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【利益相反管理実務(24)】連携先をどう確認するか─国際連携と大学発ベンチャーに共通する相手方確認の実務

本シリーズ(第23回・第24回)では、研究セキュリティをテーマに、
 ・大学に求められるリスク管理の考え方とデューデリジェンス(第23回
 ・連携先を具体的にどう確認するかという実務の手順(第24回, 本稿)
の二段階で、国際連携や大学発ベンチャーを健全に進めるための組織ガバナンスについて考えます。

第23回では、研究セキュリティをめぐる日本の政策と、大学に求められる基本的な考え方を確認しました。
今回はその実務編として、国際連携や大学発ベンチャーとの関係で、連携先をどのような順番で調べ、どこまで確認すべきかを整理します。

研究セキュリティの実務では、相手方を抽象的な怪しさで警戒するのではなく、どのような法人で、誰が関与し、どこまで研究データや知財にアクセスし得るのかを確認することが重要です。
これは、海外企業との連携だけでなく、大学発ベンチャーとの関係でも同じです。(資料1, 2)

本稿では、抽象論にとどまらず、日本企業や海外企業について、どのサイトで何を確認するのか、公開情報で分からないことを大学実務としてどう補うのかを、順を追って見ていきます。


1.なぜ連携先確認が必要なのか

内閣府の「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」は、国際共同研究等に際して、相手方等が「信頼できるパートナー」であることを確認し、安心して研究に取り組めるようにすることの重要性を示しています。(資料1)

文部科学省の「大学等の研究セキュリティ確保に向けた文部科学省関係施策における具体的な取組の方向性」も、研究セキュリティ確保の取組は、ゼロリスクを目指したり幅広い研究に制限を設けたりするものではなく、研究や国際連携を健全に前に進めるために、その際に生じ得るリスクを適切な範囲で「軽減」するために行うことを原則としています。
また、人種や国籍等による差別はあってはならないことも明示しています。(資料2)

ここで大切なのは、連携先の確認は相手方を疑い連携を止める目的ではないという点です。
大学実務における相手方の確認は、何が分かっていて、何がまだ分からないのかを整理し、必要な低減策につなげるためのものです。
研究テーマ、データや試料へのアクセス、知財への関与、契約条件、関係者の属性を踏まえて、どの程度の管理が必要かを判断する前提として確認すべきことがあります。(資料1, 2)

この視点は、国際連携にも大学発ベンチャーとの連携にも共通します。
海外企業との連携では、相手方の実在、事業の実態、親会社や主要株主、制裁・規制上の懸念の有無を確認する必要があります。
大学発ベンチャーでは、これに加えて、大学の知財、教員の兼業や役員兼務、大学認定、外部投資家との関係が重なりやすく、しかも問題が起きたときには大学のレピュテーションにも跳ね返りやすいという事情があります。

だからこそ、どちらも「大学の外にある別主体」として確認する必要があります。
(資料1, 3)

2.まず何を確認するのか

相手先の確認は、順番を決めて淡々と進めると実務的なフローに乗せやすいです。
相手先の法人としての実態の確認が不十分なまま次の段階に進むと、そもそも別の法人を見ていた、ブランド名と契約主体を取り違えていた、研究所名と運営法人名が一致していなかった、といった初歩的な誤りが起きやすくなります。
大学の実務では、営業上の名称ではなく、実際に誰と契約し、誰が研究成果やデータや施設・設備にアクセスし得るのかを、法人単位で押さえる必要があります。

(1) 基本属性を確認する
(2) 事業実態を確認する
(3) 誰が影響力を持つのかを確認する
(4) 制裁・規制上の懸念がないかを確認する

(資料1)を参考にした筆者まとめ

(1)基本属性を確認する

正式名称、所在地、法人格、設立日、代表者、登録番号、公式サイトといった基本属性を確認します。
ここが曖昧なままでは、その後に調べる事業内容や資本関係も、別の法人について見てしまうおそれがあります。
まずは、契約書や申請書に記載された相手方が、どの法人を指しているのかを正確に特定することが出発点です。
(資料1)

(2)事業実態を確認する

その会社が何をしているのかを確認します。
研究開発や製品・サービスの内容、拠点、提携先、経営陣などを見て、大学との連携内容と整合しているかを確認します。
会社概要だけでなく、研究開発分野、ニュースリリース、拠点情報なども併せて見ることで、その法人が実際にどのような活動をしているのかが見えやすくなります。
あわせて「財務状況」を確認し、財務の健全性から組織の継続性や研究の遂行能力に懸念がないかを見極めます。

(3)誰が影響力を持つのかを確認する

また、親会社、主要株主、役員の派遣、関連会社、政府系ファンドや国有企業との関係など、誰が影響力を持つのかを確認します。
資本構成を詳細に把握することで、背後の影響力(親会社や株主)の実態を可視化することが目的です。
外国資本かどうかを大づかみに見るのではなく、誰がその法人に影響力を持ち、誰に研究データ、知財、設備、試料へのアクセスが及び得るのか、という点を確認します。(資料1)

(4)制裁・規制上の懸念がないかを確認する

さらに、制裁や輸出管理上の懸念先に当たらないかを確認します。
名称が似ているだけで直ちに同一主体と決めつけるのは適切ではありませんが、少なくとも、相手方や親会社、関連会社が制裁・規制上のリストに載っていないかを見ておくことは、国際連携の実務において重要です。

(5)日本企業であれば、まずどこを見るのか

日本の企業であれば、まず国税庁の法人番号公表サイトで、①商号又は名称、②本店又は主たる事務所の所在地、③法人番号という基本3情報を確認できます。
ここで、契約書や申請書に記載された法人が実在するか、名称や所在地に齟齬がないかを確認するのが出発点です。
さらに、登記情報を確認したい場合には、登記情報提供サービスで、登記所が保有する登記情報をインターネット上で確認できます。
(資料4, 5)

相手方が上場会社であれば、金融庁の EDINET と、日本取引所グループの適時開示制度・TDnet を見るのが基本です。
EDINET では、有価証券報告書、有価証券届出書、大量保有報告書等を確認でき、事業内容、財務内容、大量保有者の状況などを追うことができます。
日本取引所グループの適時開示制度では、重要な会社情報が広く、かつタイムリーに開示されるため、最近の資本政策やガバナンス変更、重要な提携や組織再編の有無を確認する手がかりになります。
(資料6, 7, 8)

大学発ベンチャーでも考え方は同じです。
大学が認定しているからといって、確認しなくても問題ないというわけではありません。
むしろ、大学に近い存在に見えることで安全であるかのように扱われて、実態の把握がされていないケースも散見されます。
大学とは別主体として名称、所在地、代表者、事業内容、出資者、役員兼務の有無を確認し直す必要があります。
大学に近いからこそ、大学として社会に説明できる状態を担保する必要があります。
(資料1, 3)

3.海外企業の背景は、どのサイトで何を見るのか

(1)まずは現地の公的レジストリで実在確認をする

海外企業の背景確認で最初に見るべきなのは、会社案内や営業用の資料ではなく、その国の公的な企業登録簿・商業登記簿です。
各国の公的レジストリは、国ごとに制度や名称が異なりますが、まずは当該国の政府サイトで、会社情報を検索できる公式な企業登録簿・商業登記簿を探すのが基本です。
EU域内であれば、European e-Justice Portal の"Find a company"(Business Registers Interconnection System, BRIS)から、EU各国、リヒテンシュタイン、ノルウェーの企業登録簿に接続できます。
英国であればGOV.UKのCompanies House、米国の上場企業であれば 米国証券取引委員会(SEC)のEDGAR(Electronic Data Gathering, Analysis, and Retrieval)が代表的な入口です。
(資料9, 10, 11)

実務上は、検索エンジンで会社名だけを探すのではなく、国名+company register / business register / commercial register / corporate registry といった語で、政府機関や公的ポータルのサイトにたどるのが安全です。
加えて、法人識別子(Legal Entity Identifier, LEI)が分かる場合には、Global Legal Entity Identifier Foundation(グローバルLEI財団, GLEIF)の LEI Search を使って法人名や所在地の照合を行う方法もあります。
ただし、最終確認は、各国の公式レジストリや公的開示資料で行う必要があります。(資料12, 13)

たとえば英国の Companies House では、登録住所、設立日、役員、過去の会社名、提出書類(filings)などを確認できます。(資料10)

したがって、契約書や申請書に書かれた相手方が実在する法人か、名称や住所に齟齬がないか、過去に社名変更がないかを、まずここで確認するのが基本です。

(2)上場企業なら、公的開示資料で事業内容と親子会社関係を見る

相手方が上場企業であれば、公的開示資料で確認できる範囲が広がります。米国の上場企業であれば、SEC の Search Filings から EDGAR の提出書類を検索できます。
SEC は、SEC.gov と EDGAR の検索窓口を提供しており、会社名や提出書類を起点に検索できます。

ここで実務上見るべきなのは、会社名や所在地だけではありません。
年次報告書等では、事業内容、主要子会社、役員、主たる事務所、重要なリスク、最近の提出書類を確認し、会社公式サイトの説明と整合しているかを確認します。
会社公式サイトには研究開発や提携の情報が分かりやすく載っていますが、親会社・子会社関係や正式な書類を提出している主体は、公的開示資料の方が確認しやすいです。(資料11)

(3)企業公式サイトでは、何を確認するのか

企業公式サイトは、公的なレジストリや開示資料の代わりではありませんが、事業実態を確認するうえで重要です。
確認すべきなのは、会社概要、グループ会社一覧、拠点一覧、製品・サービス、研究開発分野、経営陣、ニュースリリース、提携・投資の公表です。
ここで特に重要なのは、ブランド名、研究所名、営業上の名称と、契約主体となる法人名が一致しないことがある、という点です。
大学実務では、「有名な研究所だと思っていたら、実際の契約主体は別の法人だった」ということが起こり得るため、公式サイトの情報も法人名に引き直して読む必要があります。

大学発ベンチャーでも、この点は同じです。
大学発ベンチャーのウェブサイトには、技術内容や共同研究実績、大学との関係が分かりやすく書かれていることがありますが、そこに書かれている説明と、実際の法人名、役員構成、資本関係が一致しているかは別問題です。
大学に近いからこそ、公式サイトの印象だけで判断せず、法人情報や役員情報に戻って確認する必要があります。

(4)制裁・懸念先リストはどこで確認するのか

相手企業の背景確認では、制裁や取引制限の対象になっていないかも確認した方が安全です。
米国財務省 OFAC の Sanctions List Search は、名称検索の入口になります。
米国政府の Consolidated Screening List は、複数の政府リストを横断的に確認するための入口として提供されています。
EUでは、EUによる制裁措置を国別やテーマ別に確認できる公式なマップとしてEU Sanctions Mapが公開されています。
(資料14, 15, 16)

ただ、ここで大事なのは、名称が似ているからといって直ちに同一主体と決めつけないことです。
制裁・懸念先リストは入口として有用ですが、名称一致だけで判断せず、国、住所、登録番号、事業内容を突き合わせて確認する必要があります。

4.公開情報で分からないことを、大学はどう補い、どう使うのか

ここまで確認しても、公開情報だけで全部が分かるわけではありません。
特に非公開会社やスタートアップでは、株主保有比率、実質的支配関係、優先株の内容、拒否権、関連会社へのアクセス範囲などは、外から見えにくいことが多いです。
大学発ベンチャーはまさにその典型で、大学が認定していても、外部投資家の増加や資本政策の変更によって、大学が当初想定していた相手方像と実態がずれていくことがあります。

そのため、大学の実務では、公開情報で確認できた範囲と、公開情報では確認できない範囲を切り分けて記録することが重要です。
内閣府の手順書も、通常把握し得る情報を基礎にリスク確認・評価を行い、必要な情報が得られない場合には、必要に応じてリスク軽減措置を行う考え方を示しています。(資料1)
つまり、「公開情報ではここまで確認できた」「ここから先は相手方の申告に依拠する」と明確にしてよい、ということです。

実務上は、質問票、申告書、ヒアリング、契約上の表明保証、重要変更時の通知義務で補うのが現実的です。
たとえば、親会社・最終親会社(その上に別の支配主体が存在しない最上位に位置する親会社, Ultimate Parent Company)の有無、主要出資者の有無、政府系ファンドや国有企業からの出資の有無、役員派遣の有無、研究データや知財にアクセスし得る関連会社の有無、資本政策や支配関係に重要な変更があった場合の通知義務などは、大学として確認項目にしやすいところです。(資料1, 3)

ただし、何でも細かく聞けばよいわけではありません。
内閣府の手順書と文部科学省の方向性文書は、ゼロ・リスクを求めるのではなく、リスクの程度に応じた合理的な対処を前提にしています。
したがって、一般的な学術交流と、未公開データ、重要技術、ソースコード、試作品、患者由来データなどを扱う連携とでは、確認の深さは当然変わります。
現場では、「何にアクセスするのか」「何が移転されるのか」「相手方の変更が大学に与える影響はどの程度か」に応じて、リスクベースのアプローチをとるのが現実的です。(資料1, 2)

最後に重要なのは、確認した情報を「調べて終わり」にしないことです。
連携先確認の結果は、契約相手の確定、秘密情報の範囲設定、データや試料へのアクセス制限、知財条項の調整、部局から本部へのエスカレーション、継続的なフォローアップにつなげる必要があります。
文部科学省のヒヤリハット事例集も、研究インテグリティ対応には多くの部署が関連し、適宜連携して対応する必要があるとしています。(資料3)
法務、産学連携、知財、輸出管理、研究支援、利益相反管理が、相手方確認の情報を持ち寄れるようにしておくことが重要です。

本稿で挙げた公的レジストリ、公的開示資料、制裁・懸念先リストは、その入口として使えるものですが、最後は大学自身が、その情報をどう判断につなげるかが問われます。(資料1, 2, 3)

5.まとめ

連携先の確認は、相手方を排除するためではなく、大学が連携を適切に進めるための判断材料をそろえることです。
確認すべきなのは、相手方がどのような法人で、どのような事業を行い、誰が影響力を持ち、研究データや知財にどこまでアクセスし得るのかという点です。

実務上は、先方の基本属性、事業実態、資本関係・影響力、制裁・規制上の懸念の有無を、順に確認していくことが重要です。
日本企業であれば法人番号公表サイトや EDINET、海外企業であれば各国の公的レジストリや公的開示資料が、その出発点になります。

もっとも、公開情報だけで全てが分かるわけではありません。
だからこそ、大学としては、確認できた範囲と確認できない範囲を切り分けたうえで、申告、ヒアリング、契約条項、通知義務などで補い、その結果を契約、アクセス制限、知財管理、継続的な見直しにつなげる必要があります。

関連する連載回

連携先の確認は、大学が説明可能な判断を行うための基盤的な実務で、第14回で整理したアカデミアの説明責任(アカウンタビリティ)にも関わります。

参考資料(本文中の資料番号に対応)

  1. 内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局. 研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書. 内閣府. 2025. https://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/integrity/yushikisha/guidelines_v1.pdf

  2. 文部科学省. 大学等の研究セキュリティ確保に向けた文部科学省関係施策における具体的な取組の方向性. 文部科学省. 2024. https://www.mext.go.jp/content/20241218-mxt_kagkoku-000039402_1-1rrr.pdf

  3. 文部科学省. 研究インテグリティヒヤリハット事例集(研究インテグリティ確保の観点を中心とした大学等における研究活動のリスク事例集). 文部科学省. 2025. https://www.mext.go.jp/content/20250331-mxt_kagkoku-000019002_1.pdf

  4. 国税庁. 国税庁法人番号公表サイト. 国税庁. 2026閲覧. https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

  5. 一般財団法人民事法務協会. 登記情報提供サービス. 2026閲覧. https://www1.touki.or.jp/

  6. 金融庁. EDINETについて. 金融庁. 2026閲覧. https://www.fsa.go.jp/search/20130917.html

  7. 日本取引所グループ. 適時開示制度の概要. 日本取引所グループ. 2025. https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/overview/index.html

  8. 日本取引所グループ. TDnetの概要. 日本取引所グループ. 2022. https://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/tdnet/index.html

  9. European Commission. Business registers – search for a company in the EU. European e-Justice Portal. 2025. https://e-justice.europa.eu/topics/registers-business-insolvency-land/business-registers-search-company-eu_en

  10. UK Government. Get information about a company. GOV.UK. 2026閲覧. https://www.gov.uk/get-information-about-a-company

  11. U.S. Securities and Exchange Commission. Search Filings. SEC. 2026閲覧. https://www.sec.gov/search-filings

  12. Global Legal Entity Identifier Foundation. LEI Search. GLEIF. 2026閲覧. https://search.gleif.org/

  13. Global Legal Entity Identifier Foundation. About LEI Search. GLEIF. 2026閲覧. https://www.gleif.org/en/lei-data/lei-search/about-lei-search

  14. U.S. Department of the Treasury. OFAC Sanctions List Search. U.S. Department of the Treasury. 2026閲覧. https://sanctionssearch.ofac.treas.gov/

  15. International Trade Administration. Consolidated Screening List. U.S. Department of Commerce. 2026閲覧. https://www.trade.gov/consolidated-screening-list

  16. European Union. EU Sanctions Map. European Union. 2026閲覧. https://www.sanctionsmap.eu/

2026年4月12日投稿
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