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ろろろのめ第19回 ロックは死んだのか?──「メタファー」としてのロックと、日本のリスナー・メディアが抱える”呪縛”


ロックは死んだのか?──「メタファー」としてのロックと、日本のリスナー・メディアが抱える”呪縛”





はじめに:なぜ今、「ロック」を問い直すのか?


かつてのロックの定義は、エレキギター、バンド編成、反骨精神、カウンターカルチャーといった揺るぎない要素によって成り立っていた。しかし、ストリーミング時代、SNS主導の音楽シーンにおいて、この「ロック」というジャンルはどこに向かっているのか。「ロックは死んだ」という言説も囁かれる一方で、世界的なヒットチャートにはギターサウンドを大胆に取り入れた曲が並ぶ。本記事では、SombrOlivia RodrigoChappell Roanといった現代のポップアーティストの成功を通して、ロックが「ジャンル」から「表現のメタファー」へと変貌を遂げている現状を考察する。そして、このグローバルな変化に乗り遅れ、「ロック至上主義」という“呪縛”に囚われ続ける日本の音楽リスナーとメディアが抱える課題に鋭く切り込む。








第1章:Sombrが体現する「ロック的サウンドのポップ」


Sombr



アメリカはニューヨーク出身の男性シンガー、Sombr(ソンバー)は、つい半年前まで全く無名の存在だった。しかし、TikTokやReelsを起点に、彼の音楽は国境を越えて瞬く間に人気を博し、ブレイクを果たした。彼のサウンドは、確かにギターリフやバンドアンサンブルを感じさせる。
しかし、彼がなぜ単なる「ロックシンガー」ではないのか。それは、従来のロックが持っていた音楽的な制約や社会的メッセージ性にとらわれず、あくまで「今の気分にフィットするポップミュージック」として作られているからだ。ジャンル分けを前提としない彼の音楽は、多様な文化背景を持つZ世代に共感を持って受け入れられている。
彼の音楽は、ヒップホップ、エレクトロニック、R&Bなど、あらゆるジャンルを聴くリスナーにフラットに受け入れられている。従来の「ロックファン」ではない層にも響くのがその証拠だ。彼の成功は、ジャンルという枠組みが持つ意味が薄れ、「心地よさ」や「共感」が音楽の第一義的な価値となっている現代の潮流を象徴している。


第2章:ポップの女王たちが紡ぐ「ロックの魂」


Olivia Rodrigo


Olivia Rodrigoは、デビュー曲「drivers license」で世界を席巻し、グラミー賞を総なめにした。彼女の音楽には、パンクやオルタナティブロックからの影響が色濃く見られ、「Good 4 U」などはまさにその象徴だ。特に10代の女性が抱える苛立ちや切なさを、ロック的なサウンドに乗せてストレートに表現する姿勢は、かつてのロックが持っていた「反骨」や「感情の爆発」という要素を現代的にアップデートしたものである。彼女は、ロックが本来持つ爆発的なエネルギーをポップのフォーマットで解放し、大衆的な共感を獲得した。


Chappell Roan


Chappell Roanは、ド派手なビジュアルと強烈な個性で注目を集める。その音楽には80年代ロックやグラムロックからの影響を感じさせる。セクシュアリティや自己肯定をテーマにした彼女の楽曲は、ロックがかつて担っていた「抑圧からの解放」という役割を、ポップのフォーマットで鮮やかに提示している。彼女の音楽は、多様なアイデンティティを持つ人々が自分らしく輝くための賛歌となり、既存のジャンル概念を超えたムーブメントを生み出している。
彼女たちは「ロックシンガー」として括られることはない。しかし、その表現やサウンドには、間違いなく「ロックの魂」や「ロック的な記号」が宿っている。
それは、もはや特定のジャンルを指すものではなく、感情やメッセージを伝えるための強力な「メタファー」として機能しているのだ。彼女たちは、かつてのロックが持っていた「自由」や「自己表現」の精神を、現代のポップシーンに再構築し、新しいファン層へと届けている。


第3章:「ロック」という名の“檻”──日本の音楽シーンのガラパゴス化


日本は、海外に比べて「ロック」というジャンルが非常に根強く、ある種の特別視をされている傾向がある。これは、過去の成功体験や、ジャンルごとにコミュニティが確立されている音楽文化に起因すると考えられる。洋楽リスナーの中には、「ロックこそが正統派」という強い信念を持つ層も少なくない。
この「ロック」という枠組みが、海外でポップミュージックとして広く受け入れられている才能の真価を、日本では正しく伝えられないという問題を生んでいる。

例えば、エモやパンクの要素をラップに昇華させ、若者から絶大な支持を得たJuice WRLDXXXTentacionは、そのサウンドや表現において、本来日本のロック好きにも刺さる要素を多分に含んでいた。しかし、彼らは「ロック」という文脈にはハマらず、日本のロック好きの耳には届きにくい状況だった。Billie EilishがJuice WRLDとコラボした「Die For Love」のように、彼らの音楽は境界線を越えて響くにも関わらず、ジャンルという“檻”がリスナーの視野をどれだけ狭めているかを示している。


XXXTentacion(左)とJuice WRLD(右)








Måneskin




2024年のサマソニでマリンスタジアムを沸かせ、日本でアリーナツアーを成功させたMåneskinも、そのいい例だ。彼らはロックバンドでありながら、グローバルでは「ロックの復権」としてではなく、Justin BieberやEd Sheeranの延長線上の「ポップスター」として受け入れられている。実際、Måneskinの初来日公演に来た観客の多くは、Justin BieberやEd Sheeranのライブしか行ったことがなく、オールスタンディングのライブ自体が初めてという層だった。彼らがロックとしてではなく、ポップとして彼らを聴いている層が大多数なのである。
しかし、日本の音楽メディアは、このMåneskinの成功を、往々にして「ロックの復権」
という狭い文脈でしか取り上げなかった。この現実を無視した報道姿勢は、日本のリスナーがグローバルな音楽トレンドを正しく認識する機会を奪い、さらなるガラパゴス化を助長している。
今、日本のリスナー、そして音楽業界に問われているのは、ジャンルという固定観念から解放され、目の前の音楽が持つ本質的な魅力、つまり「今の気分にフィットするか」という生理的な感覚を最優先する聴き方への転換ではないだろうか。もはや、音楽を「ジャンル名」で語る時代は終わりを告げ、「気分」や「共感」で選ぶ時代が到来している。










第4章:新たなロックスターとしてのBillie Eilishと、ジャンルを超えるアーティストたち



Billie Eilish


Billie Eilishは、単なるポップスターではない。彼女は、かつてロックが体現していた「反骨」「自己表現」の精神を、現代の感覚とサウンドで再定義し、新しい世代の「ロックスター」としての地位を確立している。彼女のダークで内省的な世界観、既存の音楽業界の枠に収まらない自由な発想は、まさにロックの革新性を継承していると言えるだろう。
興味深いのは、Billie EilishがJustin Bieberの大ファンであることを公言している点だ。これは、ジャンルという壁が、アーティスト自身の感性には存在しないことを示している。彼女は、ポップのアイコンであるJustin Bieberを愛し、同時にJuice WRLDのようなエモラップアーティストとも共鳴する。こうしたアーティストのオープンな感性こそが、現代の音楽シーンを牽引する原動力なのだ。







さらに、現代のアーティストたちは積極的にジャンルの壁を乗り越え、多様なコラボレーションを展開している。

  • Charli XCXは人気K-POPグループSEVENTEENのバーノンとコラボし、TWICEのアルバムにも楽曲提供した。

  • LE SSERAFIMはChappell RoanやSabrina Carpenterとのコラボを熱望し、「‘Short n’ Sweet’ is so good, we have it on repeat」と公言した。

Billie EilishがNewJeansと交流し、aespaが2HOLLISと共演するなど、国境やジャンルを越えた化学反応は枚挙に暇がない。
これらの事例は、アーティスト側が既にジャンルという概念から解放され、純粋にクリエイティブな交流を求めている現実を示している。彼らにとって、音楽はもはや特定のジャンルに閉じ込められるものではなく、あらゆる要素を取り込み、新たな表現を生み出すための無限の可能性を秘めたものなのである。

Coldplayのクリス・マーティンとBLACKPINKのROSE





おわりに:ジャンルの壁が壊され、新しいポップの時代へ


ジャンルの壁は壊され、今は新しいポップの時代の最中にいる。 かつての強固なジャンル定義はもはや意味をなさず、多様な音楽的要素がシームレスに混じり合うことで、新たな表現が次々と生まれている。この現実を受け入れ、適応することこそが、より自由に音楽を楽しむための鍵である。
私たちは、自分自身の「快適な音の泡」という部屋から一歩踏み出し、世界中で鳴り響く多様な音に耳を傾けるべきだ。その部屋の壁を壊し、自由になったこの時代において、「ロック」というメタファーが示す精神は、新しいポップの形となって生き続けている。この変化を恐れることなく、多様な音楽文化への視野を持ち、より自由に音楽を楽しもう。


BLACKPINKのLISAのTシャツを着るGUNS N' ROSESのAxl Rose


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