裁量労働制の見直し(対象拡大)議論で労使対立したら公益代表の意見が重要!
公労使同数(公益代表<学者等>委員と労働側委員と使用<経営>側委員が同数)の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会で裁量労働制の見直し(対象拡大)について労使意見が対立したときは労働法学者や労働経済学者の公益代表の意見が重要になります。
報道は労使の意見ばかり報じますが、公益代表の意見を報じていません。ですから1カ月以上遅れて公開される労政審・労働条件分科会の議事録(労働市場改革分科会の議事録はもっと早く公開)では公益代表の意見に注目すべきです。
3月の労働条件分科会で公益代表委員は「働きやすい環境や柔軟性のある働き方は、従業員に裁量を与えれば、裁量労働制を導入しなくても可能」と発言。今回議事録が公開された4月の労働条件分科会では「年収が高いのだから多少労働時間が長くてもいいのではないか、そんな感じの誤解が生じてしまう」と意見。
裁量労働制の対象拡大も議論
今年(2026年)4月17日に労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会が開催されました。
議題は(1)2024年度 年度評価について、(2)「労働組合法施行令の一部改正」および「労働基準法施行規則の一部改正」について(報告事項)、(3)労働市場改革分科会について(報告事項)。
しかし、厚生労働省が公開したばかりの議事録を読むと、裁量労働制の見直し(裁量労働制の対象拡大)についても議論されています。
この議論の中で、とくに使用者代表の鈴木重也・日本経済団体連合会(経団連)労働法制本部長と公益代表の黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授の裁量労働制の対象拡大をめぐる意見を紹介します。
使用側委員の経団連(労働法制本部長)意見
今年(2026年)4月17日に開催された労働政策審議会・労働条件分科会の議事録によると、鈴木委員(鈴木重也・日本経済団体連合会<経団連>労働法制本部長)は「(裁量労働制適用者の)処遇に関しましては、厚生労働省の調査(2019年に行われた裁量労働制実態調査)に基づいて、有識者による二次分析も行われており、その結果によると、(裁量労働制)適用労働者は非適用労働者に比べまして年収が13%高いといったような分析結果もあり、過半数労働組合がある企業など適正に運用されている企業であれば、制度適用におきまして適用対象者の前年等の残業代を予算化し、それを適用後は毎月の裁量労働制手当として支給するというような処遇の確保ということにも最大限工夫もしていると理解しており、今後どういった濫用防止策として考えていくかということを考えたときの1つの参考にもなり得るものではないかと思っています」
*経団連の鈴木委員の意見の中に「過半数労働組合がある企業」とありますが、これは経団連が「過半数労働組合との協議を要件として、裁量労働制の対象業務を一定程度拡大できるようにすべき」と主張しているため。
公益代表委員の労働経済学者(大学教授)意見
また、4月17日の労働政策審議会・労働条件分科会の議事録によると、黒田委員(黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授鈴木委員)は「先ほど二次分析に関する言及が委員からございましたので、二次分析に関わった者として少しだけ補足をさせていただければと思います。先ほど、適用の労働者のほうが非適用の労働者よりも年収が平均で13%高いとの結果が出ているという御発言がございました。この13%という数字自体はそのとおりなのですが、この先にも分析をしておりますので、その点を補足させてください」と述べています。
また黒田委員は「まず、勤め先の企業についての違いをコントロールすると、この13%という数字は7.8%の差まで縮まります。さらに適用労働者のほうは非適用労働者よりも長めに働いていますので、その労働時間を加味した上で時給換算すると、実は適用労働者と非適用労働者の時給の差は1%ぐらいにまで縮まるという結果になっています」と、つづけて発言しています。
そして黒田委員は「つまり、こうした要因を考慮すると両グループの差はどんどん縮まっていくということです。13%という数字だけがひとり歩きしてしまいますと、13%も年収が高いのだから多少労働時間が長くてもいいのではないか、そんな感じの誤解が生じてしまう可能性もあります」と指摘しています。
*黒田委員は労働経済学者で2019年に行われた裁量労働実態調査結果の分析を行っています。
裁量労働制実態調査結果の分析は慎重に
高市早苗総理が裁量労働制の見直し(裁量労働制の対象拡大)を加速するよう厚生労働大臣に指示をして、厚生労働省は今年(2026年)7月~8月に裁量労働制実態調査(再調査)を行う方針です。
その後、調査結果の分析が行われますが、慎重で緻密な、そして的確な調査結果分析を行っていただきたいと思います。
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