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【毎週ショートショートnote】夜行性の黒板消し|ショートショート


タイトル:黒板消しは夜に飛ぶ

夜の学校には、
昼とは違う生き物たちがいる。

その中でも特に有名なのが、
“夜行性の黒板消し”。

誰もいなくなった教室を飛び回り、
黒板に残った感情を食べるのだという。

怒り。
後悔。
言えなかった言葉。

白い粉をまき散らしながら、
それらを静かに消していく。

「見たことある?」

放課後、からあげを頬張りながら、
彼女が聞いてきた。

スカートの裾が、夕風に揺れる。

「ない」

そう答えると、
彼女は少しだけ笑った。

「じゃあ、今夜来なよ」

夜の教室は、思っていたより静かだった。

月明かりだけが、机を照らしている。

黒板には、昼間の授業の跡。

数式と、誰かの落書き。

そのとき。

ぱさっ、と音がした。

白い影が、黒板の前を横切る。

「……いた」

思わず声が漏れる。

黒板消しは、羽みたいにふわふわ浮いていた。

普通の黒板消しなのに、
目だけがやけに人間っぽい。

そいつは黒板の前で止まり、
ゆっくり文字を消していく。

でも、数式じゃない。

誰かが小さく書いた言葉だけを、
丁寧に消していた。

――“本当の自分なんて分からない”

その文字が消える瞬間、
教室の空気が少しだけ軽くなる。

「ね」

彼女が小さく言う。

「たぶん、あれって優しいんだよ」

黒板消しは、こちらをちらりと見る。

そして、白い粉を残しながら、
夜の廊下へ飛んでいった。

私は黒板を見る。

もう文字はない。

でも、不思議と、
消えた気はしなかった。

本当の自分なんて、
簡単には見つからない。

だからきっと、
少しずつ消したり、書き直したりしながら、
形になっていくんだと思う。

窓の外で、夜風が吹く。

からあげの匂いだけが、
まだ少しだけ残っていた。


からあげ


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