどのWAVEを重ね、
BACKTIDEモジュレーションによって、音色に繊細な時間的変化を加えていくという音作りが、Evokeの最大の魅力だと感じます。
Acoustronic Flux Oscillator
アコースティック楽器の繊細な音響変化をもつINSTと、倍音や質感の変化を加えるWAVEを融合・シンセサイズすることで、Evoke独自のアコーストロニック・サウンドを実現します。
個人的に感じたのは、Evokeに内蔵されているアコースティック楽器の音は、本物の楽器の音や鳴りを忠実に再現したものというよりも、バックタイドモジュレーションなどを併用し、あくまでシンセサイザー音として扱いやすく設計されているという印象を受けました。
また、グルーヴボックスという立ち位置でありながら、
アコースティック楽器を音作りの中心に据えている点は、他の同種の機材には見られない非常にユニークな特徴
だと感じました。
アコースティック楽器の音が中心ですが、BLENDノブを回し切ることでサイン波などの
WAVE波形のみを
出力することも可能
なため、音作りの幅は非常に広がります。
▶︎ エフェクト

■ グラニュラー・エフェクト
さらに、音を粒状(グレイン)に分解し再構築するグラニュラー・エフェクトが搭載されている点も特筆すべき特徴だと感じます。(LINE INからの音にも使用可能)
このエフェクトを活用することで、例えばアコースティック楽器で作る抒情的(じょじょうてき)な音に、
偶発性を伴うアンビエントな
広がりや奥行き、音の動きを
加えることができます。
※抒情的(じょじょうてき)
感情や気持ちを素直かつ繊細に表現し、
リスナーの心に静かに訴えかけること
パターン制作時に上手く使えば、4トラック以上の音の厚みやユニークなアレンジを生み出すことも可能だと思います。
グラニュラー・エフェクトは、グレインの大きさ、再生方向、ピッチ、フィルイター、タイミング、発生間隔など細かく設定が可能です。
■ リバーブ
リバーブは10種類搭載。内蔵音源に最適化され、
グラニュラーエフェクトとの相性もよく
透明感のある空間に
広がっていくような印象
です。
中でも「Mirage」のリバーブは、他のタイプよりも柔らかく優しい空間を演出してくれるように感じました。

▶︎ シーケンサー
・同時発音数11ボイス
・ロングノート・タイやパラメーターロックにも対応
・最大64ステップ、4トラック構成
・ステップ毎に発音確率を変更可能
・ランダマイズ機能あり
ある程度の長さを持ったパターンを制作するには必要十分なスペックだと思います。また、
ノブの大きさやボタンの配置など
パフォーマンスしやすい設計も魅力
です。

筆者がとくにうれしいのは、
同時発音数11ボイス
というスペック。
グルーヴボックスでコードを打ち込めるというのは、アレンジや全体的な響きの面において非常に大きなメリットになります。
▶︎ コード機能
(白鍵キーボードを押すだけで、簡単にコードを演奏できる機能)
通常のメジャーコード、マイナーコードはもちろん、テンションコードなどもボタンひとつで演奏できる便利な機能が搭載されています。
さらに、
「パッドのように順番にコード進行が
得られる コードパッド・スタイル」も搭載!
されており、シーケンサーに音を打ち込む際、イメージを形にしやすくなっていると感じました。
詳細はEvokeの公式マニュアルをご覧ください。
▶︎ MIDI

・IN/OUTともに通常の5PIN端子
(TRS MIDIではないのがうれしい)
・クロック、コントロールチェンジにも対応
・オートチャンネルあり(外付けMIDIキーボードからの作業に便利)
▶︎ 本体

・LIVENシリーズでお馴染みの27鍵盤
・LINE IN端子搭載(内蔵エフェクト使用可)
・内蔵スピーカー搭載(音の確認がとても便利)
・単三電池×6本で駆動可能(電池駆動時間:アルカリ電池 約6時間/リチウム電池 約10時間)
・重要 約790g(実際に持ってみるととても軽いです)
*筆者はLIVENシリーズのAmbient Øを持っているため、基本的な操作はほとんど同じでしたので、個人的には使いにくさは感じませんでした。
*LIVENシリーズを触ったことがなく、Evokeを購入される方は、基本的な操作を覚える必要がありますが、各ボタンやノブに項目が記載されているため、マニュアルを見なくてもある程度は操作できると思います。
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【 おわりに 】
グルーヴボックスといえば、電子音やドラム音がメインに搭載されていることが一般的ですが、
Evokeにはピアノなど生楽器系の音がベース
になっているという点が、筆者にとっては何よりもうれしい点です。
アンビエントと生楽器の
リバーブの響きはとても相性がよく、
自然と心が落ち着くようなサウンドスケープを作ることができます。
そこにサイン波などのオシレーターを重ねることで音に厚みが生まれ、
BACKTIDEモジュレーションやLFOを活用することで、電子楽器ならではの表現を生み出せます。
アレンジによっては、BACKTIDEモジュレーションの効果をはっきりと体感できない場合もあるかもしれませんが、例えば展開にメリハリをつける場面で音を盛り下げるような演出の際など、効果的な使いどころはいくつもあると感じました。

▶︎ グラニュラー・エフェクトは効果が強烈
グラニュラー・エフェクトは効果が非常に強烈なため、個人的には「全トラックにかける」よりも、
最も効果を発揮させたい
トラックや音に限定して
適用するのがよいと感じました。
(全トラックに大きくかけると、音像がカオスになる可能性があります)
▶︎ 生楽器を実際の鳴り方に近づける
また、ピアノのように音が鳴ったあと自然に減衰していくタイプの楽器では、LFOを調整して、実際の鳴り方に近づける(Decayを作る)のも、音作りにおける有効な手段のひとつかもしれません。
LFO設定例)
・SHAPE → RMP-
・ASSIGN → オシレーターレベル
・TRIG → 1
・depth → 127 or 大きめの値
・rate → Decayの速さ 値が大きい → 減衰が速い
LFOについては同じLIVENシリーズのAmbient Øの記事で詳しく解説しています。記事の内容はEvokeではないですが、Ambient Øと似ている点が多いので、応用できます。

▶︎ 制約があるからこその魅力
4トラックという構成は、打ち込みの際に少なく感じられるかもしれませんが、アンビエントやポストクラシカルのようなジャンルでは、
エフェクトやパラメーターロックを駆使することで、十分にアレンジの幅を広げることができる
と感じています。
筆者としては、音楽がクリエイティブである以上、
ある程度の制約がある方が、
作り手の個性が発揮されやすい
と考えています。
DAWと比べると、できることは確かに限られていますが、
なんとなく 「 音楽をしたい 」 と思った瞬間に
電源を入れ、内蔵スピーカーから音を鳴らし、ノブを回しながら直感的に音作りを始め、アイデアが浮かんだらすぐにシーケンサーに打ち込み、さらに鍵盤で音を重ねていく――
この一連の流れを気軽に行えるのは、Evokeならではの魅力だと思います。
ふとした瞬間に、記憶を呼び起こすように、Evokeで音を作ってみるのもいいかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
▼ シネマティックな楽曲で演奏動画を撮影

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