「すいません、邪魔です!」オアハカの撮影現場で、日本語で叫んだ日。祭りを撮るということ
「すいません!邪魔です!!」
オアハカのパレードで、私は日本語で叫んでいた。
相手は観客ではない。
カメラを持った、ひとりの撮影者だった。
こんにちは、オアハカ在住のさるです。
これは、先日のオアハカのCONVITEと呼ばれるパレードの撮影時の出来事でした。
オアハカのイベント撮影には、多くのソーシャルメディアカメラマンなどが集まります。
大抵は、イベントを主催する機関(オアハカ州政府とかオアハカ市とか)からプレス用のIDカードが渡されます。
仕事として撮影するための正式な許可証。
パレードに沿って移動できるし、正面から撮影することもできる。
ありがたい許可証です。
【私目線】オアハカの撮影現場はこんな感じ
現場のカメラマンたちは、ほぼ顔見知りが多い。
そして、写真をお願いしたダンサーさんの撮影が終われば、次は私みたいな感じで、みんなで譲り合って撮影していることも多い。
逆に、私が声をかけて整列してもらった集合写真をほかのカメラマンさんが撮影することもある。
持ちつ持たれつの関係があるように思う。
日本の撮影現場で聞くような、撮影場所取り合戦で喧嘩になったりしない。
これは、一定の狭い場所でなく、ベストショットがどこからでも撮影できるからだと思う。
パレード移動中も、並走して自分たちの好きなタイミングでシャッターを切っている。
その恩恵だけでも、プレスIDの存在はありがたい。
パレードの先頭正面などは、特に人気が高い。


シャッターチャンスでもある、花かごや張り子の牛の花火などは、カメラのレンズが一点に集中する。
それでもみんな、しゃがんだり、立ち上がったり、左右に広がったりするので、場所取りで険悪になることもない。(と、私は思っている)
なんとなく、撮影現場には暗黙のルールがある。
長時間、パレードの「ど真ん中」で撮影を続ける行為は、なるべく避ける。
初めてプレスIDをもらった人ほど、その距離感を勘違いしてしまうことがある。許可証があることと、何をしてもいいことは違う。

たまに、血の気の多いカメラマンは、注意をする。(私じゃないよ)
たぶん、移動しているパレードのど真ん中に入りこんでも「仕方ない」って容認されているのが「州政府の公式カメラマンだけ」ではないだろうか?
その他のソーシャルメディアのカメラマンは横並びな感じ。
さて、冒頭の話に戻ろう。
今回、フラッシュにそこそこ目立つ大きさのディフューザーを付け、パレードの正面に飛び込んで撮影している人がいた。

プレスIDは付けていなかった。
最初は、どこかのアジア系外国人観光客だと思った。
祭りや参加者への配慮より、自分の写真を優先しているように見えたから。
現場でそういう外国人を、何度も見てきた。
ところがTシャツに「JAPAN」の文字が見えた。
「え?日本人かよ!?」ってなった。
私が今まで出会った日本人の撮影者には、現場への配慮をする人が多かったからだ。
パレードには何組か参加しているので、そのたびに正面に飛び出し、ソフトケースを持った手を斜め上にかかげ、撮影していた。
ついには、目にあまる行為だったらしく
主催者側から注意されていた。
最悪なことに、パレードの動きに合わせて撮影した私の写真にしっかり写りこんでいた。

これは、撮影者として我慢ならなかった。
本来なら、マスクを被った二人の後ろにダンサ・デ・ラ・プルマが入り、オアハカの祭りらしい一瞬を切り取れるはずだった。
しかし、私がシャッターを切った瞬間。
タイミングを合わせたように、その人物が移動してきた。
本来、その写真の中に入るはずではなかったものが、写りこんだ。
なんでパレードのど真ん中に日本人がいるんだよ!!
たぶん、ここで私の中の何かがキレた。
カメラマンなら、最高の一枚は撮影したい気持ちはわかる。
でも、私たちが撮影しているのは、たくさんの人が関わるオアハカの祭りだ。
祭りの写真を「撮影させていただいている」のは私たちの方だ。
自分の作品作りを優先し、彼らの祭りを邪魔する権利は私たちにはない。
ソフトケース付きのフラッシュまで用意して作品として撮りたいなら、そもそも移動するパレード撮影は向いていない。(私見)
パレードの出発前に場所を移し、ダンサーにお願いしてライティングして撮影する方法だってある。
私なら、そういう撮り方を選ぶ。
ちなみに、カルナバルのパレードの時には、ガチのカメラマンがライティングセット組み立てて、出発前に撮影していた。

プレス許可もなく、目立つソフトケースを片手に、パレードのど真ん中を陣取って撮影する行為は、現地への敬意が欠けていると思った。
主催側の注意後も、そんなことが何度か続いた。
ついに、私は。
すいません。邪魔です!!
腹の底から叫んでいた。
その人は、ビックリした顔で、バツ悪そうに移動した。
私もやりすぎたかもと、一瞬反省した。
でも、そんなに大きくないパレードにだって決まりはある。
だからこそ、公式に撮影エリアへ入る人にはプレスIDが発行されている。
現地のカメラマンやソーシャルメディア担当者はいつだって、IDどうなっている?と話をしている。
メキシコの祭りを撮るなら、祭りの空気を変えてしまうような行為はすべきではない。
まして、私たちは部外者であり、外国人なのだから。
先ほどのように、プレス許可を持っていても、パレードのど真ん中で撮影を続けていれば、現場ではあまり良く思われない。
パレードのど真ん中にカメラを抱える人が混じっているのは、他の撮影者にしたら絵的に美しくない。
個人的には、過去の経験から観客の邪魔にならないように心掛けている。
パレードでは、観客の足元にしゃがみ込み、できるだけ視界を遮らないようにしている。
これは、昔、私自身がゲラゲッツァ会場の最前列のチケットを手に入れたときの経験からだ。
せっかく前の席で観られると思ったのに、目の前でプレス関係者が高くカメラを構え続け、舞台が見えないことがあった。
正直、喧嘩になりそうなくらい腹が立った。
と、いうか「のー ぷえど べーる!!(見えない)」と叫んだこともある。
最前列は、お金だけじゃ買えない。
チケットを入手できるかどうか?運とかそういう部分も大きい。
パレードの観客は、炎天下の沿道で開始の1時間半前から並んで待っている。
その場にいれば、その人たちがどれだけ楽しみに待っているかは想像できる。
プレス許可があるからといって、堂々と観客の前を歩いたり、視界を遮るような行動はしたくない。
ちなみに毎回、主催者側からその注意喚起は出されている。
現場への敬意。
カメラマンだから、YouTuberだから、インフルエンサーだからといって、その場で好き勝手に振る舞う権利は私たちにはない。
私たちは、現地の祭りを
「撮ってあげている」のではない。
「撮らせてもらっている」のだ。
現場のルールと、パレードの参加者、地元の見学者への配慮は忘れるべからず。
オアハカで20年暮らしていても、いまだに自分は祭りの当事者ではないと思っている。
あくまでも、「撮らせてもらっている」気持ちは忘れない。
その気持ちを忘れたとき、彼らと私の間には目に見えない壁ができると思う。
被写体との距離感や、その場への配慮は、きっと写真にも表れる。
撮影者が、その場に「なじんでいる」のか、
それとも、その場から「浮いている」のか。
写真を見る人には、意外と伝わるものだと思う。
写真家を名乗ることは誰にでもできる。
でも、祭りの中でどう振る舞うかは、その人の写真観や被写体へのプロとしての姿勢を映し出すと思う。
そして、それはきっと写真にも表れていると感じる。
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