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【 映像作品の作り方 】 音と静止画で描く「絵本のような物語」 ─ 親指サイズのロボットが旅する物語

SONICWARE LIVEN Evokə (イヴォーク) と BASTL Instruments KASTLE DRUM を組み合わせて演奏動画を撮影し、さらに静止画で構成した映像作品を制作しました。

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「タビロボ」と名付けたこの作品は、

親指の先ほどの大きさしかない
小さなロボットのチャームが、
異空間から現実世界に転生し、
気の向くまま旅をする

――そんな物語です。

動画でもストップアニメーションでもなく、字幕やセリフも入れず、音と映像だけで物語を紡ぐ。まるで

絵本をめくるようなスタイル

にしました。

今回は、この作品をどのように作ったのかをご紹介します。


【 目次 】

・制作の動機

・ストーリーについて

・制作過程
  ⊷●⊷ 音楽を先に、映像はあとから
  ⊷●⊷ 編集と修正の繰り返し

・音楽について
  ⊷●⊷ ポストクラシカル × フォークトロニカ
  ⊷●⊷ ピアノをいかに印象的に響かせるか
  ⊷●⊷ シネマティックな音作りのポイント

・おわりに


【 制作の動機 】

演奏動画を作るうちに、いつしか

「音楽とともに、
物語のある映像作品を
作ってみたい」

と思うようになりました。

とはいえ、脚本を書いて映画を撮影するスキルや機材は自分にはありません。

そこで考えたのは――

好きなカット(静止画)を撮影し、
それを絵本のように構成して、
実際の演奏動画と組み合わせる

という手法です。


【 ストーリーについて 】

本作品では、観る人がそれぞれ自由に解釈できるように、字幕やセリフは一切入れずに構成しました。

蛇足になるかもしれませんが、以下は筆者が制作時に意図した物語の流れです。

① 異空間

舞台は現実とは異なる次元。
トキノマスター(懐中時計)とロボットが何やらテレパシーで意思疎通している。

② 影の木

別の時間軸。
影の木の床を幹にそって歩いていくと鏡があった。
そこに映し出されているのは自分のような、自分ではないような瓜二つのロボット。

やがて鏡の中のロボットが消えると影の木がザワザワし出した。
その時、ロボットは光に包まれどこかへ消えてしまう。

③ 懐かしい音

体内から懐かしい電子音が響いている。。。
気がつくと目の前にシンセサイザーがある。
どんな音が鳴るのか鍵盤を弾いてみると、
懐かしい、でも聞いたことのない電子音が響いて目の前が真っ暗に

気がつくと目の前にさっきとは別のシンセサイザーがある。
植物とつながったその鍵盤を弾くと、空が目の前に広がり、眩(まぶ)しくなった。

④ クリスタルの空間

クリスタルが敷き詰められた空間にワープしたかと思うと、突然クリスタルが光だして、体の感覚がなくなって。。。

⑤ 現実世界(どこかの星)

目を覚ますと葉っぱの上。
茎を伝って地上に降りて、木に登って休んだり、葉の上で風に揺られて地上に落ちたり、気の向くまま散歩しよう。

松ぼっくりにもたれて眠っていると夢を見た。
「トキノマスターにまた会えるかな…」

あくる日、道端で枯れた花に出会ってなんとなく悲しくなったり、空を見上げて「果てはどこかなあ」と思ったり、ランプが灯る「明かりの台地」に登ってみたり、水辺で川に浸かったり。

ふと、真っ暗な洞穴(ほらあな)を見つけたので、入ってみたらやっぱり落っこちた。

⑥ 鏡の部屋

知らない場所で目を覚まして、少し歩いてみると石の上に浮いている鏡を見つけた。

ハシゴを登って鏡の前に立つと、鏡からロボット(自分)がふわっと出てきて。。。

⑦ 光のもとへ

真っ暗な感覚だけ。不安も心配も何もなくて、ただやさしく穏やかな光に包まれているのが全身で伝わる。

どこかの星で散歩できて楽しかったなあ…

遠くでまた懐かしい音が鳴っている。
やがて音は止んで。
そして…


【 制作過程 】

⊷●⊷ 音楽を先に、映像はあとから

まずは音楽を完成させ、演奏動画を撮影しました。その後に物語を考え始めたのですが、思っていた以上に大変でした。

試しに公園へ行き、ロボットのチャームをいろいろな場所に置いて好きな雰囲気になるように写真を撮影。

いい感じにカットは撮れるものの、ストーリーを決めていないので、ただ静止画を並べても物語としてつながりません。

それでも「なんとかなるだろう」と世界観を優先した撮影を続け、

静止画がある程度集まった段階で、
「これとこれは繋がりそう」
という感じで構成を考えながら、

ストーリーを固めて行きました。

ストーリーの骨格ができてからは、必要なカットを追加で撮影する、という流れで進めました。

⊷●⊷ 編集と修正の繰り返し

素材を Final Cut Pro X(FCPX) に取り込み、音楽のテンポに合わせて切り替えながら編集を進めました。

実際の撮影では、ロボットのチャームは自立しないため、セロハンテープやテグスで固定したり、照明も調整しながら試行錯誤の連続でした。

上からテグスで吊って撮影

テグスなどが映り込んだ場合はAI機能で不要部分を削除しました。(一瞬で消せたり、レイヤーに分離できたり便利な時代です)

編集では、

  • 静止画の並びを調整して流れをつくる

  • 色彩を整えて統一感を出す

  • パンやトランジション(画面遷移)で動きをつける

といった作業を何度も繰り返しました。

最初から最後まで通して見直し、細部を修正して…その繰り返し。

わずか7分ほどの静止画主体の作品でもこれだけ大変なのだから、

長編アニメや実写映画制作の労力は
計り知れないと身に染みて分かりました。

今回、途中で心が折れずに無事に作品を完成させることができて、本当に良かったと思います。


【 音楽について 】

⊷●⊷  ポストクラシカル × フォークトロニカ

LIVEN Evokeで柔らかな質感のピアノや電子音をベースに、どこか懐かしさを感じさせる叙情的なサウンドを作り、そこに KASTLE DRUM(以下KD) のグリッチリズムを組み合わせました。

イメージしたのは、

ポストクラシカルと
2000年代初期のフォークトロニカを
ミクスチャー

したようなサウンド・アプローチです。

ポストクラシカルの要素については、大好きで影響を受けてきたアイスランドのアーティスト Ólafur Arnalds(オーラヴル・アルナルズ) の影響があるかもしれません。

彼のアルバム 「Living Room Songs」 に収録されている「Near Light」は特にお気に入りで、何十回も繰り返し聴いてきました。

Ólafur Arnalds - Near Light (Living Room Songs)

⊷●⊷ ピアノをいかに印象的に響かせるか

Evokeはグルーヴボックスでありながら、生楽器ベースの音源が搭載されていることが大きな特徴です。

一般的なグルーヴボックスがドラムやビート中心であるのに対し、Evokeでは雰囲気やメロディーを主体としたアンビエントやシネマティックな曲を作ることができます。

中でもピアノの音は昔から大好きで、ソフトウェア音源をいくつも持っています。

Evokeに搭載されているピアノ音源を使って、

リリカルで感情が動くような
ピアノがメインの曲を作りたい

と思っていました。

最初にピアノのコード進行で曲のエネルギーをつくり、それを包み込むように他のトラックをアレンジ。

Evokeに搭載されたリバーブは質感が美しく、やわらかなピアノの響きをイメージ通りに引き立ててくれました。

ちなみに今回の曲は、Evokeの公式プリセット制作の過程で生まれました。採用には至らなかったのですが、とても気に入っていたため演奏動画用にブラッシュアップしました。

⊷●⊷ シネマティックな音作りのポイント

Evoke での主なトラック構成は以下の通りです。

T-1:パッド
T-2:ピアノ(コード/メロディー/ベース)
T-3:シーケンスフレーズ
T-4:クラリネット(リードメロディー)

シネマティックな音作りを意識しつつ、基本は4トラックでの曲作りになるため、以下の点で工夫しました。

・壮大さを狙うのではなく、室内楽よりさらに少人数のアンサンブルをイメージ

ピアノがコード・メロディー・ベースを兼ねることでシンプルながらも豊かなハーモニーを生み出す

・クラリネットやピアノでリードを鳴らすときはオクターブを変えて、雰囲気を保ちつつアレンジのバリエーションを広げる

・電子音はリアルタイムにパラメーターを変えることで、質感を変化させたり、抽象的な要素を加える

さらに、ポストクラシカルな雰囲気だけでなく、物語を盛り上げる穏やかなビートも加えました。

Evoke本体右上にKDを乗せ、sync同期させながら曲の後半からビートを鳴らすことで

グルーヴ感を出し、
構成にメリハリ

をつけました。

KDの音は一般的なドラムではなく、LoFiな質感でひとつひとつの音色がユニークです。

主張しすぎないビートで
Evokeのトラックとうまく融合

できたと思います。


【 おわりに 】

今回の制作を通して感じたのは、演奏動画としての要素だけでなく「映像作品」として一定のクオリティを保ち、自分のイメージにできるだけ近い形で仕上げることの難しさでした。

一方で、初めてのチャレンジだったからこそ得られた発見も多く、たとえば、

静止画を並べて絵本的な構成にしても作品として成立

することや、実際の演奏シーンを映像の中に組み合わせることで生まれる新鮮さなどです。

次回は続編?という形ではありませんが、

挿入曲や効果音も取り入れ、
もう少し映画作品寄りの表現もできれば

と考えています。機会があれば、コンテストにも挑戦してみたいと思います。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。



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