【風まかせ文芸部】夜風|エッセイ
タイトル: 夜風に預ける
夜になると、昼間には気づかなかった風の音が聞こえてくる。
窓を少し開けると、ひんやりとした夜風が部屋へ入ってきた。
昼間の暑さを知っているからだろうか。
その風が、いつもより心地よく感じる。
夜風には、不思議な力がある。
昼間なら気になって仕方がないことも、夜風に当たっていると、少しだけ遠くへ置いていける。
今日できなかったこと。
言えなかったこと。
明日の心配。
頭の中でぐるぐるしていたものが、風に乗って少しずつほどけていく。
外を見ると、街灯の下を誰かが歩いている。
コンビニの明かり。
遠くを走る車。
どこかの家から聞こえる笑い声。
みんな、それぞれの夜を過ごしている。
そう思うと、ひとりでいる時間も少しだけ寂しくなくなる。
夜風は何も答えてくれない。
「大丈夫」とも言わない。
ただ静かに吹いて、頬を撫でていく。
でも、それでいいのかもしれない。
答えを急がず、少し立ち止まる時間も必要だから。
しばらくして、私は窓を閉めた。
部屋の中は少し暑くなったけれど、心はさっきより軽い。
明日のことは、明日考えればいい。
今夜はただ、夜風に預けたまま眠ろう。
そんな夜があってもいい。
了

*下記企画に参加させて頂きました*
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前回の作品はこちらです↓↓↓
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