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『自分らしさに向かって(仮)』#5

◀︎『自分らしさに向かって(仮)』#4

ちょうど4件目の猫探しの聞き取りを終えたところで、3匹目の猫を学院に届けて帰ってきたルナと出会った。

「あっ、ビリー。3匹目の猫を先生に渡して、報告してきたよ!」

「4件目のお宅はどうだった?」

「4件目に該当しそうな猫は、まだちょっとよくわかんないんだ」

4件目の猫も、おそらく2件目、3件目と同じ場所にいる。

ビリーの《気配察知》は、そう示していた。

けれど、少し引っかかった。

依頼書に書かれていた毛色や体格の条件を、頭の中で1つずつ外していく。

ただ「猫」として、気配を拾い直した。

その瞬間、ビリーは声を上げそうになった。

猫の気配が、1つの場所に固まっている。

1匹や2匹ではない。
20匹以上。

その場所は、フェリアの北西にある小高い丘の上――フェリス男爵家の居城だった。

フェリス男爵家は、この地方都市フェリアの領主であり、ビリーたちが通うフェリア総合学院の実質的なオーナーでもある。

下手に探りを入れて睨まれれば、学院に居づらくなる可能性があった。

だから、今はまだ動けない。

ルナにはまだ話せない。

そう判断して、ビリーは5件目のお宅へ向かうことにした。

5件目の依頼は、近所でよく見かけていた猫を探してほしい、というものだった。たまに餌をあげていた猫が、最近ぱったり姿を見せなくなったらしい。

フェリアでは、猫を家の中で飼う習慣はあまりない。

玄関のドアの下には、猫が頭で押して出入りできる小さな入口があり、猫はお腹が減ると、決まった家にふらっと入り、餌をねだる。食べ終わると、また外へ出ていく。たまに、その家の人たちとじゃれつく。

それくらいの、ゆるい繋がりだった。

依頼人のモーリスさんも、近所でよく見かける猫に、たまに餌をあげているだけだと言った。

聞き取りの途中、ビリーは机の上に目を留めた。

ビリーたちが学院で出している《無料探し物依頼受付中!》のチラシ。

それに混じって、いくつもの求人のチラシが、乱雑に置かれていた。

部屋の空気は、どこか乾いていた。

物が少ないわけではない。けれど、必要なものから少しずつ失われていったような、そんな感じがした。

モーリスさんは、猫を探してほしいと言っている。

けれど本当に探してほしいものは、猫だけではないのかもしれない。

ビリーは、そう感じた。

『自分らしさに向かって(仮)』#6▶︎

※ featuring シンフォニム「悩みが動かす」
「悩み、きっかけ、小さな一歩」

※ このオリジナル創作小説の世界観から、Sunoで生成した楽曲です。




 

それぞれのことばが、
迷いながら創るあなたの、小さな創作のヒントでありますように。
#創作のヒント
#思考のヒント


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Photo: Unsplash
(c) s.f.出版

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