Photo by
effica_217
2026.19.FEB 木目調.未開の地.コウノトリ|ショートショート
タイトル: 木目の奥の未開地
教室の机は木目調で、どれも似たような模様をしているのに、
彼女の机だけ、なぜか地図みたいに見えた。
くねくねと走る年輪が川で、
節の丸い影が湖。
その中心に、誰も踏み入れていない未開の地がある。
それが、彼女の心みたいだった。
春の終わり、俺はその机に肘をついて言った。
「なあ、将来どこ行きたい?」
彼女は窓の外を見ながら、
「遠いとこ」とだけ答えた。
具体的な地名じゃない。
遠いとこ。
その曖昧さが、やけに胸に刺さった。
ある日、彼女が言った。
「コウノトリってさ、赤ちゃん運んでくるんだって。信じてた?」
「小学校までな」と俺は笑った。
「じゃあさ」
彼女は木目の湖を指でなぞる。
「恋も、どこかから運ばれてくるのかな」
それは冗談みたいで、
でも目は、まっすぐだった。
俺はそのとき初めて気づいた。
彼女の未開の地に、足を踏み入れたいと思っている自分に。
卒業式の日、
体育館の床もまた、木目調だった。
俺たちは別々の街へ行く。
遠いとこ。
「元気でね」と彼女は言った。
コウノトリみたいに軽い声で。
俺は頷くだけだった。
言えなかった言葉が、胸の奥で羽ばたく。
恋は運ばれてくるんじゃない。
自分で歩いていく未開の地だ。
でもあの日、
確かに白い羽が、ひとつ落ちていた気がする。
青春は、木目の奥に隠れた地図みたいに、
まだ誰にも読めないままだ。
了

☆恋愛/青春(感情・人間関係・日常) NEXT↓↓↓
ガールズバンド・チカ1↓↓↓
恋愛/青春(感情・人間関係・日常) 1↓↓↓
最後までお読み下さりありがとうございます😊すず
いいなと思ったら応援しよう!
読んで下さりありがとうございます!励みになります!