ろろろのめ第32回SONICMANIAとrockin’on sonicの苦悩──SNSの虚像と「ロック」の呪縛
SONICMANIAとrockin’on sonicの苦悩
──SNSの虚像と「ロック」の呪縛
はじめに
2025年、日本の音楽フェスシーンは新たな局面を迎えた。SNSでは盛り上がりを見せるものの、実際の動員数は減少傾向にあり、SONICMANIAはピーク時の3万人から14,000人へ、rockin’on sonicも赤字を計上した。この現象は、単なる興行不振ではなく、日本の音楽メディアとフェス運営が抱える構造的問題を浮き彫りにしている。
特に、ロッキング・オンが長年植え付けてきた「ロックかロックではないか」という批評軸の功罪は顕著である。時代と世代が変わる中で、この軸は若いリスナーやインバウンド観客の実態にそぐわず、フェスの魅力を限定的にしてしまった。SNS上の賛辞と現実の乖離、旧来の批評軸の限界、そして観客構造の変化──これらが、日本の音楽フェスの未来を再考させる契機となったのである。
以下では、SONICMANIA 2025とrockin’on sonic 2026のラインナップや動員の現実、そして今後の課題を整理する。
SNSの熱狂と現実の落差
2025年、日本の音楽フェスシーンにおいて、SONICMANIAとrockin’on sonicが直面した動員の苦境は、単なる興行不振にとどまらず、日本の音楽メディアとフェス運営の構造的問題を浮き彫りにした。
SNS上では「ソニマニしか勝たん」「サマソニのラインナップが微妙だからソニマニ一強」といった声や「ロキソニ楽しみ」という投稿が飛び交い、主催者も「反応は良い」と語っていた。しかし実際の結果は、SONICMANIAの動員がピーク時3万人から14,000人へ激減、rockin’on sonicも大赤字という厳しい現実であった。SNSの賛辞が必ずしもチケット購入に結びつかないことが明らかになったのである。
観客からも「SNSの評判が如何に当てにならないか数字として顕著になった」「ラインナップ発表時に良い声しか聞かれないと警戒する」という声が出ている。賛否が激しいほど幅広い層に伝達されている証であり、称賛一辺倒はむしろ危うさの兆候だった。
SNSでは無風だった昨年末行われたImagineDragonsの有明アリーナ単独公演が完売だった事実。如何にSNSでの声が当てにならないかという顕著な例。客層も含めて最高だったよ。本当のお客さんはSNSの外にいる。 #ImagineDragons pic.twitter.com/tjjN5MO0Nn
— ろろろ3 (@rororiot) August 30, 2025
若いリスナーは「邦楽自縛」ではない
しばしば「日本の若い子は邦楽にしか興味がない」という言説が語られる。しかし実際には、Billie Eilishの来日公演やサマーソニックの会場には若いリスナーがしっかりと集まっている。彼らにとってのUnderworldやChemical Brothers、Primal Screamに相当する「世代の象徴」は、同世代の海外アーティストたちに確実に存在している。
「若い子たちの邦楽自縛傾向」という認識は、むしろ音楽現場を見ていない世代の思い込みに近い。サマソニの盛況が示すのは、若い世代が邦楽か洋楽かではなく、「自分の時代のリアルなアーティスト」に熱狂しているという事実である。
Gracie AbramsやImagineDragonsやLady Gagaドーム6公演、サマソニ2025大阪2DAYS、サマソニ2025幕張2日目、フジロック2025の2日目、これらが全部完売した事実を見ればソニマニやロキソニのチケットが売れない理由はだいたい理解出来ると思います。軸が変わったんです。 #ロキソニ2026 #ソニマニ2025
— ろろろ3 (@rororiot) August 31, 2025
「若い子たちの邦楽自縛傾向が強い日本」という現状認識は違います。今の若いリスナーが熱狂してる現場を実際に見てほしいです。今の若いリスナーには今の世代のアンダワ、ケミカル、プライマルがいます。若いリスナーはサマソニやBillie Eilishの現場にちゃんといますよ。 https://t.co/5Ri0f0mAZU
— ろろろ3 (@rororiot) August 30, 2025



観客層の変化 ― 外国人客の存在感
さらに近年のライブ会場では、日本在住の外国人やインバウンド観光客の姿も増えている。彼らはロッキング・オン的な「ロックか否か」という批評軸を共有しておらず、より自由でフラットに音楽を楽しむ。そうした層がフェス観客のメインストリームの一部となりつつある事実も看過できない。
この変化は、フェスの在り方を再考する契機となる。外国人観客にとってフェスは「ジャンルの純度を競う場」ではなく、「祝祭としての音楽体験」である。彼らの存在は、日本のフェスがより国際的な価値基準にシフトする可能性を示している。
『ロックファンのご機嫌を伺いながらブッキングする時代は終わった。』まさにここなのよ。フェスに行く中心の層が変わったのだからラインナップもそこに対応しなければ今後厳しくなってくる。 #サマソニ2025 #notehttps://t.co/mZnTEZjkgu
— ろろろ3 (@rororiot) August 30, 2025


「ロック」という呪縛
同じ時期に開催され、より高額なチケット価格でありながら大阪会場2日間と幕張会場2日目が完売したサマーソニックの成功は、動員減の理由が「時期」や「金銭」ではないことを証明している。
サマソニはポップ、K-POP、ヒップホップ、ラテンなどジャンルを横断し、音楽的な線引きを超えて「お祭り」としての総合的価値を提示した。一方でSONICMANIAとrockin’on sonicは「ロック」の名の下に、ベテランの洋楽アーティストを中心とした「保証」戦略を継続した。しかし、その保証はもはや機能せず、観客動員は頭打ちとなった。
サマーソニックを完売させたのは、SNSで批判的な声を上げる層ではなく、「何が良いか分からない」と断罪された音楽を楽しむ、圧倒的な数のサイレント・マジョリティです。 #サマソニ2025 pic.twitter.com/nvVYmy5z59
— ろろろ3 (@rororiot) August 31, 2025

SONICMANIA 2025のラインナップと限界
2025年8月15日に幕張メッセで開催されたSONICMANIAの出演者は以下の通りである。

MOUNTAIN STAGE: THE PRODIGY / GESAFFELSTEIN / 電気グルーヴ / Perfume
SONIC STAGE: FLOATING POINTS LIVE / COMMON / Tohji / 2HOLLIS / THE SPELLBOUND ✕ BOOM BOOM SATELLITES
MANIAC LAB: 砂原良徳 / きゃりーぱみゅぱみゅ / Minna-no-Kimochi / MFS / SKRYU / KIKUO / SAMO / ShioriyBradshaw
Opening Act: Tyrkouaz / 辻井くぬえ(出れんの!?サマソニ!?)
開催当日にはFLOATING POINTSのステージに宇多田ヒカルがサプライズ出演するという演出もあった。しかし、それでも動員は14,000人にとどまり、2023年の25,000人から2年で11,000人減少、ピーク時3万人からは半減以上という深刻な落ち込みを記録した。
観客からも「2年間で11,000人どこ行ってしまったの?」「動員数4割減は相当深刻」といった声が上がるなど、現場での危機感は大きい。
ソニマニ2023は25000人動員してたんですよ。それがソニマニ2025では14000人しか動員出来なかった。2年間で11000人どこ行ってしまったの?って話ですよ。動員数4割減って相当深刻な現実です。 #ソニマニ2025 #ソニマニ2023 pic.twitter.com/5HfJVpDdVh
— ろろろ3 (@rororiot) August 30, 2025
rockin’on sonic 2026の布陣と課題
2026年1月4日に幕張メッセで開催予定のrockin’on sonicの第一弾ラインナップは以下の通りである。

Pet Shop Boys “DREAMWORLD, The Greatest Hits Live”(結成44年)
Underworld
Kneecap
Travis
Wolf Alice
and more!
Pet Shop Boysは結成から44年に及ぶキャリアを持ち、UKポップ/エレクトロニックの象徴として今も活動を続けている。Underworldも90年代以降クラブカルチャーを体現してきたレジェンドであり、この2組の存在は強烈なブランド力を持つ。一方で、Wolf AliceやKneecapといった現行アクトも加わったが、全体の基調は依然として「洋楽ロックとエレクトロ」の延長線上にあり、前回から大きな方向転換は見られない。

ロキソニが3000人くらいしか人居ないと思っていたから想定の3倍以上で意外と多いと思ってしまった。STUDIO COASTのキャパが埋まらないとか見てきたから。ただ今の世代には今の世代のPULPやWeezerがいるから。上の世代の嗜好品を無理強いはできない。それこそBenson Boone とかChappell Roanいるし。
— ろろろ3 (@rororiot) January 16, 2025
そこを目を瞑ってしまった結果が前回のロキソニの大赤字を招いた要因なんですよね。「保証」が「保証」として機能しなかった事実を鑑みず同じ事を繰り返す先に勝機はないと思います。 https://t.co/4tESTADkGx
— ろろろ3 (@rororiot) August 31, 2025
これで第二弾発表であっと驚くアクトが発表されてロキソニのチケットが売り切れたら売り切れたでそれはそれで良し。今の段階では内側でしか盛り上がっていませんが。
— ろろろ3 (@rororiot) August 31, 2025
メディアの人の盛り上げ方はまんまとエコーチェンバーに絡め取られてるように思えて仕方ないけど大丈夫?#ロキソニ2026 pic.twitter.com/e844wbFGBN
「持続可能なものにするために」と言いながら、なぜ赤字を招いた「懐メロと旬の中途半端なミックス」という失敗したコンセプトを繰り返すのか? 運営側の覚悟や危機感が感じられない。今旬のアクトを呼べないのはわかるけどもうちょいどうにかならなかったか。見せ方の問題でもある。 #ロキソニ2026 pic.twitter.com/hbBNDSepNI
— ろろろ3 (@rororiot) August 30, 2025
ロッキング・オン的批評軸の功罪
ロッキング・オンは長年にわたり、日本の音楽批評とフェス文化に「ロックかロックではないか」という明確な線引きを植え付けてきた。その功績は大きい。90年代から2000年代にかけて、ロックは音楽的価値観の中心となり、若者文化をけん引した。その枠組みは、アーティストやリスナーにとって明確な旗印となり、シーンを拡大させる原動力となった。
しかし、時代が変わり、音楽消費がサブスクリプションを通じて多様化した今、この批評軸はむしろ制約として働いている。「これはロックだから良い」「これはロックではないから評価に値しない」という二元論は、ジャンル横断的なリスナーやインバウンド客にとって意味を失いつつある。ロッキング・オンが築いた枠組みの栄光は、同時に現在の閉塞の原因でもある。
音楽フェスの未来
日本のフェスが生き残るためには、「ジャンル」ではなく「体験」を基軸に再編される必要がある。サマソニが示したように、世代や国籍、音楽的嗜好を超えた「祝祭空間」を創出できるか否かが分水嶺となる。
その上で、フェスには二つの道がある。
拡張の道: 多様なアーティストを呼び込み、より広い層を取り込む「総合フェス」として生き残る。
特化の道: キャパシティを縮小し、強烈な個性とキュレーションで熱狂的な支持を得る「ニッチフェス」として存続する。


いずれの道を選ぶにしても、「ロックか否か」という旧来の批評軸を超え、国内外の観客を見据えた新しい価値基準が不可欠である。SONICMANIAとrockin’on sonicが直面した苦境は、日本の音楽フェス全体が変革を迫られていることを象徴している。
