FUJIFILM X-T5 → X-M5への移行で、失ったもの・得たもの
「4000万画素の高画素機から、もっと小さいカメラに買い替えました」
こう聞くと、多くの人は「スペックダウン」を想像すると思います。実際、僕自身もX-T5からX-M5に移行すると決めたとき、心のどこかで「これは後退なんじゃないか」という迷いがありました。
でも、実際に移行を終えて数ヶ月経った今、はっきり言えることがあります。これは後退ではなく、再編成でした。
今日は、X-T5という素晴らしいカメラを手放し、X-M5を迎えるに至った経緯と、その過程で「失ったもの」と「得たもの」を整理してみようと思います。
そもそも、なぜX-T5を買ったのか
話は2025年6月に遡ります。当時の僕はNikon沼にどっぷり浸かり、またフルサイズ信仰も強い状態にあってZ5とZ5Ⅱの2台を運用していました。
きっかけはマップカメラの1本の記事でした。「Z50Ⅱ×XF35mm F1.4 R」という、NikonボディにFUJIFILMのレンズをマウントアダプターで装着するという、いわゆる「禁断の組み合わせ」を扱った内容でした。FUJIFILMの神レンズと呼ばれるXF35mm F1.4 Rの評判は以前から知っていて、気になっていたところにこの記事を読んでしまったのが運の尽きでした。
「一度実物だけ見てみよう」とヨドバシに寄ったのが、そもそもの間違いでした。横に並んでいたX-T5を握った瞬間の感触、そして「軽さ」に完全にやられてしまいました。
当時使っていたNikon Z5Ⅱ+Z24-120mm f/4 Sの組み合わせは、合計約1.4kg。素晴らしい描写をする一方で、子連れでの持ち出しには正直しんどい重さでした。それに対してX-T5は、レンズを含めても800gを切る軽さ。しかも4000万画素超の高画素機というスペックまで手に入る。「これはアリなのでは」と、帰宅後に中古美品の標準ズームキットをポチってしまいました。
X-T5は期待通りの写りでした。FUJIFILMらしい自然な色味、軽快な取り回し。これが僕とFUJIFILMの、本格的な出会いでした。

ガチカメラ2台問題
X-T5を導入してから約9ヶ月、僕の防湿庫にはNikon Z5とFUJIFILM X-T5という、2台の「ガチカメラ」が並んでいました。
ここでいう「ガチカメラ」とは、GRⅢxのような気軽なコンデジとは違って、レンズ交換が前提で、ファインダーを覗きながら、じっくり撮影に向き合うためのカメラという意味です。
問題は、この2台を並行して運用するのが想像以上に難しかったことでした。休日に持ち出すカメラを選ぶとき、毎回「今日はどっちにしよう」と悩む。結果的に、使い慣れたNikon Z5とオールドレンズの組み合わせ、あるいは気軽なGRⅢxを持ち出す回数が圧倒的に多くなり、X-T5は防湿庫でお留守番することが増えていきました。
高性能なカメラを持っているのに、実際に使う頻度は他のカメラの方が高い…これは、これまでの遍歴で何度も繰り返してきた失敗パターンでした。Zfのときも、R6 MarkⅡのときも、同じ轍を踏んでいました。
「ガチカメラは1台に集約しよう」
そう決めたのが、X-T5を手放す直接のきっかけでした。

なぜNikonではなくFUJIFILMを残す方を選ばなかったのか
ここで一つ、疑問が浮かぶかもしれません。「じゃあNikon Z5の方を手放せばよかったのでは?」と。
実はそちらの選択肢も真剣に検討しました。でも最終的には、Z5をメイン機として残すことにしました。理由は、Z5がすでに「オールドレンズ母艦」として、僕の撮影スタイルに深く根付いていたからです。
そこで出した結論が、「Z5にNIKKOR Z24-70mm F4 Sという標準ズームを新たに導入し、オールドレンズ専用機から、通常使いもできるメイン機へと役割を拡張する」というものでした。

つまりこれは、FUJIFILMからNikonへの回帰ではなく、Nikonをメイン、FUJIFILMをサブという役割分担への再編成でした。
失ったもの:4000万画素という安心感
X-T5を手放して、失ったと感じるものがあります。
4000万画素という圧倒的な解像度は、トリミング耐性の高さや、大判プリントへの対応力という意味で、確かな安心感がありました。「とりあえず高解像度で撮っておけば、後でどうとでもなる」という余裕は、X-M5では得られません。
また、X-T5のダイヤル式の操作系も機会好きの心をくすぐるものでした。絞り、シャッタースピード、ISO感度を、それぞれ独立したダイヤルで直感的に操作できる楽しさは、正直に言うと恋しくなる瞬間があります。
これらは、スペック表で比較すれば明らかな「後退」です。ここは正直に認めておきたいと思います。
得たもの:役割が明確になった気楽さ
一方で、X-M5に移行して得たものも、決して小さくありません。
まず、フィルムシミュレーションという、FUJIFILMならではの体験を手放さずに済んだことです。X-T5で気に入っていた撮って出しの色作りは、X-M5でもそのまま楽しめます。むしろ、XF23mm F2.8という軽量な単焦点を付けっぱなしにする運用にしたことで、「コンデジ感覚で使えるフィルムシミュレーション機」という、新しい立ち位置が生まれました。(ただし現在もGRⅢxと熾烈な戦いを繰り広げている)

そして何より大きいのが、Z5とX-M5、それぞれの役割がはっきり分かれたことです。
Z5はNIKKORレンズとオールドレンズを使った、じっくり系のメイン機。X-M5はXF23mm F2.8を中心とした、気軽なスナップ機。この2台は、もう「どっちを持ち出そうか」と競合しません。むしろ「今日はじっくり系の気分だからZ5」「今日は身軽にX-M5」と、自然に使い分けられるようになりました。
これは、X-T5とZ5を両方「ガチカメラ」として運用していた頃には、絶対に得られなかった感覚です。
レンズも整理して、身軽になった
この移行に合わせて、Xマウントのレンズも整理しました。XF23mm F1.4 R LM WRとXF16-55mm F2.8 R LM WR Ⅱを手放し、残したのはXF23mm F2.8とXF35mm F1.4 Rの2本だけ。
特に16-55mm F2.8は、X-M5のボディサイズには明らかに不釣り合いな大きさでした。「このレンズはもうX-M5には使わないだろう」という判断で、思い切って手放しました。
結果として、ボディの台数自体は変わっていませんが、レンズの本数は1本減りました。「たくさん機材を持っていても、結局使う組み合わせは限られている」ということに、この整理を通じて改めて気づかされました。
スペックの後退は、必ずしも「損」ではない
X-T5からX-M5への移行は、スペック表だけを見れば間違いなく「ダウングレード」です。画素数は下がり、操作系の自由度も下がりました。
でも、実際に使ってみて分かったのは、「使われないハイスペック」よりも、「役割がはっきりした、ほどよいスペック」の方が、結果的に満足度が高いということでした。
4000万画素で撮った写真を防湿庫の中で眠らせるより、2000万画素台のX-M5で気軽に撮った写真の方が、実際に日の目を見る枚数は圧倒的に多くなりました。スペックの数字は、実際に使われて初めて意味を持ちます。使われないスペックは、ただの「宝の持ち腐れ」でしかありません。
最後に
X-T5は、僕にFUJIFILMという新しい世界の扉を開けてくれた、大切なカメラでした。手放したことに後悔はありませんが、感謝の気持ちは今でも変わりません。
そしてX-M5は、その扉を開けたままにしつつ、Z5との役割分担という新しい体制を完成させてくれた1台です。
カメラの買い替えは、必ずしも「上位機種への一直線のアップグレード」である必要はありません。時には、あえてスペックを落とすことで、システム全体としての満足度が上がることもある。X-T5からX-M5への移行は、そのことを僕に教えてくれました。
「気軽にフィルムシミュレーションを楽しむ」ために選んだX-M5。間違いなく、今の僕にとってベストな選択肢になっています。

それでは。
