見出し画像

怒りの水柱┃風まかせ文芸部

炭酸水にラムネを落とす。

それはみるみると泡を立て、柱のように立ち上る。

それを見た和恵は呟いた。

「私達の怒りって、ああやって込み上げるんじゃないかしら?」

公園で遊ぶ子ども達は、激しく吹き出す炭酸にはしゃぎ、喜びの声を上げる。

麻子「ちょっとしたことがラムネとなって、怒りを湧き立たせるってことね」

彼女達は今、1つの成長過程の最中にいた。

清美「子ども達は喜びの声だけど、私達は怒りの雄叫びを上げているのねぇ」

【更年期障害】

スーパーで運命の出会いを果たした3人は、更年期で湧き上がる怒りを時折持ち寄っては、語り合うことにしている。

麻子「歯磨き粉のセロハンみたいなの、爪で開けようとしても全然ダメなのよ!迷わずハサミで本体を切ったわ」

和恵「ワイルドねぇ」

清美「分かるわぁ、ピチッとし過ぎなのよね」

誰も歯磨き粉のその先に目は向かない。

和恵「ゆで卵の皮がしっかりくっついて剥けないのよ。腹が立って握り潰したわ」

麻子「気をつけなさいよ、熱いんだから」

清美「身と皮の密着具合が嫌になるのよねぇ」

ゆで卵を水に漬けてみる対処に誰も意識は向かない。

清美「孫がね、チュッパチャプスを開けてって持ってくるの」

「一分で“作った人を呼んで開けてみなさいよおぉ〜”って泣き叫んだわ…」

和恵「お孫さんは怯えなかったかしら?祖母の豹変に」

麻子「あれの開け方は謎すぎるわ」

誰も正しい開け方は調べない。

あちこちに怒りの種となるラムネが常に彼女達の炭酸を刺激し、怒りの水柱を立てる。

更年期障害。

それは、歯磨き粉を本体から切り、ゆで卵を潰し、チュッパチャプスに泣かされる日々。

和恵「来週も狂ってたら集合ね」

麻子「もちろん!」

清美「ネタを覚えておくわね〜」

それを乗り越える力は、仲間と共有し合うこと。

今日も3人の狂気の怒りは共感と共に鎮まった。


お読みいただいて、ありがとうございました。本作は風まかせ文芸部さんの企画に参加しております。

彼女達の運命、スーパーでの出会いはこちら💖


いいなと思ったら応援しよう!