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【教育シリーズ③】不登校は“親の関わり方”の問題なのか?――「治療」以外に病院ができること

今回がシリーズ最後になります。

前回の記事では、
私がスクールカウンセラーとして関わっている
お母さんのお話とともに、

「頭の中の左利きさん」タイプの不登校と
病院での対応について私の考えをまとめてきました。

(前回の記事はコチラから↓)

前回までの記事をお読みいただいた上で、
改めてになりますが、

医療は「不登校」という現象そのものに
介入できません。

ただし、
不登校に関連した周辺症状
(不安症や小児うつなど)
には専門性をもって介入できます。

いわゆる「二次障害」ですね。

この二次障害が改善されたことで
不登校が改善していくケースは
多いのですが、

同時に、
二次障害が改善されたにも関わらず
不登校は続くパターン

も同じくらい、
いやもしかしたらそれ以上に、
多くお見掛けします。

「通院しても改善しない」のは、
治療が無効なのではなく、

そもそも治療が扱っている対象と、
お子さんが体験している事が
食い違っているからなのかもしれません。



経験とことば

学校とは

  • 他者の視線にさらされる場所

  • 時間割に従って身体を動かす場所

  • 「普通」という形に押し込まれる場所

であり、お子さんは多かれ少なかれ

「一定のルールのある集団に自分を参加させる」

という経験をすることになります。

一言で言ってしまえばそれまでですが、
この経験を表現する「ことば」が、
とにかく奥深いのです。

これまで病院や
スクールカウンセリングを通して、
実に様々な「ことば」たちに
出会ってきました。

ちょっと思い出しながら書いてみます。

  • 教室にいると自分が薄くなる

  • みんなと同じ速さで動くと自分が壊れる感じがする

  • 学校に行くと自分でいられない

  • 教室から、紫の煙が出ているみたいに感じて怖い

  • みんなの中にいるのに、どこにも触れていない感じがする

  • 教室のざわざわが、頭の中に直接入り込んでくる

  • 何もないのに、ずっと誰かに狙われている感じがする

  • 時間が経つほど、何もしてないのに自分のHPが削られていく

  • 「ちゃんとして」と言われると、自分が消えていく

  • 周りに合わせようとすると、こころがからっぽになる

  • 頑張るほど、“本当の自分”が分からなくなる

  • 周りからの声かけに「大丈夫」と言うしかないけど、大丈夫ではない

  • 疲れて帰る場所は家なのに、「戻る場所」は無い感じがする


もっと時間を取って
ゆっくり思い出せば、
私が聞いた言葉はまだまだ
記憶の中から出てくるような気がします。


いま起きていることと、語られていること

ここで大切なことは、
体験」と「経験」を分けて
聞くということだと思います。

体験
「いま、まさに起きている最中」
のもの。

なので、
言葉になりきっていない
感覚(身体感覚や気分)も含んでの
「現在進行形で起きていること」
を示します。

その瞬間瞬間に表れては、
過去に流れ去っていくものが
「体験」ですね。

それに対して、

経験
体験をあとから意味づけたもので、
お話できる形にまとめられたもの
を示します。

さて、上のことばたちは
「体験」でしょうか?
「経験」でしょうか?



そう、経験ですね。

なぜなら、どのことばも、
その瞬間に体験したことを
あとから思い出して語られているからです。


わかろうとすることが、変化をつくる


私は、二次障害が改善された
にも関わらず不登校が続くお子さんに
対して、支援者は2つの方向性で
接することができると考えています。

一つ目は、
その瞬間の「体験」に寄り添うこと。

これまでのお子さんの様子から予測し、
「いま・この瞬間」にこの子がどんな感覚を
「体験」しているのかに思いを馳せて、
周囲もそれを感じようとすること。

完全に分からなくても大丈夫。

知ろうとしてくれる人がいるだけで、
きっとお子さんは安心感を感じ、

「経験」が変わっていきます。


二つ目は、
語られる「経験」に寄り添うこと。

この時、語られるお子さんのことばには
必ずといって良いほど何かに対する
警戒心が見え隠れします。

この警戒心を十分に意識しながら
寄り添っていくことが大切だと思っています。

そしてこの時、
語られる話をただ聞くのではなく、

「今この瞬間は大丈夫」
「怖いことは何も起きていない」

ことを実感してもらうことで、
安心して「体験」に意味づけしていける
空気感を作っていくのです。


安心して不安定になれるために

お子さんと同様に、
ママ・パパだって、生活を支え、
お子さんのメンタルを支え、
自分自身のメンタルを保ち。

共に先の見えないトンネルを走る共同者です。

だから、ママ・パパも自然にその瞬間に
「体験」すること、あとから「経験」として
語られることが沢山でてきます。

そういう時こそ、私たち支援者の出番です。
どうか私たちにお話してください。

不安になること、
不安定になること、
言葉で言いきれないほど
たくさんあります。

でも大丈夫です。

私たちは、
お子さんや保護者の皆さんが
「安心して不安定になれる」ために
存在しているのです。

そして、
不安定になることに安心できる
ようになると、お子さんにも次第に

  • 朝に絶望だけでなく、少し余白がある

  • 家の中で安心して過ごせる時間が増える

  • 誰かといても自分が消えない感覚が出てくる

  • 先のことを話しても、完全にはつぶれない

  • 学校そのものではなくても、外部の世界との接点が生まれる

といった変化が、
出始めてきます。

残念ながら、
「登校」という行動では
この変化は見えません。

けれど、
世界が再び“住めるもの”
になっていく、大きな変化です。

病院に通っても不登校が改善しない場合、
実は「登校」という側面だけが
動いていないのであって、

こうした別の存在の水準では
別の変化が起きているのです。

私たち医療フィールドの支援者は、
そして、ここnote内にあるつながりは。

学校場面のように時間の経過によって
切り離されたりはしません。

したがって、
皆さんがトンネルを抜けるまで例え
何年かかろうと決して
離れることはありません。

何年かかろうと、
そばで一緒に悩み続けます。

皆さんが、
病院で話せる支援者に繋がった時。
noteで想いを綴った時。

その瞬間から、
変化は既に生じているのです。

“安定すること”ではなく、
“揺れながらいられること”


そのこと自体が
こころの回復にとって大きな効果を持つと
私は信じています。

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