西にある幻の都で、キャラクター採用面接を受けました|ファンタジー小説を書きたかっただけなんです
【前回までのあらすじ】
カッパ界の重鎮・沙悟浄さんの存在を忘れていた。
被りを避けるため、私たちは新たな仲間を探し古典文学に謝る旅へ出た。
その結果、
カッパ。
ゴリラ。
たぬき。
クリオネ。
という、よくわからない一行が完成した。


第一章 西にある幻の都
西にある幻の都、展示区。
世界中のキャラクターが集うという。
私たちは観光バスに乗り、その地を目指した。
数時間後。
「着きました」
……USJだった。
世界中のキャラクターが集まる場所。
確かに、説明は間違っていない。
ただし、私たちが一番来てはいけない場所だった。
👤「こちら、何の作品のキャラクターですか?」
「……オリジナルです」
その瞬間、後ろでカッパが皿を押さえる。
(・κ・)<帰ろう
私たちが帰ろうとした、その時だった。
クリオネさんが、黙って一枚のカードを差し出す。
USJ年間パスポート。
……。
「この人、ガチ勢だ」

第二章 キャラクター採用会場
なぜか私たちは、そのままUSJのキャラクター採用会場へ連れて行かれた。
そして、採用面接を受けることになった。
自分たちの前では、不眠症のウサギが面接を受けている。
👤「ほう、相方の亀さんに振られて、それ以来眠れないと……」
不眠症のウサギの目元には、はっきりとクマが浮かんでいた。
「不採用」
大きなスタンプを押された履歴書を持って、ウサギが席を立つ。
👤「次の方どうぞ」
私たちは顔を見合わせた。
カッパが皿を押さえる。
ゴリラが姿勢を正す。
たぬきは履歴書を裏返した。
クリオネさんだけ、なぜか面接慣れした顔をしている。

第三章 きゅうりでは弱い
👤「では、まず自己PRを」
最初にカッパが口を開いた。
(・κ・)<きゅうりに対する情熱なら誰にも負けません
👤「不採用」
「早い」
自己PRが終わる前に、履歴書へ大きなスタンプが押された。
カッパは無言で皿を押さえた。

第四章 ゴリラ界のエリート
面接官は隣の席のゴリラに目を向け、大きくため息をついた。
👤「ゴリラは間に合ってます」
そう言うと、壁にかけられたポスターを指差した。
そこには、新しいエリアで活躍するドンキーコングさんの姿があった。
ゴリラ界のエリートゴリラである。
ゴリラは何も言わず、静かに肩を落とした。
世の中には、努力だけではどうにもならない枠がある。

第五章 燃えないたぬき
肩を落とすゴリラを慰めていたたぬきに、声がかかる。
👤「君は薪を背負うことできる?」
面接官は、たぬきの履歴書をまじまじと見ながら尋ねた。
嫌な質問だった。
「それって、火がつくやつですか?」
👤「一日、五回は燃えてもらいます」
別の面接官が、火打ち石をカチカチと叩いている。
採用前なのに、もう実技試験の準備が始まっていた。
「スタントマンに代わってもらうのじゃダメですか?」
面接官は呆れたように言う。
👤「燃えないたぬきに、何の意味があるんですか?」
「……」
たぬきは俯いた。
その履歴書に、不採用のスタンプが押される。
たぬきとしての存在意義まで否定された気がした。

第六章 かわいいは強い
👤「次、クリオネさん」
面接官が履歴書を見る。
👤「……天使?」
「海の妖精です」
👤「飛べます?」
「泳ぎます」
👤「魔法は?」
「ありません」
👤「歌は?」
「歌いません」
面接官たちがざわついた。
👤「……純粋に、かわいいだけ?」
「はい」
短い沈黙。
👤「採用」
強い。
結局、かわいいが一番強かった。
クリオネさんが、静かに頭を下げる。
その時だった。
別のスタッフが慌てた様子で部屋に入ってきて、面接官の耳元で何かを囁いた。
面接官の表情が変わる。
👤「……クリオネさん」
「はい」
👤「あなた、隣の水族館……海遊館でも働いていませんか?」
短い沈黙が流れた。
クリオネさんは何も答えない。
面接官は履歴書を伏せた。
👤「不採用」
「そこは厳しいんだ」

第七章 最後の一人
👤「では、最後の方」
「はい」
私の番だった。
👤「職業は?」
「ファンタジー作家です」
👤「キャラクターでは?」
「ありません」
👤「なぜここに?」
「私が一番知りたいです」
面接官も黙った。
私も黙った。
結局、全員不採用になった。

第八章 何をしに来たんだっけ
でも、よく考えてみれば、採用面接のためにここに来たわけじゃない。
私はたこ焼きを食べながら、ぼんやりと思い出していた。
「ここに来たのは……」
何のためだったっけ。
カッパの採用試験でもない。
ゴリラの転職活動でもない。
たぬきを燃やすためでもない。
クリオネさんの副業調査でもない。
そうだ。
私たちは、もっと大事なことを確認しに来たのだ。
その時。
私の肩を、誰かが叩いた。
その声には聞き覚えがあった。
振り返る。
そこには、一人の男性が笑顔を浮かべて立っていた。
「ノアさん……」
私は思わず息を呑んだ。
ノアさんは、私たちを見渡した。
カッパ。
ゴリラ。
たぬき。
クリオネ。
そして、私。
👤「かまへん、かまへん」
👤「みんな方舟に乗っとった」
そうだ。
動物系の物語なら、この人が最古の作者だ。
👤「ええんやで……」
ノアさんは、親指を立てた。

USJの帰り、新幹線の車中にて記す。
