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【風まかせ文芸部】線香花火|エッセイ


タイトル: 線香花火のように

線香花火を見ると、いつも少しだけ寂しくなる。

火をつけた瞬間は小さな赤い玉が静かに燃えているだけなのに、しばらくすると、細い光がいくつも枝分かれしていく。

ぱち、ぱち、と小さな音を立てながら、夜の闇に花を咲かせる。

大きな打ち上げ花火とは違う。

空いっぱいに広がることもなければ、歓声をさらうこともない。

ただ、手のひらの先で静かに輝いている。

でも、その短い時間が妙に心に残る。

人生も、線香花火に似ているのかもしれない。

大きな出来事だけが、思い出になるわけではない。

誰かと笑った何気ない時間。

帰り道に見た夕焼け。

冷たい飲み物を飲みながら、ぼんやり空を眺めた夜。

そんな小さな瞬間が、後になって大切な記憶になっている。

線香花火は、最後に小さな光を落として消える。

その瞬間を見るたびに、私は思う。

消えるから美しいのではなく、

消えるまで、ちゃんと光っていたから美しいのだと。

だから、今を急いで特別なものにしなくてもいい。

今日が何でもない一日だったとしても、その中にはきっと小さな光がある。

気づかないまま終わってしまう日もある。

それでもいい。

いつか振り返ったとき、

「あの日も、ちゃんと幸せだったな」

と思える瞬間が一つでも残っていれば、それで十分なのだと思う。

夜空に咲く大輪の花ではなくてもいい。

自分の手のひらで、静かに光る。

そんな人生も、悪くない。



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