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対人業務を増やしてと言われても…


新型コロナウイルスが流行し始めたあの日、街からマスクが消えた光景を覚えていますか?

あの時、私たちは誰もが「すぐに元に戻るはずだ」と思っていました。

しかし、あれから数年が経ち、その「いつか」は形を変えて、今も薬局の現場に居座り続けています。

咳止めがない。
痰切りの薬がない。
アセトアミノフェンがない。

新型コロナの流行が終わり、これらの薬の流通は確かに通常に近づいています。


でもそれで終わりではありません。
今度は軟膏容器さえも入りにくい。
相変わらず入らない薬はジャンルを変えて、まだまだたくさんある。

次はまた、思いもよらぬものが入りにくくなるんじゃないか

そう予感するたびに、頭が痛くなります。

これは、薬局で働く私たちが抱える、終わりの見えない「火消し」の物語です。


終わりの見えない火消しの連鎖

今の薬局は、まるで「弾切れの戦場」です。
卸の方々だって、必死に在庫を探してくれています。患者さんだって、薬がもらえない現実に苛立っています。

卸さんも大変、患者さんも大変、そして現場の私たちも大変。

みんなが苦しい。
誰も悪くないのに、誰もが疲弊している。

以前は「一時的な供給不足」だったものが、今では「いつ解消するかわからない日常」になってしまいました。

毎日の在庫確認、代替薬の選定、卸さんへの頭下げ、そして患者さんへの説明。

私たちが積み重ねているのは、ただの在庫準備ではありません。現場の崩壊を食い止めるための「防波堤」を、毎日必死に積み上げているようなものです。


「対物から対人へ」という理想の暴力

昨今、私たちはよくこう言われます。
「薬剤師は対物業務から、対人業務へシフトすべきだ」と。

その言葉を聞くたびに、どうしてもモヤモヤします。

薬が届かない、容器がない、いつ在庫が切れるかわからない。そんな不安定なインフラの上で、どうやって「対人業務」に集中しろと言うのでしょうか。

「対物」という土台が崩れかけている中で、その修復に8割のエネルギーを割かざるを得ないのが、今の薬局のリアルです。

理想を語ることは簡単です。でも、今の現場で「患者さんと丁寧に向き合うこと」とは、目の前の不安な患者さんに「薬の飲み方を説明すること」だけではありません。

「薬がない」という不安を抱えた患者さんの、その不安そのものを受け止めること。

薬が届くまでの間、その患者さんの生活をなんとか守り抜くための、ギリギリの調整を行うこと。


これこそが、今、現場で行われている真の「対人業務」ではないでしょうか。

ホッとする一瞬は、すぐに消えていく

不足していた薬がようやく入ったとき、軟膏容器を確保できたとき。

その一瞬だけ、私たちはホッとします。しかし、それはすぐに消えてしまいます。

なぜなら、その空いたスペースには、また別の「いつの間にか足りなくなったもの」が入り込むからです。

この「安心と不安の入れ替わり」が日常化し、私たちは休息の隙間もないまま、次の調整に走り出します。患者さんからのクレームに頭を下げ、供給不足に肩を落とし、それでも翌日には通常通りあけなければいけません。


この毎日は、果たして正当に評価されているのでしょうか。

あなたは、防波堤を守り抜いている

もし、今、同じように現場で疲弊している仲間がいるなら、どうかこれだけは伝えたいと思います。

あなたが今行っている「在庫管理」は、単なる事務作業ではありません。

それは、患者さんの生活と、薬局というインフラを守り抜くための、極めて高度で尊い「患者ケア」です。

「対人業務ができていない」と自分を責める必要はありません。あなたは、この不安定な時代において、現場という防波堤を死守している、間違いなくヒーローです。

何年か経てば、この時代もまた「あの時は大変だったね」という思い出話になるかもしれません。

でも、今この瞬間を生きている私たちは、どうかあまり自分を追い詰めないでください。

システムは未成熟で、現場は限界です。
それでも今日一日、誰かの不安を一つでも減らせたなら、それは誇っていいことだと思います。

今日も一日、本当にお疲れ様でした。

この「火消し」が終わる日が来ることを信じて、今は少しでも、自分を褒めて上げてください。


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