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【風まかせ文芸部】遠い花火の音|エッセイ


タイトル:聞こえない景色

遠い花火の音。

夜風に乗って届くその音は、姿よりも先に夏の訪れを知らせてくれる。

窓を開けると、「ドン」という低い響きが、少し遅れて胸に届いた。

花火は見えない。

それでも、どこかで誰かが空を見上げて笑っている光景が、自然と頭に浮かぶ。

音には、不思議な力がある。

見えないものまで想像させてくれる。

子どもの頃は、花火大会といえば屋台や浴衣のことばかり楽しみにしていた。

大人になると、少し離れた場所で聞く花火の音にも心が動くようになった。

見えないからこそ、美しく感じるものがある。

届かないからこそ、大切に思える時間がある。

人生もきっと似ている。

目の前にあるものだけではなく、遠くで誰かが頑張っていることや、まだ出会っていない未来が、自分を静かに支えてくれているのかもしれない。

遠い花火の音は、夜空を彩るためだけのものではない。

忙しい毎日の中で立ち止まり、耳を澄ませる時間を思い出させてくれる。

今年もまた、姿は見えなくても、その音だけで夏はちゃんとやってきたのだと感じる。



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