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ショパンコンクール ひとくちメモ 第1ステージ編

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10月3日から7日にかけてショパンコンクールの第1ステージが開幕します。

ここでは指定されている課題曲について、「ひとくちメモ」と称しまして簡単な紹介をしていきます。

第1ステージは以下の課題曲が設定されています。

・エチュードOp. 10 No. 1、Op. 10 No. 2、Op. 25 No. 6、 Op. 25 No. 10、Op. 25 No. 11から1曲

・ノクターンOp. 9 No. 3、 Op. 27 No. 1、 Op. 27 No. 2、Op. 37 No. 2、Op. 48 No. 1、Op. 48 No. 2、Op. 55 No. 2、Op. 62 No. 1、Op. 62 No. 2、エチュードOp. 10 No. 3、Op. 10 No. 6、Op. 25 No. 7から1曲

・ワルツOp. 18、Op. 34 No. 1、Op. 42から1曲

・バラードOp. 23、Op. 38、Op. 47、Op. 52、《舟歌》Op. 60、《幻想曲》Op. 49から1曲


1 エチュード

エチュードはOp10-1、Op10-2、Op25-6、Op25-10、Op25-11の中から1曲を選択します。

Op10-1

右手による音域の広いアルペジオのための練習曲。実はショパンの練習曲の中ではかなり難しい曲。その理由はハ長調で書かれていることが大きな要因。基本的には白鍵がメインに使用されるので、隣の鍵盤に触れてしまって音が濁ってしまいがち。これがもし半音上、もしくは下の調で書かれていたなら難易度も多少は緩和されているはず。

Op10-2

半音階のための練習曲。聞いているだけでは難しく聞こえないかもしれないが、半音階の部分は中指、薬指、小指だけで演奏するように指定がされている以外と鬼畜な曲。ショパンが半音階を教える時は親指、人差し指、中指のグループと中指、薬指、小指のグループの二つに分けて練習するようにさせていた。

Op25-6

エチュードの中で最高難易度を誇る曲。右手はほとんどが3度の重音で演奏されるように要求されており、音響面、技術面においても大変苦労する。ピアノの技術の限界の境界線をギリギリ飛び越えないピアニスティックな曲。

Op25-10

オクターヴのための練習曲。手首の柔軟性が求められる。ショパンのエチュードの中では体力勝負な曲。

Op25-11

通称木枯らし。こちらも持久力勝負な練習曲。特に右手の柔軟性が求められる曲。この曲ではメロディがほとんど左手でかつ低音なので潰れないように響かせるにも一苦労。

2 ノクターン

Op9-3

通し番号では第3番。第1番と、一番有名な第2番と共にセットでOp9として出版された作品。初期のノクターンだが第1番、第2番と比べるとノクターン創立者ジョン・フィールドの影響下から抜け出した最初の曲。メロディは半音階的で調性のあやふやさを醸し出している。中間部では短調となり劇的な表現が特徴。曲の構造の面では次の第4番もこれに似た形で作曲されている。

この曲に関しては解説記事をあげていますので、興味がありましたらこちらも併せてご覧ください。

Op27-1

メロディが音価の長い音符で書かれており、歌のような旋律が特徴のノクターン。ここで求められるのは歌心。ピアノでは表現しにくい音価の長い音符をどう処理するかが求められる曲。技巧だけではごまかしがきかない。

Op27-2

Op27-1がシンプルな旋律線だったのに対し、こちらは装飾性を重視したショパンならではの曲。大きなテンポの変更がこの曲ではないので少しでも気をそらすと間延びした演奏になりがち。

Op37-2

拍子と伴奏形態から舟歌的な性格も持ち合わせているノクターン。かなり自由な転調が使われており、主調であるト長調の性格が弱い。個人的には暗譜しにくいノクターンのひとつ。

Op48-1

形式的にはA-B-Aの3部形式でわかりやすい構造。中間部ではハ長調のコラールとなり、後半ではメロディは前半と同じだが、テンポが2倍になり、伴奏形態も大きく変化する。激的な表現が目立ち非常に情熱的。

Op48-2

シンプルな嬰ヘ短調の部分と装飾的な旋律が目立つ中間部との対比が際立つ曲。規模では彼のノクターンの中で大きいものの一つ。Op27-1のように前半は歌心が求められる。シンプルな旋律線というはやはり難しい。

Op55-2

シンプルな旋律から始まりそこからだんだん装飾が加えられ複雑になっていくショパンでありがちな曲の構成。出だしがフォルテで始まるのも彼のノクターンの中ではめずらしい。初期のノクターン第2番Op9-2と調性、拍子が同じなので彼の作曲技法の変化にも視点を向けて聞くのも面白いかも。

Op62-1

舟歌Op60、幻想ポロネーズOp61といった大作を書き終えた後に書かれた最後のノクターン。これまでの集大成といえるような彼の培ってきた作曲技法がこれでもかと詰め込まれている。聞き所は4:12~からのトリルの連続。

Op62-2

これまでの歩みを振り返るような旋律が特徴的な最後のノクターン。中間部では激しい展開を見せており、情熱的というよりかは押し寄せる不安、現状の不安定さを表しているように感じる。作曲当時は交際相手だったジョルジュ・サンドとの関係も悪化していた頃。結果的にはこの曲が作曲された翌年、1847年に二人の関係は終焉を迎えることになる。

Op10-3

エチュードではあるが今回はノクターンのジャンルに分類されているこの曲。続くOp10-6と、Op25-7と共に技巧よりは表現の方に重点が置かれているエチュード。とはいってもノクターンよりかは求められる技巧は多いのだが。通称別れの曲。旋律はシンプルだがメロディを弾きながら伴奏も右手で行わなければならないのでいかにメロディを潰さずに弾けるかどうかがポイント。

Op10-6

物憂げなエチュード。エチュード集の中では比較的弾きやすい。前半の伴奏は半音階的なので無意味にペダルを使うとすぐに濁ってしまいがち。中間部では右手でメロディを弾きながら伴奏もするというOp10-3と似たような要求がある。

Op25-7

左手に重点を置いた練習曲。右手は単純な伴奏で始まり左手でメロディを奏でる。そこに新たに右手でも新たなメロディが加わって演奏されていくので対位法的書法がみられる。

3 ワルツ

Op18

通称華麗なる大円舞曲。簡潔な3部形式で書かれており明快な構造とわかりやすい旋律で人気も高い。そこまで大変な技巧を要求されていないのにもかかわらず演奏効果は高い。そこにショパンがピアノという楽器をどれほど理解していたが感じられる。

Op34-1

通称華麗なる円舞曲。Op18と流れは似ているが、こちらの方がより自由に作られている。ショパンのワルツの中では技巧的な曲の一つ。

Op42

通称大円舞曲。ショパンのワルツの中では最も技巧的な曲。ワルツらしさを残しつつ、スケルツォ的なパッセージやマズルカ風のメロディ(1:08~)が組み込まれており、単なるワルツでは収まらないジャンルを超えた作品になっている。

4 バラード、舟歌、幻想曲

Op21

ショパンのバラードはアダム・ミツキェヴィチの詩に啓発されてバラードを作曲したとされているが、それぞれがどの詩に啓発されて書かれたのかまではわかっていない。主要な主題は存在しつつもかなり自由な形式で書かれている。ウィキペディアにはソナタ形式の自由な変形と書かれているが、自由な形式を好んだショパンがわざわざソナタ形式を用いる必要はないと個人的には考えている。それならより多くのピアノソナタが生まれていたはずだ。

Op38

バラード第2番はヘ長調の穏やかなフレーズと劇的な盛り上がりを見せるイ短調の部分との対比が目立つ作品。また曲の締めもイ短調で締めくくっており、調性の発展が感じられる。この時代はほとんど曲が始まりの調と終わりの調は一致するのが当たり前だったが、ショパンはあえてこれを破った。しかしながらショパンの作品においてもこの曲のような調の扱い方は珍しいもの。

Op47

バラードの中では穏やかな曲想。もちろん劇的な展開は含まれているが温和な性格で唯一長調で締めくくっている。

Op52

最後のバラード。曲の規模も最大級であり求められる技巧のレベルも高い。演奏時間の長さも相まってもっとも演奏が大変な作品の一つ。この時期は英雄ポロネーズOp53、スケルツォ第4番Op54といった大作を生み出しておりショパンの創作全盛期を迎えた。これ以降は創作ペースが少しずつ落ちていき、晩年の深い音楽が生まれることになる。

Op60

その晩年の深い音楽の一つである舟歌は、幻想ポロネーズOp61とともに大規模なショパンのピアノ独奏曲で最後に位置する作品。ゆったりと波に乗った舟のような伴奏のもと、重音でメロディが奏でられる。ほとんどが重音なので演奏は至難。和声も複雑なので暗譜も一苦労。

Op49

おそらく第1ステージの中では一番わかりにくい作品であろう幻想曲。幻想曲は作曲者によって様々な形式で書かれており、ショパンはかなり自由な形式を選択。簡単に言えば様々なキャラクターピースの寄せ集めと言っていいかもしれない。ファイナルで演奏される幻想ポロネーズOp61も同様で特定の型にはまらない音楽というのは一度聞いただけでは中身が掴めないもの。こちらも演奏時間が長く、音数も多いので暗譜が大変。

個人的にはノクターンがどのように演奏されるかが気になるところ。技術的には強者ぞろいですから、そのプレイヤーたちがどのくらい表現力を兼ね備えているのかが楽しみです。皆様もそこにちょっと耳を傾けてみてください。

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